16話 人の執念って怖いですね。あ、僕の事か。
「ハッ・・・ハッ・・・ハ・・・」
「だ、いじょう、ぶレク?」
「だい、じょうぶ」
には見えないよ?
7歳でほぼ同じ体系の僕をお姫様抱っこで全力疾走中だし。
「レイ、まほう、つかえる?」
「・・・すこし、なら」
今の僕達は地獄の特訓のおかげでおじさんに会う前からぼろぼろだった。
だから僕の魔力はほとんど残っていない。
レクは僕の影で体を休ませていたから体力は大分戻ったみたいだ。
あれ? 今思うと、僕もレクの影に潜めばいいんじゃないか?
「・・・レク。ぼく、かげにはいります」
「え・・・あ、そっか」
ふむ。どっちも忘れていた様ですね。
ドプン――
暗いが上にはレクが見える変わった世界。
そこがレクの影の世界というのは明白。
――レク。気をつけて下さい。精霊は答えません。
――精霊が? ・・・何で? レイは何でか知ってる?
――っ・・・。
――・・・言わなくていいよ。
――ごめん、なさい。
まさかレクに嘘を吐くというのがこれだけ辛い事だとは思わなかった。
精霊が答えないのは、精霊が天使とはまた違う神の使いの様なものだから。
だから神候補同士の戦いには手を貸さない。
例え、おじさんより僕の方が好かれていたとしても。
・・・すっごいハンデ。
何故だ?
てか精霊が手を貸さないということは、これが僕達神候補がやるべき事だからだろうか?
戦え、ってことか?
ならやっぱ差があり過ぎる。色々と。
・・・ち。神様は理不尽って事ですか。
あのストーカーおばさんも理不尽な事してくれましたしね。
殺すし、悪態はつくし、説明はしないし・・・役に立たないねぇ。
やっぱあの人は歳なんだろうなぁ。物忘れが激しそうだ。
にしても・・・
印・・・ねえ・・・。
そんなもの無いぞ?
まさか! 見えないところ――精神にあるとか!?
・・・見えないと印の意味ねえな。
じゃあ一体何処にある?
・・・神候補ってのがそもそもの間違いだった、僕は本当はただの一般人だったから印は無く、そのまま放置、とかなら・・・
本気で消すぞストーカーおばさん。
さて、そんな人のしょうもない話よりもおじさんだ。
僕もレクも既に限界。
おじさんは元気有り余ってる感じだし・・・。うん。バッドエンドだね。
何のくそゲーだよこれ。
兎に角、おじさんは力があるはずだと言っていた。
僕達が生き残るのはそれに賭けるしかないってことだ。
・・・くそ。
僕には人を守る力なんて無いに決まってる。
なのに、守らなくちゃ駄目な人達が居るなんて・・・。
「・・・でも、ぼくは・・・」
それでも生きる執念が消えないんだな。
自由を縛る世界が死ぬほど嫌いだけど、死ぬのはもっと嫌。
だから、世界が滅びちゃえば僕は自由になれるんだと思うんだよね。
っていうのがレイの考えですね。
自由の先に何をすればいいのかは後々考える、といった問題を先送りにするレイです。。。