29話 さぁ!私の首の為に戦いなさい! 知るかっ。
「・・・おお?これはこれは・・・」
目の前に広がるのは一言で表すと『宝の山』だ。
俺は呆然と——涎が垂れる。ぐえっへっへ。
「——能力発動♪《異次元トリップ》♪俺の作った異次元へ〜」
俺の作った異次元——そのまんま。俺が作った違う世界に宝の山をトリップさせていく。
『な、なんちゅー能力の無駄遣い。しかも豚に真珠過ぎるぜこの山は。こんな・・・どう見ても神になれなさそうなこいつには』
・・・どこから言い訳したらいいんだろう?全部肯定しか出来ないぜ☆
「にしてもラッキーだったぜ♪まっさかレイヴェアさんを探す(迷子ってた)途中にこんなとこ見つけられるとは!これも日頃の行いがいいおかげか!?ああ神よ!」
『普通に運が良かっただけだろ?後半はぜってーありえねぇし』
後半・・・お前!天使のくせに神がいないと言いたいのか!?
『日頃の行いが悪いって言ってんだよ!?』
「なにおぉ!?どこが悪いっていうんだよ!」
『全部だよっ!?』
「俺はただレイヴェアさんを遠くから見つめていたり(ストーカー)、レイヴェアさんの物を(無断で)借りたり(というなの盗み)、レクヴィオ様と戯れたり(理不尽な暴力での会話)、レイヴェアさんの足で踏まれ——」
『長ぇ!しかもどう聞いても良いとは言いがたいどころか、悪すぎじゃねーか!?大丈夫かお前の頭!この変態、ど変態!』
「おいおい・・・それは言い過ぎだろ?もう少し考えてやれよ」
『まさかの他人事!?』
ま、そっからぎゃーぎゃー言い合ってたわけよ。
きちんと宝の場所移動(盗み)は進行しながら。
『・・・ねぇ。もう少し静かにしてくれないかしら?』
「お?おお悪いな——って、誰だよ!?」
まさか奴らの仲間か!?別に見られても困る事ないけど(おおあり)・・・敵だしな。
『んぁ?おめーイオフィエル・・・イオちゃんじゃねーか』
イオちゃん?それって確かレイヴェアさんの・・・。
『誰がイオちゃんよ!ったくどいつもこいつも失礼すぎるわ』
ぶつぶつ呟く魔法の杖。なんかシュール。
『まぁ、丁度いいわ。私をレイのとこに連れてってくれるかしら』
「いいぞー。だが断る』
『・・・言いたかったのね。気持ちも分からなくはないけどね。言うタイミングを考えなさいよ?』
おう・・・軽い冗談のつもりだったのにイオちゃんの殺気半端ない。怖いよこの人、てか杖。杖に怯える俺。おお。なんか新しい世界が始まりそうだ。始まられたら困るけどさ。
『兎に角!一刻もはやく私をレイの元へ連れてって!急がないと・・・なんかやばいから』
「なんかって何だよ!?」
『一々煩い男ね!だからレイに振り向いてもらえn——どっちにしろ無理ね。悪かったわ』
「さり気ない優しさにもなってないその言葉が!」
どっがぁぁぁぁぁぁぁ!!
『「!?」』
壁が粉砕した。ぅわう。木っ端みじんだよ!鉄なのに。
『・・・嫌な予感ってのは意外とあたるものなのね。いいソラ?よく聞きなさい』
相手はもうもうとした煙で見えないが、何となく予感がした。俺はイオちゃんの言葉に耳を傾ける。実際は首を傾けたんだけど。
『レイの能力には封印がなされているの。危険過ぎるからね。その封印はある条件をクリアすれば一時的に一部だけが解かれる様になってるのよ。その封印を解くときを判断するのは私の役目なの。だから、私はレイの手元にいなければならない。さもないと——』
ごくり、と唾を飲み込む。
『——私の首が飛ぶわ』
「知るか!」
『・・・暇』
『そだね〜。てかイオちゃんだけずるいよ〜。出番あってさ〜』
『うん。レイはソラに主人公乗っ取られたし・・・』
『まぁ、あんなストーカーくんが主人公だと終わりだけどね〜☆』
『ほんと。それにしても・・・』
『『キャラ変わったねソラ君』〜』
ただ、しみじみと囁かれた会話。




