二話 哀れ主人公、そして現れる犯人
「よし、降りろ」
盗賊のリーダーが俺にそう促す。
まぁここらで状況整理といこうか…
まず俺らがいる街がエスレア帝国の地方都市ザナウェルというところらしい。例に漏れずはじまりの街は魔物の侵攻をくいとめる最前線の城塞都市らしい。
俺の異世界ライフは終わってるので当分お世話にならないのだが冒険者ギルドなんてものもあるらしい。
ちなみに俺らが今から行くのは奴隷商会である。
らしいらしいうるさいって?
盗賊のリーダー(今は小奇麗な格好をしているが…)と門番との話が聞こえてきただけだからな。ていうかわかったのは、細かく言うと類推できたのはここまでだ。
入国は実にスムーズに行われた。門番さんの気の毒そうな視線が痛かったぜ…
そういえば言葉は普通に日本語なのな。さすがご都合主義。
ちなみに例によって例のごとく読み書きはできなかった。まさにファンタジー。
で、まぁ只今奴隷商会についたところというわけだ。
さっきから脳内でドナドナがループ再生されている。第二の人生も最早ここまでなのか…
無念。
(まぁなるようになれ、か…)
「これはこれはようこそいらっしゃいました《黒刃団》のお頭さん。本日はどういった御用向きで?」
向こうがこいつを知ってるということは何度か取引したことがあるのかね?
やっぱこいつの主な収入源って拉致って売ることなんだろうな…
「ああ、こいつを買い取ってもらいたい」
「才能は?」
ん?才能?スキルやらなんやらのことかな?
「皆無のようだが健康な働き盛りということでどうだ?」
「でしたら200000リルで買い取りいたします」
「ん?即決だな。あとその値段で本当にいいのか?」
「はい。黒髪黒眼というものはなかなかいませんで…」
ちなみに奴隷商は小太りのおっさんで銀髪緑眼、盗賊はTHE盗賊的な体型で茶髪茶眼だ。
「そうかそうか!それは重畳!今夜は酒盛りだな!」
「ではこちらの契約書に血を垂らします。指を」
と、俺に奴隷商が話しかける。どうしようもないので指をさしだした。
チクリ、と指先に痛みが走る。どうやらナイフの先端でやられたようだ。
「はい、確認しました。ではこちらの隷属の首輪をつけてもらいます。ちなみに今の契約書には魔法がかけられていまして、あなたはマスターなしには食事すらできないと心得てください。逆らえば苦痛が、それでも抗えば死が待っていますよ?」
と、ニッコリ笑われた。怖ぇぇよ…
「ではこちら金貨20枚が入っております。帰りはお気をつけて…」
「おう、またひいきにさせてもらうぜ」
そう言って盗賊のリーダーは帰って行った。
いつか復讐してやろう…
というか貨幣は金貨一枚=10000リラで合ってるのかな?
「それでは後のことは頼みますよ、ソウ」
「かしこまりました。こっちに来い、新入り」
うおっ!いつの間に入ってきたんだこいつ…しかも黒づくめの外套なんか着ちゃってまぁ…
「は、はい」
下手に逆らわないのが吉ってね。そうして俺は黒づくめについて行った。
*************
「ここがお前がこれから主人に買い取られるまで過ごす場所だ。入れ」
なんというか…すごく…牢屋です…
簡易ベッドにトイレがある以外は何もない部屋だった。
「ちなみに言っておくがこれは奴隷の中でもかなり待遇がいいほうだぞ?その妙な服を剥がされないだけ幸運と思え」
あ、そういえばジャージ着てたんだった。あんまり騒ぎにならないのな…
「食事は朝晩2回。義務は特にないが簡単な筋力トレーニングを続けていたほうが何かと得だ」
じゃあな、と牢屋に鍵をかけて去っていく黒づくめ。女か男かは知らんがナイスツンデレだな。
(やっほー!)
「うわっ!誰だ!」
(後ろ後ろ)
なんだなんだ?頭の中に直接響いてくるような感じだ。不快ではないが。
そして、俺が後ろを向いたときそこにいたのは…
(我こそは運命を司る女神!その名もヴェルダンディであーる!ベルって呼んでくれて構わないよ。端的にいえばまぁ…)
そして自称女神は…
(君をこの世界に招待した張本人ってことになるのかな!)
とのたまいやがった。
二話目です。
投稿は不定期になるかと思います。