133話 自称家族絶対主義者見参☆
「・・・あ、れ?」
今、まさにディオネス(ラスボス)を手にかけようとしていた蒼夜の手が止まった。
「う、わー・・・やばい、これはやばいぞ僕。何これやっべー、えっへへ〜あーうー」
「どうしたんだ蒼夜?」
「いや〜それがさぁ・・・名前呼んでんじゃねーよ。あーと・・・」
「くははははは、は、はは、ごほっごほごほは、ははっがっ!」
「やーん、兄さん煩いよ〜」
急に生気を取り戻して笑い出したディオネスのお腹を踏みつける外道。
腕も足も、血は流れていないとはいえ存在しない今のディオネスは絶体絶命な状況だな。
大分時間がかかったが、さっさとここから出ないとまじで生き埋めになりそうだ。
今更だけど、ほんとこの部屋あれだから。ぼろぼろだから。崩れるから。ずどぉぉん。落ちたからっ(何かがっ)。
で、急に目を輝かせたディオネスが言う。
「くはは・・・確か、ソウヤと言いましたか。貴方はレイヴェアとレクヴィオが一つになった姿だと言っていましたね?」
「今更何言ってんだか。まぁ、正確には俺にとっての大、もう一回言うけど大親友の蒼夜だ!レイヴェアとレクヴィオの前世だなっ」
「・・・前世。つまり、もともとは彼1人だったと」
「そりゃなー。転生して2人になっちまったみてぇだけど」
さっきから蒼夜が静かなのが気になるな。最初ははっちゃけすぎてる感満載だったのに。
ディオネスがにぃと歪に笑う。
「では、今の彼は偽物ということですねぇ」
「はぁ?そんなわけないじゃん。蒼夜は蒼夜だ。今はもともとの姿に戻ってるだけだろ」
「なら、彼はどうして泣いているのでしょうね?」
「は?」
蒼夜は眉を顰めて訝しそうな表情をしながら、泣いていた。
「へ・・・な、え?」
蒼夜が泣く?ありえないって、あの蒼夜だぞ?
「・・・どういう事か分かんないけどさ、泣いてたらなんだっていうの?」
アリサがぶすっとぼやく。それに続いて今まで黙って成り行きを見守っていた人達も騒ぎだす。
「レイヴェアが泣くというのはけっこうあったんじゃないか?」
「だな。そりゃ、腕折られりゃ・・・涙も出るだろ普通」
「そういえばそのような事もありましたわね」
え、そこ納得しちゃうの。俺が知らない間に何があったの蒼夜!?
「彼が・・・レイヴェアやレクヴィオが泣いているということですよ。つまり——」
ディオネスが優しいお兄ちゃんの笑みで蒼夜を見る。
「殺せないんでしょう?」
・・・そうだった。蒼夜は家族絶対主義者だった。
だから例え敵であろうと家族としての思い出があるいじょう、蒼夜には殺せない。蒼夜にはなくても、蒼夜を形成しているレクヴェアとレクヴィオの思いがあるから。
それが、今なお蒼夜を縛り、世界の破滅を願う蒼夜の、
呪縛、だったっけ。
『ね、おにいさま。だっこ!』
『う〜・・・ぼくも』
『はいはい。お姫様、王子様』
『ふわっ。おおーたかいですねぇ』
『・・・ぼくだっていつかは』
『くすくす。貴方達だって大人になれば大きくなれますよ』
そんな3人の会話が大好きでした。
戦いなんて知らなくても良い。裏の世界なんて知らなくても良い。
いつもふざけて笑って・・・そんな平和な世界が続けばいい。
でも、もう駄目ね。
私の愛した家族は話し合いも出来ないくらいにばらばらになってしまったもの。
いつまでも続いて欲しいと願った日常はもう帰って来ない。
なら、最後くらい、最後くらい私も混ぜて欲しいなぁ。
「・・・もう、私の子ども達はお転婆さん達ばかりなんだからぁ」
故に、愛しいの。