転生! 俺の異世界最強ハーレム伝説
……ここは、何処だ?
あれ、俺はさっきまで何をしてたんだっけ?
ああ、そうだ。トラックにひかれそうになっていた同級生を助けようとして、それで……。
きっと、俺は助からなかったんだろう。残念だ。
「……」
あの子は無事だったのかな? アイツ、どこか抜けてるところがあるし心配だ。悪運が強い奴だから大丈夫だと思いたい。
俺は死んでしまったのか。
特別、イヤだ、とか、悲しい、とかそういう感情は湧いてこない。
「……」
両親は俺が小学生の時に死んでしまったから、俺の死を悲しむ奴はいないだろう。
いや、一人だけいた。幼なじみの優花だ。
幼稚園からの腐れ縁で今までずっと同じクラスだったけ。
両親の死んだときだって、優花が慰めてくれた。俺が泣いてるときはいつも隣にいてくれた。
「……」
高校生になって優花は垢抜けて今時のモテる女になった。運動部のエースだとかに告白されても断っていたくせに、両親のいない俺のために毎日のように夕食を作りに来てくれた。
それがまた美味しくて、家庭的な味がした。
別に来なくてもいいんだぞ、って言っても、私がやりたくてやってるんだから翔ちゃんは気にしなくていいの! とか言って、笑ってた。
俺には過ぎた良い女だ。
俺のいない世界で幸せになってほしい。
「……」
それが俺の最後の願いだ。
「……ねぇ」
「! もしかして神様ですか?」
「えっ、いやまあ、うん。そうだけど。君さっ「神様、私は死んでしまったのですか」
「……うん、そうだけど。だから君さっきか「あの子は! 私が庇ったあの子は無事なのですか!」
「……もう止めない? その茶番劇」
「えっ、何がデスか?」
「何がデスか? じゃないですよ、43歳」
「ふぁっ!」
「さっきから君は何を言っているのですか? あなたの死因はトラックとのキスじゃなくて、地面とのキスでしょうが」
「さ、さっきから何を言っているのですか? ぼぼぼ僕にはさっぱりだだ」
「あなたの死因は飛び降り自殺ですよ、43歳、鈴原太郎さん」
「だ、だれですか、それは。僕の名前は御手洗翔貴だよ!!」
「それはあなたのハンドルネームでしょうが。そもそも、あなたの両親はまだ生きてますし、優花なんて幼なじみは居ませんよね」
「そそんなことない! 居るんだ! 優花は居たんだ!」
「そういえば居ましたね、画面の中に。中学で虐められて二次元に逃避、そのまま引きこもった結果、中学中退。親の薦めで通信制の高校に入学するも、それまでに培ってきたさぼり癖のせいでまた中退。それから30歳過ぎまで引きこもって今度はイラストレーターになると言って、集中したいからとアパートに住み始める。もちろん、親の金で。それからというものの、今まで通りの生活をして今日に至ると」
「……」
「飛び降り自殺の理由は、……異世界に行きたかったから、ですか。なんですかこのバカみたいな死亡動機は。頭の中詰まってんですか? ああ、妄想で一杯ですか。……まあ、あるんですけどね、転生」
「!!!!!!! 出来るんですか! 是非お願いします! 魔法がある世界で貴族の侯爵の長男で同い年のメイドがいて可愛い許嫁がいて綺麗な姉がいて天賦の才能があってイケメンでチートでハーレムでそれからそれから!」
「別に、させませんよ。転生」
えっ
「いや、だって、他の世界だってあなたみたいな魂を受け入れたがる訳ないじゃないですか。どの世界も優秀な魂を求めているのですよ。ゴミはいりません。ゴミはゴミ箱へ捨てて、ある程度貯まったらリサイクルに使います」
「えっ、はっ? いや、なんで? そんなのおかしいよっ!」
「おかしくないです。ゴミはゴミ箱へ捨てる。至極、当たり前のことです」
「なんで! 転生出来るんじゃないの!! おかしいよ! なんで! なんでなの!」
「いや、そんなこと言われても。規則なので、としか」
「おかしいよ! まちがってる! ぼくはしゅじんこうなんだ! ちーとではーれむつくるんだ!」
「あ、時間ですね。それでは説明を終了させていただきます。さようなら」
「まって! まってよ! まだはなしはおわってないんだ! はなせっ! はなせよ! ぼくはぼくはしゅじんこうなんだってば!」
「……はぁ、どうしてだろう。最近、あの手の変な奴ばっかだなぁ」




