8話 勿論最初から分かってましたよ。
今、彼は「迎えに来た」と言いましたね。さて、何処かでそんな話を聞いたような気がします。
そもそもこの人を見た覚えはなくはありません。
「・・・誰ですか?」
手を握るイケメンさんの顔が僅かに歪みました。
「お、まえ・・・また美しく・・・」
あれ?僕の質問は何処へ行った?
ていうか「また」という事は会った事があるのは確実という訳ですね。記憶にございません。またの御利用を――
「王子様!」
「ああ・・・私の騎士様ぁ」
「ま、またレイヴェアさんなの・・・?」
「な、なんで・・・」
・・・王子様?
え、それってまさか・・・
「・・・クレイト、王子様?」
あのヘタレ様ですか?あの誕生日パーティーに居た?
・・・当たった様です。クレイト様の笑顔が凄く印象的になってきました。
「覚えててくれたかレイヴェア!じゃああの約束も――」
「貴方と約束なんてしてませんよ?」
そんな「何故!?」みたいな顔しないでください。
「む、迎えに行くと――」
「あんたが勝手に擦りつけたんだろーがこのヘタレ王子様?」
おお、レクの口調がヤンキー化しました。笑顔ですけど。
「・・・レクヴィオか・・・」
「何ですか王子様?まさか本当にレイが貴方を待っていたとでも?誤解もそこまで行くと哀れでなりませんね。まぁ、子供の時から態度がでかくて図々しい哀れな王族でし・・・。それに、あの時レイはきっちりとお断りしていたはずですよ?都合よくその時の記憶がないとかほざきませんよね?立派な王族の1人として愚民の意見をあしらう訳ありませんよね?」
れ、レクが笑顔で怒っている・・・。
しかも周りの人達はレクの言葉にか、それとも王族に対する態度にか、唖然としています。
実際は僕が求婚されていた事に驚いていたようですけど。
まさかの驚きの事実。
レイが王子に求婚されていた。しかも子供の時に。
ついでにレクヴィオ君の王子嫌いの理由もはっきりと分かっちゃったよ。
なるほど、と感心がいくほどに。
「お前・・・相変わらずだな。何時になったら妹離れ出来るんだ?」
王子様がた(多分計画済みの)言葉を放った。
正直言ってクラスメイト全員が思ったであろう――
よくぞ言った! と――。
私も勿論思ったよ?言わないけど。
まぁレクヴィオ君がその言葉にかちんときたのは確かだね。笑顔だけど。
そこからはまさに売り言葉に買い言葉。
見てて面白いほどの互いの罵倒のし合い。
実際レイも笑ってたし。せめて「僕の為に争わないで!」とか言ってほしいんだけどなー。
「僕とレイは言ったでしょう?バイバイ、と。つまりあれは可哀想な貴方に対しての遠回りな拒絶。わざわざ遠まわしに言った僕達の苦労に気付かなかったんですか?それとも拒絶とも気付けなかったんですか?やはり王族といえども子供でしたからねぇ・・・」
「ふん。ずっとレイヴェアから離れないシスコン野郎にそんな事言われる筋合いはないな。そもそもレイヴェアさんとお前は違うんだ。バイバイ、の意味が違う可能性はあるってことだ。そもそも兄だからといって妹の恋愛を邪魔する権利がお前にあるとでも言うのか?」
「僕とレイは一心同体といって過言ではありません。故に僕の言葉はレイの言葉。恋愛の邪魔と言っても、レイにそのつもりが無ければ関係ないでしょう。実際レイは思いつきで恋愛をする人ですからね」
「だが、お前がレイヴェアの視野を狭めているのは確かだろう?」
「ならレイに聞いてみなよ。僕と君、どっちを取るかってさ」
「「さぁ、レイ」ヴェア」
こ、これは辛い選択だよね?流石のレイも即答は――
「レクヴィオ」
わお☆即答だよこの人!
残りの人の思いを組む事すらしなかったよ!
にしてもいい笑顔ですねぇ?レクヴィオ君とレイ?まさか最初からこのつもりだったんじゃあ・・・無いよね?
〜クレイト〜
遂に会えた。
愛しのレイヴェア!
握った手は女の子らしく可愛らしい手で、
流れる様な髪はきらきらと光を放っていた。
そして持ち上げられた瞳に俺が映り——
「・・・そろそろうざいんで離して頂けます?」
ずさりと突き支える言葉があっさりとはかれた——。
・・・っていうのも書きたいなぁと思った結果でした。。。




