19話 まぁ、わたくしもがんばりますわ。ええきっと。
レイヴェアさんがここ数日、学園に来ていませんわ。
遂にお亡くなりになられたのでしょうか・・・。そんなわけありませんわね。
「ソラーテ先生。レイヴェアさんはどうしたのですの?」
「・・・さあ、分からないですね。何かに巻き込まれていなければいいのですが・・・それにカナレートリア=ナイトレイと妹のカナリーレも・・・」
レイヴェアさんの休みは公認では無いようです。
・・・折角、友達となれましたのに・・・。
それにしてもナイトレイ様達もでしたか。何か関係があるのでしょうか?
「ユリシア様?少し宜しくて?」
ええと・・・確かミラテ家の御令嬢様でしたかしら。後ろにも令嬢方が数人。
ミラテ様はレイヴェアさんを叩き潰そうと目論んでいたちっぽけな組織の副リーダー。勿論リーダーは私でしたが。
「貴方、私達を裏切るつもりですの?」
そもそもあの変な組織は勝手に出来ていたものですから、裏切る以前に組んだ覚えもありませんわ。貴方がたがいつの間にか居たのですのよ?
だって私は、ただ、レイヴェアさんと仲良くなりたかっただけですもの。
裏切り呼ばわりは失礼ですわ。
「裏切った覚えはありませんわ。私はただ、元々の目的を果たしただけですもの」
「な、何を言うのです!貴方がそちら側に付いたのは立派な裏切りでしょう!?」
「ですから私は――」
ミラテ様が私の言葉を遮る様に手を振りかざしますわ。
「裏切り者には粛清を!【神の力よ・・・この者に無慈悲な――】」
がしっ
誰かが後ろからミラテ様の手を掴みます。
「な!?一体どこの――」
「邪魔」
「!! レクヴィオ様!?」
レクヴィオ様ではありませんか。私はレイヴェアさんの方が友達として好感が持てますのであまり興味はありませんでしたが・・・相変わらず綺麗な方ですね。少し不機嫌そうなのが更にその美を表しますわ。
あ、そうですわ。
「レクヴィオ様。レイヴェアさんは今何処にいらっしゃるか御存じですの?」
ぴくり
・・・何故ですの?この途轍もない悪寒、と言いますか殺気と言いますか・・・。
体が恐怖で震えますわ?
「ええと・・・兎に角あちらでお話しを・・・」
私、レイヴェアさんのおかげで恐怖に耐性でも付いてきたのでしょうか。
よく話をすることが出来たと、自分ながらに好感が持てますわ。
「・・・はぁ?」
思わず素っ頓狂な声が出ましたが、私のではないと信じたいですわね。
「・・・だから、攫われた。どっかのバカな権力だけが取り柄の天然の人質として」
ああ、クレイト王子様の事ですわね。
・・・・って――
「は、早く助けに行かなければなりませんわ!わ、わた、私が――」
「・・・レイを助けるのは僕だ」
先ず「落ち着け」と言っていただきたかったのですがね。
レイヴェアさん至上主義のこの方には淡い期待でしょうね。私もでしょうが。
「僕と、クレイト様(チッ!)とソラ(何であいつが!)でレイを救出する予定だよ。王族は、その組織の事が表向きになられると困るからって軍は動かさない(役立たずめ。囮としての価値も癖に)し。大体の情報は集まっているよ(ほんっと王族無能)。今日学園に来たのは、奴らの仲間の1人が居るかも知れないと思ってね(見つけたら磔にして地獄ってやつの一片を見せてやろうと思ったのに)」
「・・・納得しましたわ」
途中で聞こえたのは空耳ですわね。空耳、ですのよね?・・・空耳であって欲しいですわ。
「レクヴィオ様。私も参りますわ」
「いいよ」
・・・そこは少しでも止めていただきたかったですわ。ええ、分かってますわ。私はレイヴェアさんを助ける為の囮ぐらいには使えるだろうと言う貴方の企みはっ!
「えーと、んじゃ私も行っていいー?」
「あ、俺も俺もー」
・・・何処から湧いて出てきましたのかしら。草むらから出てきたのですから、私の表現の仕方に間違いは無い筈ですわ。
アリサに・・・ルイス(?)。
「・・・いいよ。ま、囮くらいには役に立ってね?あ、後・・・死んでも僕とレイは恨まないでね。せめてクレイト様を恨んでよ」
何処まで行ってもレイヴェア至上主義ですわねこの方は。
ですが、いいですわ。
レイヴェアさんを助けるのはこの、友であり、レイヴェアさんの——である私ですもの。
「・・・(一体何を企んでいるのやら。まぁ、あまり関わらない方がよさそうですね、これは)」
「これこれソラーテ。それは先生として良いとは思えんぞ」
「っ! 学園長・・・」
「まぁ、今のあやつらには近づきたく無いのは同意じゃな」
「そうでしょう!」




