十三話 戦闘狂と踊ろう
神様達の説明です。自分がカバーしてるのがギリシャ神話、北欧神話中心なのでそこら辺からの出典が多いです。
《ゼウス》人界の管理者。だが立場的にはオーディンと並び立つ存在である。人々もゼウスかオーディンを主に信仰する傾向がある。
《ヴェルダンディ》元は三姉妹だったが、先代が子供を一人しか生まなかったために一人に《ウルズ》《ヴェルダンディ》《スクルド》が継承された。今は彼方に《スクルド》を譲渡している。また、彼方を勝手にフィアンンセにしているが、記憶を消された彼方はそれを思い出せないでいる。
《ベルフェゴール》七つの大罪最強の悪魔。怠惰を司る。その性格ゆえにその強大な力を自分のためにしか使わない。最近の楽しみは彼方を観察しながらごろごろすること。
《ニュクス》夜の女王、とのみ伝えられる。人々にはあまり知られていない神。しかし同時に最古の神々の内の一人であり、非常に強大な力を持つ。
《タナトス》ニュクスの息子で、死を司る。強大な力をもっていながらもあまり使えこなせていない神界きってのへたれ。だがショタであるため、女性神にかわいがられていることが多い。最近の趣味は彼方の観察。
《ヒュプノス》ニュクスの娘で、眠りを司る。一応神だが、魔界に入り浸っていることが多い。最近はベルフェゴールのところでごろごろしていることが多い。猫被ってると疲れるとは本人の談である。
《アレス》戦いを司る。ちょくちょく人界に降りてきて暴れたりする以外は言い神様。暴れるのはもっぱら戦場か、《大侵攻》の時である。
このぐらいですかね?既出の神は。次話は魔法の概念について書こうかと思います。
「用だと?ハッ!戦闘に決まっているじゃないか!」
ですよねー!
ということで修羅場です。
「…それはどっち「奴隷君のほうな」ぐぐぐ…」
「まぁ《鮮血姫》とも後で闘いたいが…な。だが二人同時はなしだ。一人ひとりとやりたい」
ああ…ギャラリーも走って戻ってきた…
どうやら賭けも行われるらしく、
「イヴに金貨一枚!」
「《鮮血姫》に大銀貨五枚だ!」
「馬鹿め!奴隷の坊主に金貨二枚だ!」
という怒号が聞こえてくる。…なんで俺に二万もすってるやつがいるんだよ…プレッシャー考えろよな…
「じゃあまずは奴隷君からだ。いつでもいいぞ?」
と言って彼女が取り出したのは…
(ハルバート…で合ってるよな?)
そう、ハルバートだった。彼女は自分の背丈ほどもある武骨で、飾り気のないハルバートをどこからか呼びよせていた。
「カナタ…」
とアイゼスの声が背中にかかる。もしかして打開策を!
「叩き潰してこい」
…振り向くとはたしてそこには凄絶としか言いようがない笑みが浮かべられていた。
後門の虎。前門の龍。
俺に残された選択肢は…
「…やりますよ…」
渋々。本当に渋々戦うことにした。幸いなことに体力はまだまだ残っている。
さて、どう戦うか…
「あ、ちなみにこっちも使わないから魔法はなしな」
それはこっちにとっても望むところだ。使えるといったらこの前アモンが教えてくれた【ジャベリン】くらいだしな。
「ええ。了解です」
と、相手との間合いを測る。そして【武器支配】をしているからこそ可能な…
「ハッ!そうこなっくちゃなぁぁ!」
ノーモーションからのなぎ払い。
もちろん威力はモーションありと変わらない。
しかし彼女にがっつりと受け止められた。
「重ッ!」
彼女の武器はアイゼスの剣よりも確実に重たい。
身体能力の上がっている俺にそんなことは問題にならないのだが…
なにせアイゼスと戦うのと比べて勝手が違いすぎる!
勝てる確率は三分といったところか…
かくなるうえは…
「セイッ!」
速くだ!その一撃はイヴを軽く後退させた。
追撃をかけようとしたその時…
「ハハハ…ハッハッハ!いいねぇ!ノッてきたぜ!」
という言葉と共に眼の色が変わる。そう、澄んだ碧色から濁った赤へと…
「まずは一発!」
と言って彼女のハルバートが振われる。なんとかデスサイズでいなしたが…
やばい。さっきよりも攻撃が重くなっている!
さらに…
「フッ!」
と、相手に肉薄して鎌で下から切りつけるしかし…
「なっ!」
彼女はそれをバックスウェーでかわすと、距離をハルバートの間合いへもっていき、ラッシュを仕掛けてきた。
必死でガードをする。
この動き絶対ハルバートじゃ無理だろ!
なんとかすべての攻撃を受けたものの…
(このままじゃジリ貧だ!何か打開策は…)
そう考えている間にも彼女は絶え間なく攻撃を仕掛けてくる。
こうなったら…
「アイゼスさんっ!眼帯はずしてもいいですか!このままじゃ押し負けます!」
「いいだろう!許可する!」
と、言った声が耳に届くと同時に眼帯を取り払った。
スクルドの眼のスキルは危険察知だ。なので…
「奥の手か!叩き潰してやる!」
と殺気が駄々漏れのイヴの攻撃を見切ることが可能になり、最小限の動作でハルバートをかわす。
「っ!」
とイヴが息をのんだ。
リズムが崩れたようだ!
調子を取り戻させないうちに…
「トドメ…だっ!」
とイヴの懐に入り、抱き込むようにして鎌の刃を彼女の首にあてた。
イヴの赤かった眼は段々と碧色へと戻っていき…
「合格。七割の俺に勝つやつがFランクにいるとはな…いやはや、驚きだ。ちょっとお前がほしくなったな…」
…脳が現実を拒否している。今何て言った?こいつ…?
