十話 ステータス解放
食事処を出て俺たちが向かったのは服屋だった。
アイゼス曰く、
「その黒い珍妙な服では目立ってしょうがない!」
とのこと。
まぁそうだよなぁ…
ちなみに唯一の元の世界から持ち込んだものである。
大体三年間はお世話になったかな…
しかしこのまま持っていてもしょうがない気がしたので、服屋で売ってしまうことにする。
元の世界との完全な決別!といったら大げさだろうが…
なんてことを考えていたら服屋に着いた。
「いらっしゃいませ!」
とドアを開けた俺たちを出迎えたのは金髪エルフだった。金髪エルフだった。
大事なことなので二回言いました!
おおおお!本当に耳がとがってる!そして…
ちらっ
貧乳だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「…カナタ?様子がおかしいぞ?」
「へ…?ああ!すいません!」
危ない…ついつい意味不明なことを口走りそうになってしまった…自重しなければ…
「本日はどういった御用向きですか?」
「私とこいつの服を二着ずつほど仕立ててほしい。予算は金貨二枚ほどで頼む。」
「あー、あとそちらさえ買い取ってくれるならこの服をお譲りしますが…」
と、交渉を持ちかけてみた。
エルフの耳がぴこっと動いた。
さ、触りてぇ…
「…どうやら珍しい服のようですね。触らせていただいても?」
「あっ、わかりました。」
と言って上のファスナーを下げていく。
「「!!」」
と、そこで女性陣二人の顔が驚愕に染まっているのに気づいた。
そこである可能性に至る。
やっぱ珍しいんじゃね?これ?
「そっ!その服っ!売っていただいてもよろしいでしょうかぁぁぁぁぁぁ!」
とエルフさんが詰め寄ってきた。
その碧い瞳が俺を射抜く。
「あ…はい!売るのでこれ以上の体勢はぁぁぁ!」
どさっと金髪エルフさんに押し倒されてしまった。いい匂いがぁぁぁぁ!
「ありがとうございます!ありがとうございますうう!」
「ア、アイゼスさん!なんとかしてください!」
「しょうがないな…」
と言ってアイゼスさんにエルフさんをどけてもらった。
これ以上の密着はまずい。
「とりあえず落ち着こう。な?」
と今もアイゼスさんがエルフ店員さんを宥めている。
まぁ少しすれば落ち着くっだろう。
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そして俺たちは服屋を後にした。
もちろんジャージやファスナーについてしこたま質問されまくったがやれ旅人からもらっただのやれ旅人が神様からもらった品だのとごまかし続けていた。
というかこの世界って神様とかいるんだろうか?
ちなみに服はこちらの気候(案外暖かい)にあったものを上下三点ずつ買った。というよりもらった。
店員さん曰く、稀にこのような服が出回るがその着心地の良さのためにすごい値段がつくんだとか。
代金はオークションにジャージを出し、その落札価格の八割をくれるらしい。(二割はオークション代行料で店側に入る)
「漂着者、ねぇ…」
それが元々その服を持っていた者たちがたびたび名乗っていた名だそうだ。
その存在のことをそれとなくアイゼスやリスラ(エルフ店員の名前)に聞いてみたが何一つわかったことはない。
「…なぁ、質問を一ついいか?」
と、アイゼスが話しかけてくる。
「何ですか?」
「…いや、今のは忘れてくれ。夜、お前のステータスを見てからの方がよさそうだ。」
といってそそくさと歩いて行く。
俺はその歩に遅れないように足を動かした。
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あの後俺たちは宿をとった。
アイゼスがいきなりダブルとか言い出した時には焦ったが
「手を出したら男に生まれてきたことを後悔させてやる。」
「ダブルの方が安い。」
「ステータスをすぐに見せてもらって戦闘フォーメーションを早めに考えておきたい。なにかがあってからでは遅いからな。」
とのこと。
いやぁ…俺は紳士ですよ?ははは…
そして夕食も食べ、体を運ばれてきたお湯と布で清め(アイゼスが清拭をするときは廊下で待機してた)
いつステータス解放されるのかなぁ…と思って
「ステータス。」
と呟いてみると
「【解除】」
という音声が頭の中に響いた。
「アイゼスさん、どうやら解放され…痛ッ!」
不意に左手に痛みが走る。そのまま痛みは熱を持ち、左手から徐々に頭の方へと登ってきた。
その熱は顔を這いあがり、左目に辿りついたと同時に霧散した。左手の痛みもなくなったようだ。
…なんだったんだ今のは?
