140話 あはははははは! いーひっひっひっひぃ。
(前話までのこと)——があって、それから。
「兄さん・・・いえ、兄様」
瞬間、蒼夜の姿が光に包まれた。
で、直視したおかげで光にやられた目が痛くてごろごろしてしまうわけで。目を開けると蒼夜は愛しのレイヴェアさんと+αがいた。
ゆっくりと起き上がったディオネスは優しい笑みを浮かべて、すぐに邪悪な笑みになる。
絶対危ないだろーーって、ええええええ!?
「ちょっ、レイヴェアさん!?」
何故に敵に、しかもラスボスに抱きついてるんですかぁぁ!
そして・・・
「愛していますお兄様っ!」
「「「なぁにいいぃぃぃぃぃ!?」」」
叫んだのは俺、クレイト王子、ルハイトさん。
「もう離さないでくださいっっ」
「「「きゃああああ///」」」
・・・アリサ、ユリシア、ウリューネさん。
おい女子(?)共。囃し立てるな。
「あ、あの・・・」
ディオネスが流石におどおどと戸惑っている。
「お兄様っ僕は、家族が大好きなのです!例え、僕を殺そうとしたとしても、嫌いになんかなれません」
ぎゅーと顔を押し付けている。・・・羨ましいなんて思ってないぞ。
「レイ・・・」
「だから、だから・・・お願いです。帰ってきてください」
レイヴェアさんにしては珍しく、なんの捻りもなく嫌みも無い真摯な言葉。
周りがしんと静かになる。そして俺はそれ以上に呆然としていた。
そう、や?
違う。あれは、蒼夜じゃ、ない・・・?
「兄様っ」
レイヴェアの声にディオネスが揺れた。体だけでなく、心も。
それが分かるくらいにディオネスの表情は歪んだのだ。
・・・イケメンはどんな表情でも似合うって言うのは、うぜぇなおい。
勿論蒼夜はべつだけど(きりっ)。
「・・・兄様。貴方はなぜ、こんな傍迷惑な事を?」
レクヴィオがどう見ても嫉妬の目で睨みながら、声は優しく問いかける。
隠せてない、全然隠せてないぞ。
「簡単な事ですよ。力があったから、それだけです」
「ディオネスちゃん・・・」
「ええ、家族は勿論愛していましたよ?ですが、それがなんだというのです。力があった。神候補という特別な存在に与えられた力が。だから使ったまでの事」
その言葉にルハイトさんが「愚か者っ」だの「力に溺れたかっ」だのと言っているが誰にも相手にされない。
・・・一応、すっげぇ良い事を言っていた事は認めよう。
「・・・ぶはっ」
「へ?」
「ぷっははははははは!きゃは、ぷ、はははっくはははは!」
「れ、レイ?」
「ひぃひぃひぃ・・・あっっははははははは」
ずど
前触れもなく嫌な、鈍い音がなる。
それはレイヴェアさんから、レイヴェアさんの腕から、ディオネスの、腹から。
えぇぇぇぇ?
「力が無ければ、いいんですよね?」
やっと起き上がったレイヴェアさんの表情はとても無邪気な笑顔でした、と。
あ、腕は見事にディオネスの腹から生えており、不思議な事に血は全くなかった。
「あははは、ひぃひぃひぃ・・・」
(・・・もう少し笑い方は自重した方がいいと思うなぁ)
誰かの心の声。