対戦
体育館ー
体育館は、ガヤガヤと騒がしく、バスケの床をバッシュで、走る音。
バレー部のボゴッという、スマッシュの音。
「あの榊の、スマッシュの音、フォーム、スピード、全て普通じゃないよねぇさん。ありゃ、全国クラスかもしれない」大地が、腕を組ながら言った。
「やっぱり、中学で有名だった男はちげぇな」
「……榊直也君は、スマッシュが速いタイプの選手じゃなくて、フットワークや抜群の守備力を使う選手だと聞いたんだけどなー…」
「……戦い方、変えたんじゃないか?」
「強いのは変わらないか!」
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おいおい…いきなり、こんな強そうなやつとシングルやんのか
甲野は、ラケットをぎゅっと握る。
「どうした?早く位置につけ。」榊は、コートの中央で棒立ちの甲野にいう。
「あー、悪いな。何分初心者なもんで」
「………冗談はよせ」
俺は、何度か見た兄の試合風景を思いだし、位置についた。
確か此処に立っていた。
「ほらよ」
パン!榊は、甲野にサーブを打つ。ネットすれすれから下に落ちる綺麗なサーブは、甲野手元にまで届く。
甲野はそれを、バック奥に素早くレシーブする。
榊は、軽いフットワークで追い付き、コートフォア奥までクリアを打つ。
チャンスボール
甲野は、たどたどしいフットワークで、追い付くと
体を半身にし、肘をややあげ、しなるように振った。
ポトッ
「あっちゃー……」甲野は笑った。
「冗談じゃなかったのか…?」
スカッ
スカッ
スカッ
「試合にならないな、そのラケットワークで、初心者かよ」榊は、言った。
「スマッシュの相手ならとくいなんですけどね」
「もういい。悪いな付き合わせて。」
榊は、シャトルを拾うと大地の方へ向かって行く。
「何だよ、終わりか?」
「続けたかったか?」
「……ん」
「やっぱり、甲野はまだまだだな」と大地
「これからこらから」と甲野
「………甲野?」榊は、じっと、甲野を見つめる。
「高校一年生でインターハイ優勝をした、甲野浦谷選手のスマッシュの練習方法は、弟を壁として打つことだと言っていた。お前の兄の名前は?」
「まさか」と大地
「その人だよ。高校インターハイ優勝の甲野浦谷は、弟をいじめるのが好きな最低やろうなんだぜ。」
「なるほどな、それであのレシーブか。」
「そういう、榊は、中学で有名だったんだろ?」と大地
「有名だったのは、俺の双子の兄だ。」
「は」
「俺の名前は榊直司だ。直也じゃない。甲野、今度の部活までにルールとフォームを覚えておけ。相手になってやる。」
「フォームを覚えろって…俺は、初心者なんですけどね?」
榊は、フッと、笑う「もうほとんどできてる」
榊が帰り、まるで嵐が消えたように静かになった。
「今年の一年は、濃いやつばかりだ」長野は、ため息をつきぼやいた。