25話 僕が、どれだけ頑張ったか・・・。くぅ。
あれから何日経ったか。推定2日。たったの一昨日じゃねーか。
あの日からレイヴェア——嬢ちゃんは訓練場に来ていない。
それどころかNo.5とNo.2までも来なくなった。
「はーあー」
「お?No.12どうしたよ。まさかレイヴェアちゃんが来なくて柄にもなく寂しいとか?」
「そんなんじゃねーよ14番。暇なんだ」
「レイヴェアちゃんが来ないからじゃねえのか?」
「・・・」
そうとも言える、な。言い返せねぇ。
「ま、レイヴェアちゃんを気に入ってんのはお前だけじゃねぇんだ。にしても・・・ほんと何者だったんだろうなあいつ」
レイヴェアが何者なのか。
ただの客人にしては強すぎるし異常だ。
しかもリーダーが甚く気に入っているときた。
ん?もしかして・・・
「・・・数日後のあの作戦の人質か・・・?」
それなら此処にいる理由も、護衛という名のいかにもな監視が居るのにも納得がいく。
「おいおい・・・それはねぇだろ。あんな異常な奴が人質として成り立つ筈がねぇよ」
「全くだ」
14番のため息まじりの声に即答で同意。
実際は当たってたりするが、生憎、ここには答えられる奴が居なかった。
「ま、レイヴェアは良い奴でもある。仲間になってくれりゃあ歓迎しようぜ♪」
「は、何を当たり前な事を。むしろ鎖に繋いででも仲間にしてやろうじゃないか!」
多分此処に本人が居たなら、きっとこう言う。
「既に鎖で繋がれてますけど?」
居ないから言えないけどね。居たとしても・・・今のレイには言うどころか彼らを識別する事すら不可能だろう。
「奴らの隠れ場所は今まで誰にも見つける事が不可能だったそうだね。ねぇ王子?奴らの捜索に専念していた愚かども、至急人員の変更を要望するよ♪一度死にやがれ、とでも伝えといて♪」
にっこにこと語るレクヴィオに俺は冷や汗を垂らす事しか出来ないでいたりする。
きっと今の俺は王族としての輝きも威厳の粉微塵だろう。
それほどまでに俺は目の前のレクヴィオに怯えていた。
後ろにいるソラに至っては泡を吹き出し始めていて——汚いなこいつ。
「あ、ああ・・・し、死刑だけは勘弁してくれよ?あいつらに居なくなられると使用人に苦労するんだ」
「僕はそんな事知らないよ?自業自得、って奴でしょーこれは、あは♪てかそんな無能共。居られる方が苦労するんじゃない?だってまともな仕事出来てないくせに給料だけはきっちりと頂いて、しかもビップ対応。あり得ないよね?国の金まで使って捜索していた奴らのアジトが、この国の地下にある事に気付けないなんてさぁ!?」
軽く怒気を含みながらも笑顔で叫ぶレクに俺も同意せざるを得なかった。
でもここでうんうんと頷くと捜査員達の安否が一気に保証出来なくなってしまうだろうから自重した。
「ま、まぁ早めに見つけられたんだ。いいじゃないか」
「・・・僕がどれだけ頑張ったか分かって言ってるの?近くにいた精霊さん達に膨大な魔力を使って呼びかけて一部には土下座する羽目にもなったんだよ?それでも足りないだろうと思って遠くの方からも精霊さん達に呼びかけていたって言うのに・・・数分後には『・・・レイ、ヴェア・・・地下。ここ。下』って言われたんだよ?でもやる気を出しちゃってた精霊さん達だから、一暴れしようとしてそれを止めるのにも膨大な魔力と精神力を使った僕の頑張り具合、分かってくれるのかな?」
「誠に申し訳ありませんでした」
まさかレクヴィオが、俺の気付かぬうち(レクヴィオに任された雑用をやっている間)にそんな唯事じゃない事をしていたとは・・・。
てかレクヴィオ君?
それ、もう少しで協力に来た筈の精霊によって国が滅ぼされてたと思うんだけど?
『が、がんばる! がんばる、よ!』
「え、ちょ、待って——」
『あっち、探す』
『向こう、行く』
『あの人怪しいよ』
『この家、邪魔。どける』
『むぅ・・・ここあやしい。掘ろう』
『国、掘る』
『裏返す』
「いや駄目だから! ねぇ話聞いてよ! ちょっと!?
精霊さぁん・・・ああああぁぁぁ! 掘っちゃ駄目だからぁぁ!!
どこにも行かないでぇえぇえぇ」
裏で響いたレクの悲鳴・・・。




