5話 兄様?人間って諦めが肝心らしいです。
「レイ! 大丈夫でしたか!?」
兄様が倒れているおじさん達に目もくれず僕に向かってきます。
あ、何だかんだでおじさん達をご丁寧に踏みながら。
「はいだいじょうぶですにいさま。ぼくはげんきです。」
「ああ、レイ!」
抱きつく兄様の背中を優しくポンポンと叩いて、大丈夫だと伝えようとするのですが・・・兄様・・・痛いです。あー・・・痛い痛い! う、腕。腕の力を緩めて下さい! 兄様ぁぁぁ・・・プツン。
「・・・う、ん?」
「あ、起きましたかレイ!」
「にい、さま?」
「もう大丈夫ですよレイ。ここは家ですから。」
にこにこと微笑む兄様。と、見慣れた天井。
にしても・・・あの後の記憶が無い・・・。
痛さのあまりに気絶した? ・・・我ながらに恥ずかしいなそれ。
でも兄様の力は並外れているから・・・しょうがないよね?
「全く・・・あいつ等め。一体レイに何をしたんですか!?」
「え・・・ぼく、なにもされてないですよにいさま」
「いえ、絶対に何かあったはずです! レイ、貴方は気絶したんですよ!?」
あんたのせいだよ。
「今、彼らは尋問でもされている頃でしょう」
わぉ。怖い。兄様のその暗い笑顔が。
てかやっぱ全部あんたのせいだよ。
トラウマになっちゃう所だったよあれは。
「・・・それでレイ? 彼らに何をしたんですか?」
低くなった声に一瞬びくりとする。
でも兄様は兄様。優しい表情は変わりません。それはそれで怖い。
「な・・・なぁんにもしてない、よ?」
「嘘はいけませんねレイ。さあ、白状しなさい?」
何で僕が詰問されないといけないんだろう。
精霊の声が聞こえている事(見えないけど)は誰もが知っている。だからこそ《神の愛し子》なんて言われてるんだけど。
でも、友達になれる事――つまり、精霊魔法が使える事は誰にも言っていない。
理由は・・・何となく?
「うぅ・・・せいれいにたすけてもらったんですぅ」
あ、白状しちゃった♪
やっぱ家族には弱いなぁ~。
「精霊を使役・・・出来るんですか?」
おお、兄様が驚いている。珍しい。これは写真におさめ――カメラ無いわ。
「しえき、じゃない。 たすけてもらったの」
精霊とは友達。だからきちんと訂正しないとね。
家族だけでなく、友達も僕は嫌いになれないみたいだ。
「それ! 本当なのレイちゃん!」
あ、母様が扉をぶち抜いて・・・え?
「本当に精霊魔法が使えるのレイちゃん!?」
「あ、はい・・・」
え? いや・・・扉・・・。
「それは驚いたな。や、流石我が娘というところか?」
おお、父様。 ・・・え? 窓から?
「流石私達の娘よ! レイヴェア!」
・・・扉と窓が・・・。
「よし。そんなめでたい事が分かったんだ! 祝杯をあげるぞウリューネ!」
「ええ、そうね! 今すぐに宴会の準備をしましょうルハイト!」
ドゴーン
壁を壊して出ていく自分の親に呆気とします。
それはいいとして・・・ここ兄様の部屋・・・。
「・・・母様と父様には後でよく言っておかないと・・・」
流石に兄様もお怒りモードの様です。
当たり前ですね。
何時も能天気な両親に疲れるのは長男の兄様ですから(笑)
兄様は苦労人~
僕は道楽人~
て、感じですか。




