十二話 訓練時々戦闘狂
《人物紹介》
「辻占彼方」十七歳。異世界に召喚された後山賊に連れ去られ、奴隷にされてしまう。武器はデスサイズ。魔法適性は闇。最近中二病が再発し始めたことが悩み。
ステータス
名前:辻占 彼方
年齢:17歳
種族:魔族
称号:《ハードラック》《漂着》《神々の観察対象》
スキル: 【闇魔法の心得】【従者召喚】【早期大成】【スクルドの眼】【サイコパス】【死神へ至る道】【夜の友】
「アイゼス・シーリア」本名は「アイゼス・キャメロン・シーリア」キャメロン家から追い出されてしまったため、自らの才能を生かし冒険者となろうとしたが人脈構成に失敗。本人もやりすぎたとは思っている。武器はショートソード。魔法適性は火、土、闇。
ステータス
名前:アイゼス・シーリア
年齢:21歳
種族:普人族
称号:《鮮血姫》
スキル: 【聖剣士】【シックスセンス】
「イヴ・ウォーカー」
ギルド内でもかなりの有力者。美人だが乱暴な性格ととある事情により近づく男は皆無。性格の割には几帳面。
ステータス
名前:イヴ・ウォーカー
年齢:18歳
種族:普人族
称号:《戦闘狂》
スキル: 【狂戦士】戦闘行為をはじめると見境がなくなる。しかし見返りに絶大な攻撃力と戦闘センスを得る。
【パラレルマジック】魔法を同時に展開し、待機させておくことが可能。自律砲台のようにもすることが可能。
今回は主要キャラのみの紹介です。
次回は神様の説明を入れます。
ギルドでパーティ名の登録まで済ませると、僕たちは解放された。
そして今は…
「どうした?かかってこないのか?」
ということでアイゼスと対峙している。
なんでも、
「お前の実力をみてみよう」
ということらしく、これまたお約束の通りにギルドの裏にある訓練場に連れてこられたのだ。
武器はブラッドウィスパーを構えている。
というのも俺はこれでしか全力が発揮できないからだ。
危険性に関しては、アモンがかけた【セーフティ】という魔法で解決された。
【バインド】を改造し、相手を殺さないということを強制させる魔法らしい。つか魔法万能すぎだろ…
と、まぁそんなこんなで模擬戦をやらないという選択肢はなく…
「いきます」
と、アイゼスとの距離を一蹴りでつめた。ナイトメアとスキルの恩恵で、身体能力が上がっているためにできる芸当だ。
そのまま鎌の柄の先端ででアイゼスを吹き飛ばそうとするが…
「甘いっ!」
といって攻撃を受け流され、懐に入られる。なので俺は…
「ふっ!」
と、そのまま鎌を下からアイゼスに切りつけた。このデスサイズは俺の腕のようなものだ。できる動作の数は通常の武器を使う者より圧倒的に多いし、無駄なく鎌を振ることができる。しかし…
「ぐっ!」
アイゼスに鎌を受け止められた。そのまま鎌の下をくぐり抜けられ、またしても肉薄される。そのまま流れるような動作で…
「私の勝ちだな」
と言いながら首に剣を突き付けられた。
「参りました…」
と言って俺は肩をすくめる。
ご主人様はとてもお強いようだ…
「まだまだ経験が足りないようだな…私なぞは家に雇われていた兵士と年がら年中模擬戦をしていたようなものだからな。まぁ、始めてにしては出来すぎなほどに動けていたぞ?」
とのことだ。ちなみに元の世界では武術というものにとんと関わってわこなかった。
だから今の動作はフィーリングだ。本能の赴くままに動いた。
「しかし…敵から一瞬でも目を逸らしたことはいただけないな…」
といってニッコリほほ笑まれる。
…そんな瞬間があったのだろうか?
…というか笑うタイミング違うくないか…?
「どうせ日が沈むまではやる事が無いんだ。たっぷり…みっちりと動きを身につけさせてやる…おい、アモン。術を解け。」
ちょっと待った!なんで術を解く必要があるんだ!
