8話 や、止めて!その生温かい目は!
「しずかですね~レク?」
「うん。しずかだねレイ」
そして訪れる沈黙。
さして気にはしないが。
「「・・・で?いつまでついてくるきですか?クレイトおうじさま?」」
全く同時に発せられた言葉は後ろに隠れていたクレイト王子様に届く。
「・・・っ」
さっきまで顔を真っ赤にしていた純粋な王子君は何処へ行ったのやら・・・
険しく、睨むように僕達を――レクを見る。
「お、れは王子だぞ! さからうのかおまえ!」
たどたどしくも頑張っていったであろう言葉に思わず苦笑する。
勿論2人揃って。
先に声を発したのはレク。
「クレイトおうじ。おまえ、レイがすきなんだろ」
「っ///」
おー可愛えーなー。
威厳もくそもないな。
そして僕も口を開く。
「でもぼくたちはあなたのおもいよりも――」
「つよいきずなでむすばれている――」
「それに」
「えらそうなやつはきらい」
「だからあなたは」
「レイはあきらめてよ」
「そしてさいごに・・・」
止まることなく流れる様に話した僕達を王子様は呆気として見つめる。
「「バイバイ」」
くすくすくす
僕達はにっこりと微笑む合いながら屋敷に戻った。
少しして――
「っレイ・・・さん!」
王子様が家に押しかけてきました。
レクが睨むように王子を見ている。
おお、怖い怖い。
今のレクは動物を平気でミンチにしてしまうほどの状態ですから。
王子・・・変な事言ったらミンチになっちゃいますよ?
「――もっとおっきくなったらむかえにくるから!!」
む? つまりは告白ですか?
せめて自分の思いを伝えてから言って下さい、そういう言葉は。
「おことわりs――」
「レイはわたさない!」
どこの修羅場の言葉ですかそれは。てか、僕の返事を遮らないで下さいよ。
「おれだって!」
屋敷と言っても入口で繰り広げられる修羅場(?)
庭に居る人たちもこの会話は筒抜けで――
「おお、王子が求婚なされておられる!」
「くすくす。小さな子達の修羅場ね」
「レイちゃんは返事、どうするんだ?」
微笑ましく見守らないで下さい。
そして、僕は被害者です。助けて下さい。
ヘルプミー。
救済というのは思わぬところから、思わぬ形で出てくるもの。
それをこれから実感することになりました。
「ディオネス様っ!!」
ざわり
皆さんの意識が一瞬で移り変わります。
庭の中心、そこに居るのはディオネス兄様と綺麗な女の人。
「私と・・・結婚をっ――!!」
「丁重にお断りします」
「「「「へ?」」」」
ティナノール家意外の人達が間抜けな声を出しました。
僕達はうんうんと頷いて「当たり前だな」と物語ります。
「な・・・何故ですか?」
「面倒くさいので」
わぉ。曇り1つない爽やかで清々しい笑顔。
おかげで微妙な空気になりましたよ兄様?
この日、2つの求婚は即答で断られ、どちらも諦めなかったという話が1つの武勇伝として残りましたとさ。嘘だけど。残ったのはそういう面白話だけ。
どちらも諦めなかったというのは本当だけどね(笑)
レクとクレイトの戦いが今始まった・・・みたいな感じですかね(笑)




