142話 さぁ、一緒に帰りましょう☆何もかも忘れて。
「あげますよ」
「え、ちょ、ま・・・ごふっ!?」
ごくん。
ふぃぃー。思ったよりも美味くはないって、何食わしてんのぉぉ!?
「お兄様の力ですね」
んなこと聞いてねぇし!
「レイっ何て事をっ・・・」
「根源を絶っただけですよ。さて、後は僕の方もですね」
僕の方も・・・?
瞬間、レイヴェアさんから猛烈な光が放たれる。
目を瞑る間もなく、けれども目に優しい光。
そして光が収まったそこには、レイヴェアさんとその上をふわふわと浮く光の球。ディオネスと同じ様に複雑な模様が描かれた神候補の印。
「僕の能力、《絶対なる支配》《深層接触》《神聖なるベール》《最悪な幻》《敏感察知》そして《献上せし何か》。《献上せし何か》はその名の通り、献上したり、献上させたりする能力ですね。今知りましたけどね僕。ああ、先程の事では兄様の神候補の印をソラに献上したのです」
ああ、だから直球で俺に来たのか。
しかも献上ってことは貰うって事だから、ディオネスの神候補としての位も能力も俺のものに・・・あれ?まともな戦闘系の能力で嬉し過ぎて涙が出そうだぜ。
・・・んじゃ、今レイヴェアさんは、何故能力を使ったんだ?
「お兄様。僕は今まで神凪蒼夜を基準として生きてきました。故に、先程までお兄様を殺す気で居ました」
何故か始まったレイヴェアさんの独白。
なんだろこの空気・・・嫌な、逆に嬉しいような微妙な予感がする。
「家族は大切。でも他人は嫌い。蒼夜にとってお兄様は家族というよりは他人に近かったのです。ですけどレイヴェアとしての僕では他人なんかではなく確かに家族というこの矛盾。矛盾と言えるか分からないほどの微妙な1人の葛藤ですね」
「・・・」
「まぁ、そんなわけで、色々あって分かれる事にしたんですよ」
「「「「は?」」」」
・・・気持ちは分かるぞ皆のもの。
俺もすっごく顔が引き攣ってるから。
「い、いやいやレイヴェアよ。それはレクヴィオとの事を言っているのか?」
「いいえ影の薄い(ついでに頭もそろそろな)父様。レクヴィオとはまた違います」
「・・・まさか、そのソウヤというやつの事か?」
「やけに今日は冴えてますねクレイト王子。正解です☆」
「そーそー。レイがまるで彼女のように分かれ話を持って来て、お父さん驚いちゃった〜☆」
「「「「!!」」」」
「蒼夜!?」
何故に後ろに蒼夜様様様がぁぁ!?
え、レイヴェアさんはあそこだし、レクヴィオだって・・・。
「ちょっとね〜体が受け付けなかったみたいでさ」
「ですね。色々誤解を招きそうな言い方をありがとうございます」
笑顔でやりとりをする蒼夜とレイヴェアさん。
2人を知る者としてとてもとってもとぉっても不気味だ。
・・・言わないけど。
レイヴェアさんの上を浮いていた光の球はそのまま蒼夜の体に吸い込まれる様に消えていった(食べなくてもよかったんじゃん)。
「さ、お兄様。これで万事解決です。私と一緒に帰りましょう」
俺、ツッコミとして(自覚はある)色々言いたい事はあるんだけど、その前に1ついいかな。
・・・その笑みに惚れ直しました。ぽっ///
「ああ、ついでに言うと、ソウヤが実体化しているのは神候補という自覚を持ったレクヴィオの能力です」
「ええ〜・・・なんかもう、色々ありだな」
「名前は悩みに悩んだ挙げ句、《偽物の本当》と名付けました」
「え!?能力名って勝手に決めれたっけ!?」