15話 夜道には気をつけて。後ろから刺されますよ〜。
がっさがっさ
ばさぁ
ぺらぺら
資料を漁っては落とし、必要なものだけを残す。
その作業を1人でやっている理由は?
正解・・・残りの2人が邪魔だから。
「な、なぁレクヴィオ様?何か手伝おうか?」
「うん。じゃあ黙っててくれる?」
「・・・お、俺も何か手伝いを・・・」
「窓拭きをお願い。ほら・・・綺麗な空が見えなくてやる気になれなくてさ」
「「・・・」」
やっと静かになったか。てか、わざわざやってほしい事を言ったのにやってくれないのかクレイト様は。
ったく・・・クレイト様が手伝うって言ったから手伝ってもらおうとしたのにさ。
しゅた
「・・・では、私が手伝いましょう」
「君って・・・クレイト様の従者?」
「・・・はい。カルロットです」
「そ。んじゃそっちの資料を纏めといて」
「・・・了解しました」
ん?あの2人が苦々しい顔をしている。何か体に悪い物でも食べたのかな?ああ・・・苦虫って奴?
「・・・はぁ・・・そういえばお前とレイヴェアの従者はどうした?あの2人は優秀なんだろ?」
「ネルメさんとメシスさんはちょっと・・・家でのごたごたで帰ってるよ。まぁ・・・その内に帰ってくると思うけど」
優秀過ぎるから、そのごたごたは既に片づけてそうだけどね。
なのに未だ帰ってこないのは・・・足止めでもされてるのかな?
「・・・さて、そろそろいいか。クレイト様?今から僕の調べた事を話すよ。合ってるかどうかは後で言ってね」
「王族――ランル家には大昔から言い伝えられている家宝があるんだ。それって凄いらしくてね~。僕が欲しがるくらいに」
君の欲しがりなんてどうでもいいんですけど?
そもそも何が凄いのか全然分かりません。
「でもね?それってさーなんかすっごい結界に守られているらしいんだよ~」
「触れるとどうなるんですか?」
「ふむ・・・そこに着目するんだ・・・。えっとね~・・・存在が消し飛びかけるよ?」
何故に疑問形。しかも嫌に具体的。
どうせ実際に触れさせたんでしょうねきっと。
「その結界を解くには《鍵》が必要なんだよねー」
鍵=クレイト様。っていう方程式でいいんでしょうか。未来の王が随分と過小評価されてますね。実際それで合ってるので何とも言えませんが。ごめんなさいクレイト様。僕には貴方をフォローする資格が皆無の様です。
「で、《鍵》を自分から封印を解かすようにするには人質が1番ってわけ」
「へぇ・・・そういえば好きな人って居ます?」
「・・・脈拍の無さが凄いね。んー・・・今は居ない、かな?あ、でも出来そうだよ♪」
「ふむ。一体何処の誰でしょうね。その幸福そうに見えて不幸になりそうな哀れな女性は。あ、別に貴方がどうこうという訳ではありませんよ?物の例えです」
「君ってよく敵の僕に堂々とそんな事言えるねー。惚れそう♪」
「遠慮はしません。全力でお断りします。僕はそんな微妙に不幸な哀れな女性にはなりたくありませんから」
「酷ー。あ、分かっては居るんでしょ?あのヘタレ王子様の想い人が誰か、ってさ」
「《ヘタレ王子》というあだ名には同意見ですね。貴方と共通点があったことに少なからず驚きです」
「ま、つまり・・・王子の溺愛を受けている君は王子のせいで捕らえられたって事さ♪ 所で・・・君はクレイトに何か言いたい事はある?なんなら僕が伝えてあげるよ♪」
エアレズさんとの恋愛話はもう終わりの様です。折角想い人を聞き出そうとしましたのに・・・。
クレイト様に言いたい事・・・エアレズさんはこれが聞きたくて真相を話したんですね。
ですが僕の感情を揺さぶりたいのならクレイト様では選択ミスです。
「言うことなんてありませんよ」
「え~それじゃ詰まんない~」
「くすくす・・・敢えて言うなら・・・貴方に、ですかね」
「へぇ?何?」
にこ
「僕だけでなく、僕の兄にもお気を付けて」
実際、この話を聞いて感情が地震ほどに揺れるのはレクでしょうから?
「・・・流石ですレクヴィオ様」
「君もなかなかな従者だね。苦労するんじゃない?主があれだと」
「そ、それは・・・まぁそうですが」
「否定しろよカルロット!」
「良い所は、ありますよ! 泣かせてしまったお嬢様を優しく宥められたり、小さな娘さんにお菓子をあげたり、修羅場を効率よくおさめたり、母君のお心をお癒しになられたり・・・」
「なるほど。女たらしだったんだねクレイト王子」
「そこに着目するのかっ!?」