「いやしかしだな「早く解け」はい、解かせていただきます!」
メンタル弱いなフクロウ!
「殺気というものを直に感じながら訓練しないと実戦でやられるからな…まぁ殺しはしないさ」
確かにそうなんだろうけども!
そこである事にふと気付く。
「ア、アイゼスさんはデスサイズでの戦い方とかわからないんじゃないんですか?」
よし!これで今日までは平穏に…
「…兄がな…『男子たるもの武器の使い方の一つでも覚えておけだと?どうせならデスサイズを扱えるようになりたいな…』とか言って人界でも何人かしかいないデスサイズ使いを家に招いたわけだ。その時に一緒に習った。ちょうど一五歳ぐらいの時か…」
お兄ぃぃぃぃさぁぁぁぁん!
中二病も大概にしとけよ!
かくしてアイゼスさんの楽しい楽しいしごきの日々が始まったのだった…
**********
「ふぁー…暇だな…強い奴いないかな…」
と彼女、イヴ・ウォーカーはあくびをした。
イヴについて人々がまず口にするのが《戦闘狂》という言葉だ。
《大侵攻》の時には一人で敵の十分の一を相手取り、およそ千もの戦果をあげた。
かくして二つ名は《戦闘狂》に加えて《一騎当千》ともなったのだが、人々は口をそろえて《戦闘狂》と呼び続けた。
容姿はエメラルドグリーンの髪にスッと細められた碧色の眼、いつも挑発的な笑みを浮かべている唇が特に印象的だ。
体型はあまりグラマラスではないが、前にそれを酒場で馬鹿にした男がテーブルにめり込まされたため(もちろん笑顔で)誰も口に出さなくなった。
「こう、ぐっとくる男はいないのかなぁ…私よりも強くなけりゃあどうこうする気なんぞおきねぇが…」
これも彼女が常日頃から言っていることで、冒険者たちの間ではイヴに告白するぐらいならドラゴンに告白するほうがまだまし』と言われるくらいには有名な話だった。
だがSランカーでもある彼女に勝てる相手などそうそういるわけがなく、今も独り身を貫いている。
そんな残念な彼女だが、容姿が中々に整っているが故にギルドのSランカーの看板的存在にもなっていたのだった。
「…まぁいい。キマイラの討伐依頼が出る頃だな…ふっ飛ばしてくるか…」
そう言いつつギルドへと入って行った。だが…
「…なにかあったのか?」
と奥に進みながら受付嬢のアリアに話しかける。というのも、ギルド内に人が少なすぎたのだ。
いつもは人がごった返しているのだが、今日はそうでもない。
「あぁ、ようこそウォーカー様。実は訓練所の方に人が行ってしまいまして…」
「訓練所?それまたどうして?」
普通訓練所に用があるのは新人やその日一日を訓練だけして過ごすような奴らばかりだ。
初心者を抜けたやつや上の方のランクの奴らは街の外で動きを確認したりする。
「何でも《鮮血姫》とその奴隷が模擬戦をするんだとか…使っている武器が珍しいのと、二人の技術が相当に高いらしく、ここ数日は毎日人がそっちに流れていきますよ…」
「ほう…その奴隷というのは?」
「買って間もないはずなんですが…あの様子だといくらしたんだか…」
と、いうことで少し興味が湧いてきた。
「とりあえずは見にいってみるか…あ、キマイラ討伐をとっといてくれ」
「はぁ…了解しました。…皆さん仕事を真面目にしてほしいものです…」
と、どよーんとした雰囲気を漂わせ始めたアリアを置いて、訓練所へと向かった。
*************
「どうした?かかってくるがいい」
と、今日も元気に訓練である。
訓練はまず型のようなものものを覚えさせられ、どういう場面で使うかを実戦でみっちりと教えられる。
訓練を始めてまだ一週間も経っていないのだが、明日からはクエストを受けていくらしい。
ランクをさっさと上げたいんだそうだ。
