2話 なんというか・・・複雑な心境ですね。
主従決闘ルール
・闘技場で敵の陣地にある風船を先に壊した方が勝利。
・致命傷を与えてはいけない。
・魔法は上級魔法を使用してはいけない。
・闘技場から落ちた場合失格となる。
採点基準
・風船を壊すまでの時間。使用する魔法。
・従者と主のチームワーク。お互いがどの様に動き、どの様にカバーし合えるか。
・コミュニケーシュン力。
・信頼度
・・・採点基準が無ければ楽勝の勝利でしょうね。
それさえ無ければ――
「ふふふ。どうかなされましたかレイ様?何やら不満そうですね。私がそんなにお気に召しませんか?」
な、何ででしょう。この人に話しかけられると体が硬直します。体に染みついた恐怖、ってやつでしょうか!
「・・・兎に角、その黒い笑みを向けないでいただけると心の底から感激しますよ、メシスさん」
どこぞの救世主じゃないんですし・・・。そんな腹黒そうな笑みは止めていただきたいですね。
「それにしても決闘ですか・・・流石レイ様ですね。冷静に事を運んでいる様に見えて無謀で意外と考えなし。昔と変わりませんね」
・・・あれ?これって侮辱されてる?されてるよね?堂々と主を馬鹿にしてるよね?しかも言い返せないんですけど!
「・・・信頼はしています。信用はしてませんけど」
「嘘ですね。相変わらずの下手な嘘ですねレイ様。心のどこかでは信用しているから目が泳ぐんですよ?」
な、なにー!?僕の嘘が・・・てかほんとなんですけど?
い、いやもしかしたら・・・! ・・・ああ、また嵌められましたね。
「・・・行きましょうか」
「そうですねレイ様♪」
笑顔のメシスさんが静かに目の前の幕を開きます。
ああ・・・いきなり従者として呼ばれて、いきなり決闘という出来事に少なからずお怒りなんですね。
謝りはしませんけど!
「・・・相手はローバート家令嬢、ユリシア=ローバート様。・・・位ではティナノール家よりは上にあります。実力は劣り――大分と劣りますが」
俺の斜め後ろで途轍もなく綺麗なメイド服の美人さんが説明する。
これから始まる決闘についてだろう。
てか誰だ?
「ええと・・・どちら様?」
「・・・ティナノール家のメイドです。現在はレクヴィオ様の専属従者を務めています」
「へ、へぇ・・・」
何ていうか・・・ティナノール家はやっぱり名家なんだな。改めて実感する。いやそれよりも――
「お、おいレクヴィオ様!お前にこんな従者居るなんて知らなかったぞ!?」
「え?ああ・・・今日からだし」
「今日って・・・ああ、レイヴェアさんが主従決闘するからか?」
「まぁそういうとこだね。これでも僕も驚いているんだよ?いきなり来て今日から従者となります、って言われたんだから。そもそもレイが決闘するなんて・・・ついさっき知った」
「・・・マジ?一週間前には決まってたぞ?」
「・・・」
勢いよく睨まれた。正直言って怖い。てか何でメイドさんまで睨むんだよ!?俺、何もしてないぞ!?
「・・・にしても・・・僕の所にネルメさんが来たって事はレイの所には・・・」
「・・・お察しの通りですレク様。あれがレイ様の従者となります」
「あれ、ねぇ・・・。チッ」
あ、あれって何?てか舌打ちしたよね!?そんなに嫌なやつなのか?
そんな会話をしている内に歓声が上がった。
「・・・来た」
レイヴェアさんが幕から出てきた。
で、少し前に歩く美形さん。あの人があれ?普通にいい人っぽいけど・・・?
い、いや、よく見よう。笑顔でさり気無くレイヴェアさんをエスコートしている男の人じゃなくてレイヴェアさんの表情を。
・・・嫌そうだ。
思いっきり嫌悪感満載だね?
見てると、男の人はその事に笑っている様にも見えてくるんだけど?




