20話 う、裏切られたぁ。友達でもない知り合いに、かなぁ?
『なんていうか、すずみたいですね。たたかいのときにだけみせるりんとしたクールさが』
遠い遠い昔、そんな事を言った人が居た。
『じゃ、これあげる。あなたにぴったり♪』
そう喜んでいたのは誰だったのか。
でも、その人がくれた鈴が私の支えになったのは確かだ。
『――そういえばなまえはなんていうんです?ぼくは――』
・・・思い出せない。あの人は何ていったのか――。
「・・・お?起きましたかカナリアさん。僕は既に完全燃焼で燃え尽きた所ですよ」
「・・・」
レイヴェアがお菓子をぽりぽりと齧りながら言う。
あー・・・また戦ってたんだっけ?相変わらず№12に、未だに勝てない様だ。
服がびりびりなのがいい証拠。
傷はもう治されたんだろうけど。
「・・・私、寝てた、ですか」
「それはもうぐっすりと。監視役が聞いて呆れる・・・って№12さんがイッテマシタ」
皮肉を込めているのか?別に監視なんて私が頑張る事でもない。
リーダーは面白がってやらせているだけだ。
後、さり気無く№12に罪を着せてやるな。
「・・・さっさと、帰る、です」
「はぁいー。了解しましたぁー」
学園では美しいと噂のレイヴェア(実際に美しい訳だが)。今のレイヴェアは美しいというより可愛いの方があっていると思う。私は何とも思わなかったが。というより、むしろイラっときた。私も女子の端くれとして当然な思いだと思う。
「・・・精霊さん。精霊さん。起きてますかー?さっさとその寝ぼけた頭を回転させてくださーい」
僕は訓練(?)の後、部屋で空中に話しかけています。
べ、別に可哀想な子って訳じゃありませんよ!?
さ、寂しいとかじゃないんだからね!
・・・ふぅ。
『・・・レイ、ヴェア。神、の、愛し子?』
お、来ましたか。・・・僕の妄想のお友達、とかではありません。正真正銘の精霊です。はい。
「貴方がこの辺りの精霊さんですか?」
『・・・精霊、僕。うん』
「僕の半身、レクヴィオに伝言をお願いしたいのですが・・・」
『・・・・・・いい、よ』
・・・間が気になりますね。
「では・・・「僕の方は心配ありません。それで、組織っぽい人達の――」・・・っ!」
伝言は途中で終わらせます。
聞かれているようですので。
「・・・精霊さん。貴方、契約してますね?」
『・・・』
精霊さんが音もなく消えます(そもそも見えませんし、音も分かるわけありませんが)。
僕とした事が・・・思わぬ失敗をしたようです。
「・・・くそ」
『僕の方は心配ありません。それで、組織っぽい人達の――っ!』
標的、レイヴェア=ティナノールが息を詰まらせる。
おお?ばれたか?いや・・・流石に《神の愛し子》と呼ばれるそいつでも、俺が聞いている事に気付く筈は――
『・・・精霊さん。貴方、契約してますね?』
「・・・」
意外と凄いんだなレイヴェア=ティナノール。
精霊は最も自分と相性のいい奴と契約する。
精霊と契約主は言ってしまえば一心同体。精霊の聞いた事は全て俺に筒抜け、と。
まさか気付かれるとは・・・
「くすくす・・・君の精霊がどうかしたの?」
リーダーが無邪気に微笑む。
俺が標的に精霊を送っている事を知っているくせに・・・。
「ふ、べっつにー?でもよぉ、あいつ、泳がせてていいのか?」
分かりやすくはぐらかしながらも気になっていた事を聞く。
「んー?いいよー♪どうせレイヴェアには何も出来ないんだからー♪」
「・・・あ、そう」
聞く気も無くなるなこいつ。何時もこうやってはぐらかすし・・・正直疲れる。単細胞戦闘馬鹿と呼ばれる俺でさえも疲れる奴だぜ?絶対こいつは頭がおかs――
「ふふふ♪一戦交えるなんていう君の意向に外れるように殺してあげようか?」
・・・くそう。俺を戦わせない気かぁ!?そんなの地獄だぁ!
「ま、君はまだ出番じゃないんだから出しゃばらないでよ。用は無いよ№3?」
「けっ!毎度毎度遠回りに言いやがって。何時か泡吹かせてやんぜぇ!?」
「負け役のセリフだね♪だから君は嫌いじゃないよ♪」
「・・・一戦やらn――」
「やらないよー♪」
・・・ふ、まぁいいさ!
俺にはこの後には出番があるんだ!
それに・・・未だ実態の掴めない強さを持つレイヴェア=ティナノールも居る事だしな。
『レイ、レイ・・・ご、ごめん、なさい』
「・・・ふぅん? まさか契約してる精霊に気を使わせるとはな。流石ティナノール家の『神の愛し子』だぜぃ♪
・・・ちょ、おま、裏切るなよ?」
『・・・うん』
「え、何。急に風が吹いて・・・おいぃぃ!?」
『・・・せめての罪滅ぼし。えへへ〜♪』
「絶対楽しんでんだろおまえぇぇぇぇぇ!!」




