本心をさらけ出すことは良いことのようです。
翌日俺は、あの家に行き女性に話を聞いてきた。
彼女の両親は3年前に他界しその後母の妹だった女性に引き取られたということらしかった。自分の居場所がなく、両親が死んだ悲しみからか、なかなか心を開いてくれずその間に関係が悪化してしまったようだった。
「この世界にもいざこざはあるもんだな」
あの子のためにも、家に居場所をつくってあげたい!居場所ができる机をつくろう。
「まずは、材料調達だな!確か近くに森があったはずだよな」
机の材料に必要な木を調達するため、俺は森と出掛けた。
「おぉー結構いい木があるじゃねぇか!」
えっと、これと、これもいいな!まぁこれくらいあれば充分か!
カサカサカサ
!!!なんだ!?
振り返ると罠に捕まってしまった一匹の子犬がいた。
「なんだ。ビックリしたじゃねぇかよー、もう二度と捕まるんじゃねえぞ!」
そういって罠を外し、俺は森の外へと向かった。
「ついてきても、食いもんはやれねぇぞ?」
さっきの子犬がまだついてきている。
まぁ可愛い犬だしな。面倒みてやるか。
「行くとこがねぇのか?だったらうちにくるか?」
犬は嬉しそうに吠え、ハヤトの腕の中へ飛び込んできた。
店に帰りハヤトは、早速机の作成に取りかかっていた。
店番はガオにまかせてある。ガオとはさっきの子犬のことでハヤトが名付けた。
「出来た!行くぞガオ!」
「ワン!」
この机で、彼女を笑顔に出来れば!
家につきドアを叩く
「注文の品をもってきました!」
すると彼女がでてきた。
「どうぞ上がってください!」
俺は彼女の家に上がり机の説明をする。
「この机は家族で使える円卓になっています。
ぜひ、ご家族で食事でもしてください!」
「ちょっとまって!!私は一人ようのテーブルを注文したはずでしょう!?なぜ家族用のテーブルなのよ!こんなの受け取れないわ!」
「お嬢さん、あなた本当は家族と仲良く暮らしたいのでしょう?」
「そんなわけないじゃない!大体義母さんだって私と一緒なのは嫌なのだから!」
「お義母さん!入ってきてください」
「なんで...」
彼女は動揺した様子のようだ。
「ごめんなさい!私あなたに酷いことをしたわ!あなたは両親が亡くなった悲しみで心を閉ざしていたというのに、私は理解もせず、あなたのことを遠ざけた!本当にごめんなさい!でも、あなたの事が嫌いなわけじゃないのよ、それだけはわかって...」
「お義母さん...私もずっと楽しく暮らしたかった。ごめんなさい!今までずっと素直になれなくて!」
二人とも涙をこぼしながら抱き合っている。
彼女にさっきまでの悲しさはなく、嬉しそうな表情に見えた。
「では、このテーブル受け取って貰えますか?」
「はい!もちろんです!それにしても、素晴らしい机ですね。こんな素晴らしい机をあんな安い値段で本当に宜しいのでしょうか?」
「確かにあの値段ではお譲りできませんね」
俺は微笑む。
「では、あといくら支払えば...」
「代金はいりません。あなたの名前を知りたいんです」
臭い台詞だと思い、恥ずかしくなるが名前が知りたいのは本心だ。
「そんなことでいいなら。私の名前はイリアル。イリアルです。貴方の名前は?」
「俺の名前はハヤト!天才大工にして、超優しいクールなボーイだ!よろしくな!」
彼女の家をあとにして、俺は思う。大工として、一番いい仕事をしたと。
読んで頂きありがとうございました。次話もよろしくお願いいたします!