見学
矢乃木青は、二年生の先輩だった。
そんでもって、大地の姉だ。
いやまて、姉ならわざわざ、今渡しにいくひつようないんじゃね?と、思いながらも大地と俺は、二年の教室に向かっていた。
今思うと、弟の大地がよくも悪くも筋肉質な体型のため、姉があの、ボブの女の人だと思えなかった。
ガララ、二年生の教室に入ると、あの時の美少女がた。
この前と同じようにボブの髪型できれいな顔立ちだったが、今回はジャージじゃなく、女子制服だ。
「ねーさん、こいつが持ってたー」
「あーー、あの時の」と青さんが、いった。
俺の持ってる生徒手帳を奪うとニコッと笑い
「入学式の時届けてほしかったなー」と、顔を向けていってきた。
「入学式の時、教室に来たんすけどね」
「ずっといたのに、おかしいなぁ」とニコッと青さんは笑う。
よく笑う人だ。と俺は、思った。
それじゃあ、と俺は挨拶をして帰ろうとしたとき青さんが手を握ってとめてきた。
「部活の入部はきまりましたかな?」
「全然」
「なら、いいや。じゃあ、今日は部活の見学に行こ。」
「は?」
「嘘ついた罰として、バドミントン部の見学に来てもらいます。」
…大地に顔を向けるとニヤニヤしていた。
俺は、バドミントンの見学にいかなきゃいけなくなったらし。
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俺は、バドミントンが苦手だ。
俺がここの高校に入学した理由の大部分がバドミントンが関係しているからだ。俺は、3歳のころから四歳の兄のスマッシュの相手として、こきつかわれていた。
スマッシュ相手とは、俺がロブを打ち上げて兄がスマッシュを延々とうつ馬鹿みたいなものだ。
……四歳の頃から兄はバドミントンをはじめた。
親が、社会人のバドミントンクラブに通っていたため、兄は、小さいころからバドミントンをやらされていた。
そして、覚えたばかりのスマッシュの相手として俺は、いつも、レシーブをしていた。
3歳のころから、つい最近までずっと。
もちろん、独り暮らしに憧れてた理由の一つは、毎日のスマッシュの相手から逃れることができるからである。
バドミントンが、嫌いなのか兄が嫌いなのかわからない。
まぁ兄は嫌いだ。
「甲野君は、バドミントンやったことある?」と青さん
「…ぼちぼちっすね」と俺は答える。
「そっか」
「俺は、経験者だぜ」と大地
「ぼちぼちってのは、どんくれぇなんだ?」
「家族の付き合い程度に」
「へぇー、家族のなかにバドミントン好きがいるんだ。」
「そりゃ、病気レベルのがいるぜ」
ーーーーー
体育館 体育館に入ると、何人かの見学者と先輩がネットをたてていた。
やや、弱く張られているネットを見てこれでいいのか?と俺は思った。
「じゃあ、見学者君はここでまってて、」と青さんは、指を指して笑った。
「どうも」
暫くして、シャトルの弾く音が聴こえ始めた。パァン
パーンパーンと、カワイタ体育館に、響き心地よい音が耳に届く。
バシーン!!!
その中にバシーンバシーンと、荒れたような音が聴こえる。
「スッゲースマッシュ!あの先輩!」
そう言ったとある見学者は、そのおとをならしているせんぱいを指差した。
先輩は、髪の長い男だった。
「見学者が、いるから、わざとコンパクトに叩かず、音の出るように力任せに打ってる。音が出る方がうまく見えるしな」と大地。
「音を鳴らすことに意味はあんのか?」
「……うまそうに見えるだろぉ」
「……ふーん、ならせるっていいことなのか?」
「少し違うな、音をならすだけなら誰でもできる。」
少したち
「よーし、じゃあ、見学者も、混ざってやろうか。」と長髪の男が、言った。
長髪の男は、一人の女の子を指して打ち合い始める。
「じゃあ、スマッシュ打つよー」と長髪は、言うとスマッシュを、打った。
バシーン
うるせぇ
「はやーい!先輩!」と女の子がはしゃぐ
「部員の勧誘には向いてるなあの先輩」と大地が嘲笑いながらいう。
「俺は、入りたくなくなったぜ」
「ありゃりゃ」
このとき、甲野浦木は長髪の先輩の打つスマッシュが速いとは思えなかった。
今思えば当然である。
「よーし、次はお前だ」と長髪は、大地を指差していった
「およびだな」
「いってらっしゃい」
大地は経験者と言っていたが、あの先輩より、強いのだろうか?
