13話 ああ、メシスさんも人間だったんですね。ホッとしました。
「っ・・・」
息が詰まりました。
ごほごほ・・・じゃなくて!
「・・・俺は俺と同じ奴を探して此処まで来たんだ。なのに来てみれば、ぞろぞろと・・・」
男性は40くらいのごついおじさんでした。
何だか物凄く不機嫌そうです。理由は・・・僕には明白ですね。
つまり、あの人は僕と同じ・・・神候補の一人、って事ですね。はい。ちょー迷惑です。
「んで?誰がそうなんだぁ?」
お、にやにやし出した。
その普通の人や綺麗な人には合わないような笑顔――貴方にとびっきりお似合いですよ。
・・・言ったら殺されそう。
「・・・さて『そう』とはどういう意味でしょう? 此処はティナノール家の敷地内ですよ。今すぐに出ていくことをおすすめします」
神候補を探しているのは確定ですね~。
てか此処って・・・山なんだけど。ティナノール家・・・どんだけ・・・。
それにしても何時もの捻くれた言動をしないメシスさん。変です。
まぁ、それだけ警戒しているってことなんでしょうけど。
ですが僕でも勝てない人達が3人も居るんです。
あの人が神候補でも、きっと勝てないでしょう。
と、まぁその時はそんな暢気に思っていたわけですよ。
僕が未熟だって事でしょうか?
でも僕って意外と本気出さない人だし、実際はディオ兄様には勝てるのかも知れませんね。
いや、もしかしたらあのメシスさんにも・・・うん。やっぱあの人は無理。
あーでも、僕って神候補の上に神の愛し子だしー?
実力は兎も角、運は誰よりもいいはず。
でも人によってはいい事と悪い事って違うものだよね?なら運に期待はしないさ。そもそもこんな事に巻き込んだ神に頼るっていうのはお門違いだろうね。
てか僕のプライド(あったんだそんな物)が許さないな。
あ、そういえば大きな可能性を見落としていたな。
もともと強い人が神候補に選ばれたらどうなるのか。
例えば、今でも十分に強くて陰険でラスボス的存在のメシスさんが選ばれて・・・うわぁ・・・想像すらしたくない、今現在。
まぁさっきから何が言いたいのかっていうとだね・・・。
メシスさん。ネルメさん。ディオ兄様。
この完全無欠な最強陣の3人が見事に負けちゃったってこと。
これは予想外であり、想像の範疇な出来事なわけですよ。意味分からん。
さて、例え先に逃げ出したとはいえ、結果を知っているという事は近くに居てしまったという事で・・・そんな強い奴がそんな近くに潜む未熟な僕に気付かないはずがなくて・・・つまりは次に狙われるとしたら他の誰でもない僕なわけですよ。
「・・・さっきから余裕だなぁ?嬢ちゃん?」
ごめんなさい。全然余裕じゃないです。
ただ解説してただけ。
か、勘違いしないでよねっ。
つんってしてみた(笑)
「・・・てことは、お前か?」
んー?何がぁー?
ってぼけても駄目っぽそうですね。
ほら、おじさんの様な戦いに生きる人って獲物を見るときの目がすっごくぎらぎらしてて・・・。
今みたいに。
「じゃあ・・・始めようか」
丁重にお断りしたいです。
化け物扱いされていたメシスさんも負けるんですね。
・・・初めて同じ人間なのだと実感しました。
あれ?僕って人間ですよね?
「余裕だなぁ嬢ちゃん?」
「なぜほんぺんでもないのにでてくるんですか」