143話 なんか仲良くはなれそうにないなぁ・・・。
レイは、ただのレイヴェア=ティナノールとして生きる事を選んだ。
それがどうかしたのかって?おおありだよ。だってレイヴェアにとって元となった蒼夜という存在は己を作る全てだったんだから。
体を大切にしないのは蒼夜がそうだったから。自分の事を『僕』と言うのは蒼夜であった事の証を分かりやすくしていたから。
身も心も全てが蒼夜に捧げられていたんだ。
なんか厭らしい言い方になっちゃったけどね、レイを簡単に言うとそうなるわけ。
本当なら僕もそうなっていただろうね。でも僕にはレイと違って蒼夜であった時の記憶は無かったし。
記憶はレイに、肉体は僕に・・・みたいな感じだったのかな。
だからレイは体が弱かったんだね(それでも超人レベル)。
そのレイが、蒼夜を捨てた。
自分自身を捨てたといって過言ではないのだけれど、レイは実にあっさりと切り捨てた。
多少のいざこざはあったのは気のせいだよ。
で、『僕』から『私』になったレイといえば、片割れである僕を置いて・・・。
「兄様兄様♪お体は大丈夫ですか」
「ええ、大丈夫ですよ」
「ですけど、あの馬鹿の攻撃を喰らったんですよ?」
「多少は痛みますがその程度です。ところでレイ?」
「なんですか兄様」
「その・・・さっきから途轍もなく視線が痛いのですが」
あー・・・兄様、死ねば良いのに。
腸引きずり出して吊るしてやろうか。それともレイを見ない様に視覚の為の器官を壊してやろうか。
「レクは私の事を分かってくれてます。ね、レク♪」
・・・そんな事を笑顔で言われると、何も言えないんだけど。
「ふぅ、やれやれだな、これで後は報告だけか」
王都のご立派な騎士達が動き回る中でおとーさんが溜め息混じりに呟く。ディオネスにーさんとレイとの痴話喧嘩の後に、急に突入して来た騎士達は、颯爽と後始末をしだしたのです。なんと、何時の間にかいなかった王様が指示をだしたというのです!いつの間に!
ディオネスは王の計らいかなにかでラスボスだったという事実を晒される事無く、全てエアレズとやらのせいになった。
で、レイ達3兄弟の平和な会話が聞けるまでには落ち着いたのだぁ。
腰を下ろそうとするおとーさんにそっと手を貸してあげたら「腰か、腰の心配かぁぁ!」って怒られた。ば、ばれちゃったかっ。
「・・・お前も、一応私の子、になるのか?」
「やだなーお父さん。そんな、気持ち悪い」
「うむ。お前は私の子ではないな」
すぱって切られた、すぱって切られた。重要な事なのでもう一度言います。すぱっと切られました。
「・・・神候補、か」
「どーかしましたぁ?」
「いや・・・我が娘はそんな得体の知れないものを背負っていたのだと思うとな」
「得体って(笑)。あんたたちが恭しく扱う神ですよぉ?それにレイは背負うとかそんな重くは思ってないし」
「だが、縛られていたのは事実だろう」
・・・まぁ、ですねー。で?
「今は、ほっとしている」
「まるで今まで安堵出来なかったような言い方」
「出来る訳無いだろう。生まれた時から自我を持っていた上に、異様に強かったのだぞ?」
「それは凄く不気味だね自分ながら」
うん、確かにそれは引く。自分の子が赤ん坊の頃から自分を冷めた様に見られてたと思うと・・・うわぁ、なんだろこの寒気。一瞬ソラ君の顔が横切ったんだけど。
「まぁ、所詮レイヴェア。僕とは比べるまでもないですけどねー」
「そうか。私の娘を所詮扱いとは・・・覚悟は出来てるんだろうな」
なんかこの人、殺気立っててやだわー。
「(・・・レクヴィオは怒ってます。レイは気付いて——ますよねぇ)」
「・・・なにさ」
「いえ(なんか、すいませんねレクヴィオ)」