12話 お休みの時間のようです。僕の。
しゃらん
私の剣に付けられた鈴が鳴る。
・・・誰だっただろうか。
私の雰囲気が鈴に似ていると言ったのは・・・。
「・・・」
向こうの方から影が現れる。
びゅおぉぉぉ
まさに決闘には相応しい風が音を立てて鳴る。
さぁ・・・闘いの、始まりだ。
・・・うん。何が「さぁ・・・闘いの始まりだ」だ。
何故か呼び出されたから来てみれば・・・。
「・・・ええと・・・カナレートリア=ナイトレイさん、ですよね?・・・何故に決闘なのですか?」
あの大人しくて静かで影が薄くて、なのにさり気無く学園のトップに入る実力の持ち主。
何か印象があるとすれば、編入してきた時に3番目に質問してきた人。くらいしか無いですね。
「・・・私、貴方に勝つ、です。それが、使命、です」
ふむ。話が噛み合って無さそうで筋が通ってますね。
理解せざるを得ません。
「残念ながら、僕には戦う理由がありません。それに、貴方とは(面倒くさいので)闘いたくありません」
「・・・逃がさない、です。【発動・・・空間を外させたまえ・・・結界】・・・」
しゃらぁぁぁぁぁん
鈴も鳴っていないのに音が鳴り響きます。
世界が変わった様な感じがするので、結界が張られたのだと理解します。
しかも・・・回路の複雑な嫌なタイプです。
「・・・覚悟」
しゃらん!
これはまた綺麗な音を立てて剣と一緒につっこんできます。
「【火】」
喰らえファイヤーボール!みたいなノリで魔法を使ってみましたが・・・
ざしゅぅ
おお、切られた。いや、斬られた? 前にもこんな事、思った様な気がします。
「【火、水、土、風、雷究極合体ぃー】!」
ざしゅ!ぼしゅうぅぅ!
「・・・魔法は、効かない、です」
わざわざ言われなくとも、今思い知ったって。
全部見向きもせずに打ち落としましたものねぇ!
魔法が使えないと納得したのか、標的は戦い方を変えた。
自分の肉体を使った接近戦に。
こっちは剣を持っているのに・・・まさか気付いてない?
いや、気付いてはいるよね。ただ・・・理解できない馬鹿なのかな。
ががが・・・きぃん!
殴りだけで剣を弾くのは普通は出来ない。出来たら剣士はこの世に要らない。
なのに実現して見せるなんて・・・流石学園のトップ中のトップ。私が言えないけど、化け物だよね。
がっ どっ! がきぃいん!
殴られた所からは血が溢れる。
彼女も斬られた所から血を迸らせる。
「ふ、ふふ・・・意外と、強かったんですね」
どう見ても押しているのは私なのに、何故笑っていられるのかな。
私だって、双子の戦いは見ている。
笑いながら戦う2人。そういえば腕を折られても笑ってたっけ。
どがが! ぎしゃぁ!!
何時までも続くと思われた戦いというものは唐突に終わりを告げるもの。
そして、その時が来た。
「・・・っ・・・ごほっ!?」
血を吐きだす標的に構わず鳩尾に蹴りを入れる。
「っ! が、はぁ!!」
ご、きぃ!
「っああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
腕を折られても笑っていられるような奴だ。容赦なく腕を折って何が悪い。
「つっ・・・くっそ・・・僕の負け、かな・・・」
そう呟く標的に最大の魔法を掛ける。一番得意な魔法、眠りの魔法を。
「・・・【この者に眠りを・・・強き眠りを与えよ・・・睡眠】」
標的は最後まで抗っていたが時期に弱くなっていった。
元々体が弱かったレイヴェア=ティナノール。
その彼女が長い間ずっと接近戦をしていたんだ。
そんな弱った体で此処まで出来たのは純粋に凄いと思う。
でも何故だろう?
彼女は本気を出している様には見えなかった。
それに・・・
「・・・この嫌な感じ・・・何」
最後に見た彼女が薄く笑っていたのは、多分気のせいじゃない。
それだと別の意味で怖いね。
ぐっすり眠っている筈なのに・・・。
あー眠いですね。すっごく眠いです。
え、これカナレートリアさんの魔法?
へぇ〜こんな使い方も出来るんですねー。
・・・寝ている間にあんなことやこんなことをしようとする気ですね!
それは頑固として眠れませんね!!
とか思ってたり思ってなかったり・・・。




