126話 何も感じない。あ、缶を投げないで、ちょ、痛いっ!痛いってば!!
順調順調。
いやだって、どう見ても俺が優勢だし。
あいつはまだ御霊の使い方が分かっていないのか、謎の衝撃波を出すだけで後は防戦一方だし。
だからって警戒はちゃんとしてるさ!
アリサの張りつめた視線が分かるくらいには!
でもアリサ・・・後ろ後ろ。すっごく大変な事になってますって。
多分ディオネス(か、ラスボスだった筈のエアレズ)の部下の生き残りなんだと思うけど・・・それなりに強い、よな?
最近規格外というか、普通に世界超えてる人達しか見てないからさ。この世界での強い、が分からん。
「おらおらおらおらぁぁぁ!」
どどどど!
音がなるくらいの拳での攻撃を続ける。
向こうは権限のおかげでなかなか思う様には動けなさそうだ。ま、当然だな!(完璧には縛れなかったけど)
だが・・・
「・・・そろそろいいでしょう」
「あ?」
ディオネスがぼそりと何かを呟いた瞬間、俺の視界が——世界が真っ白に光を放った。
「なっ!? ——っ」
・・・? ・・・はっ!まさか目眩ましか!(←遅い)
いや、でもどうやって?魔法は封じた筈だぞ?
御霊も・・・もう、使えるようになったのか?
光が収まり、ゆっくりと目を開く。
「・・・うわ何これきもい」
辺り一面が鏡の世界でした。
自分の姿がいろいろな方向で鏡に映っている。
なにこれ酔う。吐く。気持ち悪い。てかここどこよ?
「いらっしゃいませ私の世界へ」
「おいおい・・・冗談きつい。俺のパクリかっ!」
「いえ。普通に私の能力ですが」
「能力・・・」
「ええそうですよ。ああ、それと御霊ですが・・・使い方は既に把握済みです。使わなかったのは使えなかったのではなく、貴方には勿体なかったからですよ。ですので安心して——逝って下さいね」
ばりぃぃぃん!
一枚の鏡が割れた。それはもう清々しいくらいにばらばらに。
何も起こらないぞ?お?身構えたのに損したぜ。いやほんとに何が——
「・・・あれ?」
身構えたのに、なんで腕が見えないんだ?おかしい。確かに右腕は見えるんだ。なのになんで、なんで?
「なんで、何も、感じない?」
ぞくり。
背筋がふっと冷える様な感覚に陥る。
俺の左腕はどうなった。見てはいけない。見てはいけない。見てしまえば、大変なことになる。大変な事になりますよ?大変な事になるんです。大変な事に。
俺の左腕は、肘から先が砕け散っていた。
「う、がぁぁぁぁああああああぁっぁぁぁあぁああぁ!」
熱くも無いのに!何も感じないのに!痛い!
「うぁ・・・があああぁぁ!」
鏡が割れる。何も感じないのに、とても痛い。鏡が割れる。立っている筈なのに、地面がすぐそこにある。鏡が割れる。真っ白なのに、なにも見えない。鏡が割れる。鏡が割れる。鏡が割れる。
「っぁ・・・レィ・・・ヴェァ・・・さ」
鏡が割れる。
iF
「っぁ・・・レィ・・・ヴェァ・・・さ」
「はい呼びました?」
「っあっっ・・・がくり」
「ああ、人工呼吸はしませんから。さっさと起きて下さい」
「(ちょ、いや、え、まじだって(汗))」