4話 話を聞いて下さいぃぃ!
「「っあはははははははは!!!」」
闘技場に響くのは軽やかな笑い声。発信地は隣――つまりレクヴィオ様と闘技場のレイヴェアさん。
全く同じタイミングで笑いだしたよこの人達。しかも終わるタイミングも同じ。流石双子・・・で済まないくらいの息の合い様だ。
「・・・レク様。殺られますよ?」
「ひっ・・・」
お、おいおいレクヴィオ様が震えたぞ?そんなにあのメシスってやつが怖いのか?
〈それでは早速、レッツショータイム!ひゃっほーい!!〉
テンションたけ―な司会者。何時かレイヴェアさんに刺されるぞ?勿論闇討ちで。
ええと・・・ユリシアさんでしたっけ。ふぅむ・・・ローバート家は長男しか知らなかったのでややこしいです。確かローバート家の長男ユーアさん?は僕に告白してきた事がありましたっけ・・・。遠い過去の話ですね。ユリシアさんが知ったらどんな反応するんでしょう?今度試してみましょうか。
「レイ様?」
「何でしょうメシスさん」
ユリシアさんの従者――マクオンさんはやはり僕の見立て通り有能さんでした。
今だって初級の魔法でここまでやったんですから。
「動かない気ですか?いいですけど・・・レディはもう少し動くべきだと思いますよ?重さ的に」
「御忠告痛み入ります。これでも動く気くらいはありますよ。ただ――」
ただ、どうすればいいのかなって。
だっていきなり闘技場が森になっちゃったんですから。
心の優しい、ミジンコ一匹殺せないお人よしの僕には植物をゴミの様に退かしながら歩くなんて出来ないんです。まぁそういう意志ではあるというだけですけどね。実際は生き物なんて見るも無残な姿にするなんてお人よしの僕にも簡単過ぎますが。
「ふふ・・・では、失礼」
「・・・」
御姫様抱っこですか。いい歳して何やってるんですかメシスさん。
・・・とそんな事はどうでもいいんです。今問題なのは、何故こんなにも複雑な気分になるか、という事です!複雑です。複雑なんです。簡単に言って、途轍もなく不快です。
まぁ、植物を傷つけずに相手の所まで行ったのでよしとしましょう・・・かなぁ?
「っな!? ――これは一体どういう事ですの!?マクオン!早く足止めを!」
「は、はい!」
「「遅いですよ」」
うわー・・・被っちゃった。口調も一緒だから見事にもう・・・。
メシスさんが大きく振りかぶって――打ちました!これほんと!空ぶったけどね!
「・・・ふむ。意外とやりますね、あの騎士団の若手様は」
マクオンは僕と同じ状態のユリシアに――つまり、御姫様抱っこされたユリシアに話しかけます。
「大丈夫です・・・僕が、貴方を、守りますから」
「ま、マクオン・・・」
「・・・ラブコメは余所で存分にどうぞ」
「・・・さっさと押し倒しちゃえ☆」
「「御断りします!」わ!」
ふむふむ。青春だね~。僕もしないとなー・・・。
あ、でもメシスさんとかが意外に許さなそう。
あの人、父親みたいな気分に浸ってるでしょうし?あっはっは。メシスさんなら全力で否定して、僕に逃げる事の許されない選択肢を与えるんだろうなー。
「・・・さて、レイ様。愚かな考えを持った罪人には終焉コースか懺悔コース・・・どちらが良いと思いますか?」
「第3の選択肢、逃走コースで」
「そうですか・・・分かりました。両方ですね」
「言葉が通じてない!?」
メシスさんの心読み疑惑はまだまだ解け無さそうです。残念でなりません。
〈おおっとぉ!? 森です!森が現れましたぁ! しかし両者動きません!
どちらが先に動くかで勝負か決まるのでしょうかぁ!?
おお! レイヴェアチーム動きました! まさかのお姫様抱っこだぁぁ!
それに対抗したユリシアチームもぉぉ! 従者の範囲を超えているぞ両チームぅぅ!〉
「なんで分かんだよっ」
「・・・お姫様抱っこ・・・メシスめ」
「・・・ちっ、あの野郎」
「メイドさん!?」