「?ぼけーとしてないで鎌を放さないか。さすがに人前でどうこうはしたくないぜ?」
という言葉を脳が咀嚼するのと同時にずさああ!と後ろに下がる。
絶対俺のこと食う気だ!あの人!
「…主人を差し置いてなにを話していたんだ?カナタ」
後門の虎忘れてたあああ!
冷や汗がぶわっと噴き出す。
つか勝負に勝った意味だろ!
「まぁ全部聞こえていたがな…こほん、イヴ・ウォーカーとやら!カナタは渡さんぞ!」
おお!かっこいい!
「じゃないと私はまたぼっちになってしまうからな!」
おい理由!そしてキャラ!
「じゃあ勝負だな」
「ああ、勝負だ」
俺の人権は…
あ、奴隷だった…
「お前の得物はショートソードか…ならばバスタードソードで相手してやろう。」
イヴがそう宣言すると、ハルバートは光の粒子になった後掻き消え、代わりに彼女の右手にバスタードソードと思しきものが出現した。
ホントどうなってんだか…
「今回も魔法はなしだ!こっちから仕掛けるぜ!」
と、いつの間にか眼が赤になっていたイヴがかなりの速度でアイゼスに突っ込んでくる。
アイゼスはそれを…
「勢いだけだな…」
と軽く受け流した。
俺が戦っているときは集中していて聞き取れなかったが、周りからもおお、と感嘆の声が漏れる。
Sランクがどれだけ強いのかは想像に任せるしかないがイヴはかなりの実力者なのだろう。
本気は出していないようだが…
「次はこちらの攻撃だ」
というとアイゼスは体重をかけた一撃をイヴに向かって振りおろした。
イヴはそれをバスタードソードで受け止める。
「ハッ!さすがはキャメロン家だな!なかなかに重い一撃だ!」
しかし、とイヴは続ける。
「バーサークした俺に勝てるのかな?」
と言うとアイゼスが若干押され始めてきた。
が、両者とも一歩も引かない。
その剣で相手を押し合う状態はいつまでも保たれるように思えたが…
「合格」
といいつつイヴは後ろに下がると、バスタードソードを霧散させた。
「非常に納得がいかないのだが…?」
「まぁ奴隷君が欲しいというのは本心だが…いい加減ソロも飽きてきてだな…面白い奴らと仲間になりたかったわけよ。そこで面白そうな奴らが面白いことをしてたから乱入しようと思っちゃったわけさ…オーケー?」
と軽薄に応えるイヴをキッと睨みつけるアイゼス。だが仲間、つまりパーティーに入れるメリット(上のランクの依頼が受けれるとかだろう)に気づいたらしく…
「…まぁいいだろう。私たちのパーティーに入れてやらんこともない」
と、急に態度をひるがえした。
なんでそんなに上から目線なんだ…
「そうか!じゃあ交渉成立だな!パーティー申請に行くぞ!」
イヴはその態度をするわけでもなく、がっちりと俺の首の襟をつかんだ。待て!これは!
だがハルバートを軽く振りまわす腕力に不安定な姿勢で逆らえるはずもなく、ずるずると引きずられていってしまう。
アイゼスはその時、野次馬に来て金を賭けていた奴らのブーイングを殺気で押さえつけていた。
よほど決着がつかなかったことが不満らしい…
八つ当たりされている彼らはどうしようもなくちっぽけに見えた。
…引きずられている俺を含む、だが…
************
「おかえりなさいま…せ…?ウ、ウォーカー様。その引きずられている人は…」
「こいつか?噂の奴隷君だよ。ところで…キマイラの件、悪いけどキャンセルで頼む」
「…一応理由をお聞きしても…?」
おお!クールな受付嬢さんをイライラさせてるぞ!さすがはイヴ…
とか考えてたら襟を強く引っ張られた。
エスパーかよ!
というか情けなさすぎるのでイヴの機嫌をあまり損ねないように手を外させ、立たせてもらった。
アイゼスもちょうど訓練場から帰ってきた。
表情から察するに、結構憂さ晴らしができたらしい。
なによりだ。
「理由か?少々新人教育をな…」
と舌舐めずりでもしそうな目線でじっとこちらを見つめられる。
怖いわ!
「…案外まとも…なんですかねその理由は…はぁ…わかってますか?ウォーカー様。来月ですよ?《大侵攻》」
ちなみに《大侵攻》とはその名の通りモンスターが徒党を組んでこの街に押し寄せてくることだ。ここエスレア帝国の地方都市ザナウェルはその《大侵攻》に対する防衛要所だ。もっといえば冒険者にとって仕事に困らない街。それがザナウェルなのである。
「そういえばそうか!いやー、楽しみだな!」
「…もういいです…」
と受付嬢さんはどよーんとした空気を纏わせ始めた…
「おっと、ごめんなアリア?ちゃんと仕事はするぜ?」
ということで諸々の手続きを済ませ、俺達のパーティーにイヴが加入した。
「明日の正午前にギルド前に集合な!俺がSランカーたる所以をモンスター相手にみせてやるぜ!」
と言いながらすぐに帰ってしまったが…
まったくもって迷惑で破天荒な人だ…
今日はぐっすり眠りたいな。
「はぁ…帰るぞカナタ」
そして俺たち二人はとぼとぼと宿へ帰還した。
やっと次回からクエストをやっていきます。
主人公初無双になるかもしれません。
多くのお気に入り、評価ありがとうございます!
この作品の神とか、モンスターは一応神話に準拠していくつもりなので決定的な違和感があるときには教えてくださるとありがたいです。




