七話 決着と契約
チョイグロ
扉を開けると、少し広がった空間に出た。
松明がたかれているようで、明るいし少し暖かい。ということは当然…
「で、その坊主が珍しいか何だかで高く売れてな!懐が温かいんでお前らにも酒を持って帰ったというわけよ!」
「まじですかお頭!そりゃあラッキーでしたね!」
「そうだろそうだろ…ん?どうした?もう交代でいいのか?がっはっは!」
という具合に酒盛りが行われていた。
《ここにいる全員をぶち殺したらぁこの盗賊団、名前は…そうそう≪黒刃団≫だっけ?は全滅だねぇ…》
と、相変わらず間の抜けた調子でしゃべるゴール。
眠いんなら帰ってほしい…
まぁそれはいいとしてこいつらは俺のことを仲間だと勘違いしているようだ。多分さっき殺した奴らの中の一人とでも思っているに違いない。
さらに酔っていて判断能力も鈍っているはず…
じゃあ先手必勝しかあるまい。
「【ジャァァァァァベリィィィィン】!」
敵は十一人。そいつら一人ひとりを串刺しにするイメージで魔法名を叫ぶ。
目の前に広がる赤、赤、赤!
「う、うわああああ!なんなんだ!誰だお前は!」
ちっ!やはり討ち漏らしがあったみたいだ。
「てめええっ!」
と叫びながら盗賊のリーダーと討ち漏らしたやつら三人が徒党を組んで攻めてくる。
まずは一人目がマチェーテのようなものを振りかざして突っ込んできた。
そのままてのなかにあるジャベリンを突き出す。
松明があるとはいえ視界の良くない洞窟のなかで影の槍を視認するのは難しかったらしく、そのまま串刺しになった。
つか俺って今まで串ざしでしか敵殺してなくね?
そして続けざまに
「【ジャベリン】!」
と叫ぶ。
よっしゃ!これでミッションコンプリー…
「なめる…なぁぁぁ!くそがきぃぃぃぃ!」
といってリーダーが突っ込んでくる。
「ぐあっ!あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!」
そのままマチェーテの切っ先が左肩へと吸い込まれた。
いってぇ!まじでシャレにならんぞ!
《いたそうだねぇ…しょうがないから【従者召喚】を教えてあげるよ。》
という声が聞こえると同時に周りの景色がいままでよりもゆっくり流れ始める。
つかまじで鬼の形相だな…リーダー…
あと神様万能すぎワロタ。
あっ、こいつ悪魔だっけ?
《…死にたいなら…》
「申し訳ありませんでしたぁ!お願いだから助けてくれ!」
くそっ!クールなキャラがこんなところで崩れるなんて…
《時間あんまりないから急いで複唱ね。【汝の意思は我の意思。我の望みは汝の望み。底なしの深淵の奥底、最後の審判の日に残るそこ、消す事の出来ない火と硫黄の中、鎖でつなぐ。今ここに、影と夜とで契ろう!来たれ!】》
長っ!しかし俺は記憶力の良さに定評があるのだっ!
「【汝の意思は我の意思。我の望みは汝の望み。底なしの深淵の奥底、最後の審判の日に残るそこ、消す事の出来ない火と硫黄の中、鎖でつなぐ。今ここに、影と夜とで契ろう!来たれ!】」
すると…
景色が元の速さに戻った。
まだ儀式って終わってないよな…
もしかして…死ぬ?
「ああっ!くそっ!」
っと喝を入れて盗賊のリーダーを蹴飛ばす。
当然向こうが全力で握りしめている剣も引き抜かれるわけで…
「あああああああっ!」
痛い。左肩に火が付いてしまったみたいに熱い。
【スクルドの目】はひっきりなしに命の危険を知らせてくるようになった。
しかし向こうのリーダーも運よく怪我を負っているようだった。
よく蹴飛ばせたな、俺…
なけなしの幸運よ、俺に力を!
「…お前が私を呼び出した主かね?」
と、祈っていた俺の視界に小さい何かが目に入る。
「どうやらそのようだな…まぁいい。自己紹介させてもらおう。我が名はアモン!魔界の大公爵である!」
そいつは梟の頭、何やら獣らしき胴体、あとやたらうねうね動く尻尾をもっているようにみえた。大きさは子猫ぐら…い。
「はずれきたああああああああ!」
さけんじゃってもしょうがないよね!
「失礼な!我ほど闇魔法に精通している者はいないのだぞ!神界、人界、魔界のどこにもな!」
「じゃあそいつを何とかしてくれ!頼む!」
「…まぁいいだろう。しばらくぶりの人界で気分がいいし、敵がいるのでは落ち着いて契約の儀もおこなうことができないからな!【ウロボロスバインド】」
すると…
「うわああ!なんなんだよこの蛇はぁ!」
盗賊のリーダーに巨大な細長い影が巻きついていた。
「このっ!放しやが…れ…く…そ……」
(ちょっと!急いでとどめささないとそれ死んじゃうわよ!ニュクス様の提示した条件に反するわ!)
その条件うんぬん初めて聞いたんだけど!
とか思いつつ痛みを引きずる体に鞭を打って盗賊のリーダーのそばまで行き、ジャベリンを心臓あたりに向かって突き刺した。
影の蛇が男の全身を覆っていたので心臓にあたったたかどうか知らないが…
「おお!すごいな主様は!その傷の痛みに耐えてとどめを刺すとは!仇かなにかだったのか?」
「…まぁちょいと人生を狂わされたんでな…」
主に
(おめでとう!これで君はニュクス様からチート能力をもらえるぜ!ひゃっほい!)
とか言ってるバカ女神と
《いいスプラッタショーだったよ…ていうか私があげたスキルでわざわざアモンを呼び出すとは…運がいいのか悪いのか…まぁどうでもいいけどね。ふわぁ…》
とか言ってるニート悪魔のせいだが。
「え…ベベベベルフェゴール様!?ど、どうしてこんなところに…」
《アモン…ささっと彼と契約して?あなたが消し炭になる前に。》
「け、【契約の儀】!」
とアモンが叫ぶと俺の左手にある魔術紋というらしい蛇の意匠の蛇の顔の前あたりに梟の顔をかっちょ良くデザインしたような模様が浮かび上がった。
「では後に続けていってくれ。【我、汝と鎖の契りを結ぶ】」
「【我、汝と鎖の契りを結ぶ】」
そういうと俺の左腕に書かれている蛇が梟の意匠1を飲み込んだ。
動くな!皮膚がむずむずする!
いや、実際には何ともなってないけども。
「契約完了だ!よ、よろしく頼むぞ!」
と、梟の顔が引きつった笑みを浮かべて挨拶してきた。
悪魔の世界も大変なんだなぁ…
(契約は済んだ?じゃあ外でニュクス様が待ちわびてるから早くこの陰気くさい場所をでるわよ!)
とベルの声が頭に響いてきた。
そして俺は盗賊のリーダーの変わり果てた姿を横目に、洞窟を去っ…
あっ!そうだ。
「ちょっと待ってくれ!」
そういって俺は盗賊どもの体や部屋の奥などを探り、金貨を二十枚ほどゲットした。
(はやくしろよ!)
とベルには怒鳴られてしまったが…
気分が乗ったので連投です。
なんか読み返すと地の文の拙さがなんとも…
まぁなまあた(ry