長髪の男がでかい音を出して、スマッシュを打つと、大地は、綺麗に返した。
「大地は、天才だからね」と青さんは、いつの間にか隣に座り言った。
「でも、あの先輩もかなりうまいよ、部内1だし」
長髪の男は、浮き上がったシャトルを今度はコンパクトに打つ。ひゅんと音が聞こえた気がした。
突然スピードが上がったスマッシュは、大地のラケットを弾き、シャトルは、コートの外に飛んでいった。
得意そうにする先輩。
「でしょ?」
「でしたね」
「次は君がいってきなよ。君の打ってるとこ、ちょっと気になるかなー」
「……わかりました。」
青は、違和感を感じていた。
先輩の打つスマッシュは、正直速い方だ。初心者からみたら、さらにはやくみえるだろう。
しかし、あの子はまったく、驚く気配がなかった。
家族の人のショットが速かったのかな?とう~んと考える。
大地の持っていたラケットを、貸してもらいコートに向かった。
「じゃあ、あげてもらっていい?俺が基本のスマッシュを見せるから」
「お願いしゃーす!」
パァンと、俺は、高くシャトルを打ち上げた。
あまりうまくあげれなかった。
「(綺麗なロブだな)」と大地は、思った。
天井に近いところまでシャトルは、パシーンと浮いた。
「(さぁ、驚け!)」長髪の先輩は、甲野に向けて、シャトルを叩いた。
バシーン、鋭く空中を走るシャトルは、斜めに切るように飛んだ。
バシーン。
……え?
「(……………)」
大地は、目を丸くした。
先輩の打ったスマッシュは、甲野に、すごいスピードのドライブで叩き返されたからである。完璧に。
そして、甲野も目を疑った。
何故こんなにも゛遅いのだ?゛
「すみません、ちょっと癖で」と甲野はいった。
甲野は、ラケットをくるくると回し、もう一度握りしめた。
「あ、あー、なかなかいい反応だな。じゃあ、もっとはやくとばすよ。」
二球目
今度は先輩は、コンパクトにスマッシュを叩く。
先程のような大振りではなくコンパクトに打つ瞬間だけ力を入れた、恐らく本当のフォームだろう。パァンと力強い音が体育館に響いた。
パーーーン
だが、
バシーーン
先輩の打ったシャトルは、また、ドライブ気味に、いや、ネット付近で叩き落とされていた。
「ぼちぼち?だっけ。」と青さんは、大地に呟いた。
「ぼちぼちらしいよ」と大地は、笑いながらいう。
「経験者かな?」と長髪の先輩は、甲野にいった。
「家族付き合いで少々」
「ふ、ふーん。ま、今日は肩いたいからさ。もう一球いいかな?」
「上げますよ
」
パシーン
俺は、バドミントンのレシーブだけは、3歳のころから、こんなのよりも、もっと速い兄の相手として毎日返していたんだ。この程度の球、兄さんのに比べたら。
パン!長髪の先輩は、シャトルの落下地点から前にとび、体重をシャトルにのせ、打った。
「ジャンプスマッシュ、初心者に打つか?普通」と大地
「普通の初心者には、打たないよね」とニコッと、青さん
バシーーン
角度とスピードの乗ったシャトルは、甲野に完璧に返された。
シャトルが、転々と転がる。
「………」
「普通の初心者じゃないね」
「もういっすか?はやかったっす」甲野は、そう言った。
「ま、まって。」
「あと一球!!(ドロップならどうだ)」
長髪の先輩は、我慢でかなかった。
叩き返されたことに、あと、叩く必要なくね?と思っていた。
先輩の言われた通りに俺はまた打ち上げる
甲野の上げたシャトルを長髪の先輩は、ドロップを打った。
「スマッシュとれるやつに、ドロップ取れないわけないじゃん」と大地がいった。
スカッ!と風を素早く切る音が体育館になった。
「やっぱ、初心者だ」
「そうだね」
と青さん、言った。
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「じゃあ、入部まってます。」
矢乃木青さんは、ニコッと笑って俺にいった。本当に笑う人だな。
見学者は、一通り打ちおわり、練習かはじまるから、これで、見学者をかえした。
「お前、本当に初心者?といっても、ドロップ返せないところは、もろ初心者だなー」と大地
速い球なら返せるんだけどな。俺は、そう大地に返す。
「それにしても、お前のねえさん本当に明るいな」
「お前にはな」