と、いうことでこの試合は最後の実戦である。
「―、いきます」
と、今度も一歩で相手との間合いを詰める。
アイゼスもまた最初に戦ったときと同じよう懐に入ってくる。デジャヴ。この前と違うのは…
「っ!」
アイゼスが剣を振ってきたので柄の中ごろでそれを受け止め、バックステップをしてデスサイズの間合いにもっていく。
そして…
「ふっ!」
鎌を一振り。二振り。三振りと、何度も何度も切りつけ、アイゼスを疲弊させる。
肉薄させないことに重きをおいた戦いを意識しているのだ。
そして緩急のある斬撃のあとに、ひと際速度の速い斬撃を繰り出すとアイゼスは…
「…ふぅ…合格だ。お前は筋がよすぎるな…」
…それを止めきれなかった。デスサイズは彼女の首を刈り取ろうと、首筋に添えられている。
刃を首から放して、柄を地面につける。疲れた…
「これで【闇夜招来】や魔法を使っていないのが恐ろしいな…使いこなせればSランカーになることも夢じゃないな」
とのことだった。ちなみに闇魔法の【闇夜招来】は俺のスキル《夜の友》で獲得したものである。アモンは今こいつを改造している途中のため、影の中に籠っている。闇魔法のエキスパートというのは本当のことだったようだ。
まぁなにはともあれ…
「そうですかね?仮にそうだとしてもこんなに動けるのはアイゼスさんの指導があってこそですよ」
「そう言ってもらえるもらえると嬉しいがね…ん?」
と、俺とアイゼスが話しているとエメラルドグリーンの髪を持った女がこちらに近づいてくる。
俺たちの試合を見ていたやつらがはけていく中ではひどく浮いた行動だ。
そして、本当に、ごく自然に懐に入られ…
ナイフを首にあてられた。
「…は?」
と声が出てしまう。左眼が少しだけ疼いた。彼女の綺麗な碧眼が僕の眼をじっとのぞきこみ(右眼だけだが)そして、
「うーむ…いいな!実にいい!」
といいながらナイフを首元からはずし、腰に下げていた鞘におさめた。左眼の疼きも鳴りをひそめる。
そして女は芝居がかった礼をし、顔を上げると
「俺の名前はイヴ・ウォーカー。人呼んで《戦闘狂》だ。ランクはS、魔法適性は水と風だ。お前の名前も聞かせろ。」
と言ってきた。顔が整っていてなにやらきちっとした鎧を着ているので男装の麗人という印象をあたえる。
まぁ常に笑っているような表情なので雰囲気自体は喰えない奴といった感じか。
ちなみに魔法適性とは、使える魔法、という解釈でいい。だがこの世界では魔法は純粋な方がより強い。例えば普通の魔術師の場合、火、水、土、風、光、闇の魔法が使えるが、威力は微々たるもの、というわけだ(最も魔法適性が無い人が大多数を占めるが)。稀に《七煌》と呼ばれる七属性すべてを純色並みに使えるという化け物が生まれるそうだが、教会に《聖人》という形で所属させられ、国同士の抑止力として飼い殺されるのがオチなんだとか。
ちなみに俺は闇のみ、アイゼスは火、光、土、闇の適正がある。
…相手はかなりの実力者のようだし、また脅されてはかなわない。なので
「…ツジウラ・カナタ。ランクFの俺になんの用だ?」
とアイゼスの前に立つようにしてウォーカーと対峙する。
この喧嘩っぱやいお姫様が剣の柄に手をかけていたからだ。
ピリピリとした雰囲気があたりを包み込む。
…戦闘好き二人に挟まれてしまった…
不運は相変わらず健在のようだ…
やっとハーレムメンバー二人目です。
当分はこの二人で話が回ると思います。
楽しんでもらえたら幸いです。
デイリー3位ありがとうございます!
たくさんのお気に入り、評価は本当に励みになっています。
あと誤字脱字の指摘やアドバイスも大変ありがたいです。
これからもよろしくお願いします。




