26話 外道だ。外道が居るぞここに。
「さて、ソラ君も気付いているでしょうが・・・3人の天使が居るということは、最低でも3つの能力を持っている事になりますね。ところでソラ君の能力はいくつですか?」
直球に聞いてみました。
「あー、俺はふた・・・って誰が言うかぁ!」
なるほど。2つですか。いくら神候補でも馬鹿は馬鹿。やっぱり単純ですね。
「・・・今の状況、有利なのは俺なんじゃねーの?だってここは俺の中、なんだろ?」
おお。話を逸らしたのはかっこ良くありませんがなかなかかっこ良い言い方をしますね。それにしても思ったよりも頭が回るようですね。ですが・・・
「確かにここはソラ君の中です。でも・・・今、能力を実行しているのは僕ですよ?害がなく精神に入り込む為の能力ですからね。いざとなればさっさとこんな所から出ればいいのです」
「・・・それは、どうかなぁ!?」
「っ!」
ソラ君がにやりと笑うと同時に(どこぞの悪そうな貴族みたいですね〜)暗闇の世界が、闇の触手が僕に牙を向ける。
どん!
どん!
あ、ぶな。
服の一部が消えましたよ・・・。
「やっぱりな!この体の持ち主の攻撃は有効って訳だ!」
あ、やばすです。
「・・・退却」
「あ! って・・・もういねぇし・・・」
「っは!」
僕は目を覚ますと同時に目の前のソラ君から距離をとります。
『ざーんねんだったね~失敗して~』
既にピアスに戻っていたフェアーがきゃはきゃはと笑います。
殴れないのが残念でなりません。
「・・・つぅ・・・ここは・・・戻ったのか・・・?」
ソラ君が目を覚ました様です。
「「・・・」」
何でしょう。この微妙な空気は。
まぁ相手にとっては偽物とはいえ犯したはずの相手が敵ですし、僕にとっては偽物とはいえ僕の純潔を奪った相手ですからね。一言で言うと、複雑です。
「まぁ・・・死んでください」
「・・・それはこっちのセリフだ」
「――能力発動《神聖なるベール》!」
ぶわぁ と柔らかなベールに包まれるのを感じます。
「・・・んだそれ」
「ベール」
って言ったじゃないですか。
わざわざ2回も言わせないで下さいよ。
「・・・まぁいい。【業火】!」
ばしぃ!
「っ!弾くのか」
だだだ
と一瞬で僕に詰め寄ったソラ君は悠々とベールを通りぬけました。・・・あれ?もしかして神候補相手には無効にされちゃうんですかこれ?それとも元々僕の能力じゃないから活用出来てないとかでしょうか?
――自動能力発動《敏感察知》
ばっ
どがぁぁあ
《敏感察知》で体を反らすとそこにソラ君が殴りこみました。魔力で強化されていたようです。
当たるとぐしゃぐしゃになってましたね、あれは。
「ちっ避けたか!」
「・・・あぶな・・・」
てかこの人・・・一度僕を殺しているからか容赦が無い。
あの時、後ろからぐっさりと刺して少なくとも精神は壊しておけばよかったですね。
げしぃい
反れた状態から足を振り上げ、ソラ君の体に命中させます。
「っ――がは」
ああ!僕の綺麗な足に血がぁ!
うん。どうでもいいけどね。
くるりと回転して、今度は顔の横に足を命中――出来ませんでした。
足を捕まえられ、ソラ君はただ、強く、握ります。
「っ・・・ぐ・・・い、あぁぁぁあ!」
ばきぃ
おお・・・これは折れた!?折れちゃいましたか僕の足ぃ!
そしてそのままソラ君は僕は後ろに向かって投げます。
「・・・つぅ・・・」
同じ神候補から受けた傷は特殊な何かじゃないと治らない。
あのおじさんから死にかけながらも教わった事の1つですね。
「けほ・・・これでも体術は得意、なんだよね」
ソラ君は呟きながらも僕を見続けます。
ぽっ。恥ずかしい・・・なんて事は起こりませんよ?
僕にはレクが居ますから!今はいませんけど!
ですが・・・条件は整いました。
逆襲はこれからです。
どこぞの待ち人達
「ん〜。にしても遅いねソラ君とレイ。あ、もしかして・・・」
「アリサ?ソラにそこまでの勇気があると思うの?」
「あーないね。むしろそれを理解して全力で避けるね」
「でしょ?」




