初めてのお客様は少々問題を抱えているようです。
客が...来ない。
店を構えてから2日、未だに客は一人も来ない。
「は、腹へったぁぁあ」
くっそー、この、異世界転移難易度高すぎだろ!
「もしかして、実は魔法で食べ物出せちゃったり??はぁぁぁあ、我が眠りし魔力よパンを出したまぇえええええ!!!」
...なにもでない。そればかりか辺りを通る人に奇怪な物を見るような目で見られてしまった。
「まじで、やばい。腹へって死にそう」
このままじゃ世界に必要とされる前に餓死してしまう。
「あ、あのー...」
ふと見上げると一人の女性が立っていた。
「机10ポルカって本当ですか?」
「きゃ、客だ!客だぁあ!はい!本当です!10ポルカで、あなたのお気に召す机を作って差し上げましょう!」
やっときた客だ。この客を桜にして俺の腕を見せつけてやる!
「じゃあ、お願いします。あ、お金は先払いですよね。はい!10ポルカです!」
「ありがとうございます!!あなたのために素晴らしい机をつくって差し上げます!希望はありますか?」
「壊れなければ、なんでもいいです...」
何か隠したような言い方だった。
「家族でお住まいですか?」
「いえ。独り暮らしなので小さめの机でいいです。」
そういって彼女は家の場所のメモを渡し、出来上がったら届けて貰えますか?といって、帰っていった。
「よっしゃぁあ!初客ゲット!この調子でどんどん行くぞ!」
そういえば、家の間取りを聞いていなかった。
家まで尋ねにいってみよう。
彼女に貰った地図を頼りに彼女の家まで向かった。
「ここか。」
みると、一人暮らしにしては大きすぎるほどの家だった。ドアをノックして尋ねる。
「あのーさっきのものですが!間取りを教えて貰ってもいいですか??」
ガチャとドアが開き、出てきたのはさっきとは違う少し年配の女性だった。
「誰ですかあなた。急に」
「あのーさっきここのお嬢さんに机の作成を頼まれたので間取りを確認しようと...」
「はは、!あの子がそんなことを!あの子は帰ってきていませんよ。まぁこちらとしても帰ってこないほうが都合がよいのだけれど」
なにやら、事情があるらしいな、帰り道いろいろと考えながらあの子の寂しそうな目を思い出していた。
「仕方ねぇ。一肌脱ぐか!」
初めてのお客様は少々問題を抱えているようだが、初めて注文をしてくれた大切なお客様だ。彼女のためにも、何とかしてあげよう。そういえばまだ、彼女の名前を聞いていなかったな。
読んで頂きありがとうございました。次話もよろしくお願いいたします!