「おい、カナタ、その眼と左手の模様…それに頭の上にいる奴はなんだ?」
と、アイゼスに言われ、ふと頭の上に意識を向けると、
「zzzzz…」
という音が…
「ええい!なんだこれは!」
と、頭の上にいる奴を眼前へと引きずり下ろす。
「うごっ!痛いではないか主よ!」
そいつは梟の頭、犬だか猫だかの胴体、猫の尻尾を持っている子猫サイズの何かだった。
「我輩は魔界の大公爵、アモンだ!お前は思い出せないだろうがお前と契約している!まずはステータスを見るのだ!」
と、矢継ぎ早に言ってくる自称大公爵。
なんだなんだ?あまりの状況の変化に頭がついていけない。
「…カナタ、とりあえずステータスを読み上げてくれないか?」
「…わかりました。【ステータス】!」
悩んでいてもしょうがないしな!
名前:辻占 彼方
年齢:17歳
種族:魔族
称号:「ハードラック」「漂着者」「神々の観察対象」
スキル: 【闇魔法の心得】【従者召喚】【早期大成】【スクルドの眼】【サイコパス】【死神へ至る道】【夜の友】
とだけ出たステータスだが、アイゼスにそのまま伝えようか早速悩む。しかし…
「主が呆けているようなので私がお教えしよう。ツジウラ カナタのステータスは…」
と、止める暇もなく暴露されてしまった…
アイゼスはしばらくの間無表情でいたがやがてわずかに口元を歪めると…
「私の【シックスセンス】は最高だよ!全く!」
と、言い放った。
…はい?
「ほう、【シックスセンス】か!なかなか珍しいスキルだな!」
「そうだろう!いやはや、つい一カ月前にヴェルダンディ様から授かったんだが…」
とアイゼスが言うと、アモンはなぜかゆらゆらと揺らしていた尻尾?をぴたりと止めた。
「…そ、そうか…それはなにより…
そうだ!主様よ、我輩が預かっておいた指輪を返すぞ。元々は我輩のものだがな…」
といってシンプルなデザインの黒い指輪を差し出された。
…怪しいが…ここにきて今さらという感じなので指輪をつける。
「それでは我輩に続けて唱えてくれ。【ナイトメア】。」
「?【ナイトメア】」
すると足元がぶわっと影に覆われ、影が晴れるとそこには吸い込まれそうな黒の色のブーツが今まで履いていた運動靴の代わりになっていた。
「これは…?ってあれ?この靴のこと、だいたいわかるな…」
なんというのだろうか…
馴染む?靴の存在が心の中に入ってくる?そんな感じだ。
「次は武器なので気をつけるのだぞ。【ブラッドウィスパー】。」
「武器って…【ブラッドウィスパー】。」
すると、手元に俺の身長ほどもあるデスサイズが現れた。刀身は赤黒い光を鈍く放っており、柄にもなにやら不思議な素材が使われている。柄には何やら紋様が描かれているようだ。
「続いてこう唱えるのだ。【我が手足となり、敵を屠り、死地を駆けよ。主人たる私に仇なす者に死を。武器支配】。」
ええい!ままよ!
「【我が手足となり、敵を屠り、死地を駆けよ。主人たる私に仇なす者に死を。武器支配】。」
すると、左手にいつの間にか現れた蛇(今まで気づかなかった)あたりからナイトメアとブラッドウィスパーへ黒い靄が広がっていき、、それらを包み込んだ。
そしてその靄が晴れると、
(扱いやすくなっている…?)
そう、さっきよりもしっくりと馴染むのだ。
まるで本当の手足かのように…
「成功のようだな。まぁ細かいことは追々話すが、それは神達の餞別である。まぁ上手く使うといい…」
と、アモンがほっとした顔で言った。
神達…?
称号にあったあれだろうか…?
いや、それよりも種族だ!
なぜ魔族なんかに…
と思考を巡らせていると
「…終わったか?」
という声が聞こえた。
…首をゆっくりと回すとそこにはアイゼスさんが眼をきらきらさせて待機していた。
「さぁ!包み隠さず話してもらうぞ!夜は長いからな!」
結局スキルやら称号やらの説明をしていてその日は寝れなかった。おいしい展開なんざあるわけもなく、夜が明けてしまったのである。
…俺の異世界生活はいったいどうなってしまうんだろうか…
ぐだりました。
次こそ!次こそ冒険者ギルドを!
スキルの詳しい説明文は次話の最初にバーっと書きたいと思います。
本文中では扱いません。
最後にたくさんの評価、お気に入り本当にありがとうございます!
日間で普通に上位にいってたのでビビりました笑
これからもよろしくお願いします!




