30話 苦労人は絶え間なく存在するんだと。
「——さて、絶好の闇討ち日和になったね」
「言い方が!もう少しましな言い方に出来ないのかレクヴィオ!まるで俺達が悪役みたいじゃないか!」
全く・・・これだから王族は。だから嫌いだよクレイト様。てか全部無理。
「・・・まぁ、お前が何を考えているかは置いておくとしよう。所で・・・ほんとにあいつは来ないのか?」
あいつ・・・ああ、(確か)ソラだっけ。気になるのは分からなくも無い。だってあんだけレイヴェアラブなやつがレイを助けるのを辞退したんだから。
「来ないんじゃない?なんかすっごくどうでも良いこと言ってたし」
「え〜。ソラ来ないのか〜。昨日は部屋に帰ってないみたいだし・・・」
アリサが残念そうにぼやく。
どうせあいつの事だから、かっこ良さそうな言葉残して野垂れ死んでるんじゃないかな。わお。思ったよりお似合いだね。
「んで?俺らだけで行くのか?無理じゃね?」
「ああ・・・マクオン。一体どちらに行ったのでしょう?」
早速雰囲気をぶち壊すのは止めてホシイナー。
でもルイスとユリシアの言いたい事は分かるよ。だっておかしいもんね。
急に皆の従者と連絡が取れなくなっちゃったんだから。
ティナノール家と王族との関係が強いっていうのもなんかきな臭いし。
「・・・クレイト様?王とティナノール家の関係って知ってる?」
「父上との?・・・昔からの付き合いで仲が良いとしか・・・」
やっぱりきな臭い。なんでただの名家のティナノール家と王が仲がいいんだよ。今まで大して気にもしなかったけど。
てか僕達の周りは胡散臭い人ばっかだし、雰囲気に呑まれちゃってたのかな?メシスさんとかメシスさんとかメシスさんとか。後兄様も何気に胡散臭いし。
「・・・ま、いっか。 夜明けも近いね。んじゃ皆——」
クレイト様、ルイス、アリサ、ユリシア、僕、が無言で向き合う。
「——行くよ」
誰かさんの大きな掌の上に・・・ね——。
「——動いたようです」
動き出した子供達を見ながら彼が呟いた。
「ふむ、やっとか」
威厳のありそうな風体で大柄な影を笑みを浮かべた。
「・・・どうするのですか。私達も彼らと共に・・・」
「いや、待機だ」
メイド服を揺らす女性がその言葉に複雑そうな表情を浮かべて引き下がる。
その後も何人かの影が話をするが私の耳には届かない。多分だが、誰かが魔法で聞こえないようにしているのだろう。
それこそ先ほどの彼のような大物が、だろうな。
いや、彼を大物と称するには周りの者達が特殊過ぎる。
「あらぁー。どうかしたのかしら?眉を顰めちゃって」
「え?いえ、あの・・・」
「はっはっは!彼女の心配でもしているのかい?大丈夫だろうさ。なんたって自慢の我が息子が傍にいるのだからな!」
・・・本当なら彼女を守るのは私の役目なんですけど?今すぐにでも彼女の元へ行きたいという私の願いを無惨に無くしてくれちゃった貴方に笑われるとこの世を呪いたくなる。
「・・・はぁ・・・分かってますよ。私は見守るように頑張りますよ。ティナノール公爵様」
私の溜め息に影が——ティナノール=ルハイト様とティナノール=ウリューネ様が笑みを深める。綺麗だけどイラッっときた。
「ふふふ。何度も言っているでしょう?ウリューネと呼んでもいいわよって」
「ご遠慮しま——させて下さい。私はただ生きのいい騎士でしかありませんから」
貴方の旦那の目が本気なんだよ。力量的にも権利的にも勝てないのは確実だから許してくれ。
ああ・・・ユリシア様。
貴方の傍に居れない事をお許しください。
「意外と彼女、レクにべったりだったりして♪」
「・・・殺しますよ?」
・・・あれ?口に出ちゃった?
レクも苦労人。。。
胡散臭い執事に、超絶に怖いメイド。で、裏で何を考えているか分からない父と兄。笑顔で醒めた目をすることもある母。
その他ぞろぞろ(役立たず王子やら、変な変態犬やら、何気に立場が凄い人達やら・・・)
最後に、色々フラグたてまくってむちゃくちゃな妹。
大変ですね〜。




