プロローグ
寒い中に、心地がいい暖かい風が当たる。美しい桜の風景に、梅の花のにおいがする。
この時期は春。
そして、この日はとある少年の高校の入学式である。
「これより、第85回、神奈川県立紅高校の入学式を開催いたします」
そして、この高校に入学してくる少年が、この紅高校野球部のエースピッチャーになることは誰も知らな
い。
「森本雄一」[もりもとゆういち]
「はい!」
これが彼の名前。弱小校である紅高校を甲子園優勝に導こうとする。
*****
入学式が終わり、クラスの最初のホームルームが始まる。森本の担任の先生が教室に入り、教卓の前に
立っていた。
「こんにちは、僕はこれから君たちの担任になる髙野健吾です。よろしく」
その担任は、野球部の顧問の先生と言っていた。森本は早速入部届を出した。
「森本君、ありがとうございます。ようこそ!!うちの野球部へ。希望のポジションはどこですか?」
「ピッチャーです。中学ではエースで四番でした」
森本は自信満々にそう答えた。彼は中学の時に球速145キロをたたき出した。そのおかげで、スカウトが
やってきたが、それを全部蹴って紅高校に入学した。
その理由としては、設備がとてもいいというところと、この学校にはエースと呼
ばれる投手がいないため、ここならエースとして戦えると言うこと、そして最後は、
「森本君。久しぶりだね」
「橋本・・・・久しぶりだな」
彼は橋本隆介「はしもとりゅうすけ」、中学の時に森本と対戦したことのある選手
である。森本は橋本とは仲がいい。ライバルと呼んでいいほどの仲だ。ちなみに、森本
は、橋本がこの学校に入学すると聞いて、この学校に入ることを決意した。つまり、橋
本が三つ目の理由だ。
「今日から練習だね。人数が僕たち含めて20人いるんだって、新入生は10人入ったら
しいよ」
「俺以外の投手はいないし、この学校だったら俺がエースになれるぜ!」
「そう簡単にはいかないよ。まあ、今日は新入生対2年生3年生の紅白戦をやるんだって」
橋本は楽しそうに言う。ちなみに、橋本のポジションはキャッチャーである。
早くもニュースに出るほど、橋本は有名だ。バッティングのセンスも高いし守備と方も強い。橋本がこの
チームの正捕手になると森本は考えている。
「それじゃあ、そろそろ部活に行こうか」
「おう!」
絶対にエースナンバーを取る。森本は誓ったのだった。