31話 うふふ。これぞ私!不本意だけどね!?
「・・・ねぇレク君。何ていうか、呆気なさ過ぎるほどに簡単に侵入出来たのは怪し過ぎるけど、まぁそれは置いといて・・・何これ?」
アリサが呆然とした声で、尚且つはっきりと聞く。
そんなもの知るか。僕が聞きたい。
「いや〜・・・敵の本拠地なのに、ぼろぼろだな」
おいなんだその引き攣った笑みは。色々ごちゃ混ぜにし過ぎだ。楽で嬉しいのと、怪しくて警戒しているのと、驚きすぎて呆然(出来てないけど)しているのと・・・うん。きもい。
「・・・待って下さい。人の気配がしますわ」
「「「「!?」」」」
「あ、気のせいでしたかしら」
「「「「「っおい!」」」」」
流石の僕もつっこんじゃったよ。てか・・・あれ?今かっこの量が多く無かった?
「・・・君、誰」
わーどっかで見た事ある顔だー。確か・・・同じ学校だったよね?
「・・・同じクラスの、カナリーレ=ナイトレイ、です」
お、怒った?やだなー名前くらいちゃんと・・・。
「・・・本音は?」
「勿論覚えてなかったよ?」
あっはっはー。レイヴェア以外興味ないね。いや、まぁ、妹だからそういう意味ではレイヴェアも興味ない事になるんだけど。
てかやっぱ誰だ?
「・・・で?いきなり刀を突きつけるなんて・・・何か恨みでもあるの?主に王子さまに」
「え!?俺限定っ!?」
「別にルイスでもいいけど」
「俺初対面・・・じゃ、ないか・・・会った事あるな、うん」
「・・・うふふふー!ここは私が引き受けるわ!」
アリサが大声で宣言するけど・・・言いたかっただけって感じむんむんだね。すっごいドヤ顔だし。
「任せるよ(期待してないけど)」
「任せたぜ!(ま、せいぜい頑張んな、はん)」
「任せた(兎に角今はレイヴェアさんを!)」
「任せますわ(マクオンに会いたいですわね・・・)」
「良い笑顔でそんな事考えないでよ!?私の心配してる人まさかの0人・・・って、ちょっとおおぉぉぉ・・・」
アリサの絶叫はだんだんと小さくなってく。
当たり前だね。
全力でアリサに後を託して絶賛逃亡中とも言えるからね。
「・・・行かせない」
ざしゅ
質素な音の割には結構離れた鉄の扉を斬るこの威力。まじ恐す。
扉が犠牲になってくれてよかった。あと、アリサも。
斬撃を放つ前のナイトレイの邪魔をしてくれた。あんがとー。んじゃ、幸運を祈るー。
「さて、行きますか」
「ん?ああ」
「なぁレクヴィオ。そろそろ俺とレイヴェアの仲を許してく——」
「誰が許すかへたれ1号」
「見てて下さいましマクオン!きっと私がレイヴェアさんをお助けしますわ」
「少しは私の心配もしろぉぉぉぉ!」
アリサは余裕のようだからほうっておこう。
「・・・邪魔、そこ、どいて」
レクヴィオ君達が先に進んで静かになってしまった。さっきまで叫んでいたから無性に恥ずかしいんだけど。
「悪いけど私ってばここ・・・任されちゃったしぃぃ!?引けないのよ!」
「誰も心配、してくれなかった、八つ当たりは、虚しいだけ」
「うる、さいわ!!」
ぼぼぼぼぅぅ!
私の怒り(と言う名の羞恥心)に反応して体中から炎が溢れ出す。
「・・・っ」
大きく、大きくなぁれ、じゃなくて!こほん。大きくなった炎は自然と鳥の形に変化していく。私を守る様に。
火の鳥が大きく羽を広げ——鳴いた。
『ピィィィィィィィィィィィィィィ!!!』
「っな!?」
びりびりとした空気が辺りを支配する。
スカーレット家には代々伝えられるとても特殊な魔法が存在する。
それは次期当主の器を持つものだけに授けられるもの。
まぁ、今はそんなことどうでもいい。
今言いたいのはそんなことじゃないから。
この魔法は強力な炎の魔法。そんなものがただで使える訳も無く・・・その代償は——
「えへ・・・えへへへへへへ♪ さぁさぁおいでおいで♪私がたぁっぷり・・・殺してあげるよぉ?」
性格の異常な変化。
暴虐が好きになってしまうというわけだ。
ああ・・・恥ずかしい。
「さぁ・・・殺し合いを始めましょう♪」
「・・・なんか嫌な微笑みが見えるんだけど」
「呪われたんじゃないのか」
「だろうな。レクヴィオは男のほとんどに恨まれているだろう」
「あれ、アリサじゃないの?」
「アリサの場合、女の怖さだろう?」
「ちょっと違う様な・・・」




