124話 ・・・まるで生まれたての子鹿だな。はっ(鼻笑い)
「・・・流石、同類というところですか」
「けっ!今更何を言うかと思えばっ」
がっ、がががっ!
一撃一撃に力が籠った攻撃が続く。
「おら!」
「くっ・・・」
ずざっ。
「! ディオネスちゃん、が、押し負けてるの・・・!?」
「・・・はしたないですウリューネ様」
レクヴィオの母さんがきゃーと這いつくばりながら歓声を上げる。ネルメさん(すげー。美人のメイドさんだー)・・・這いつくばっていながら上品さを求めても・・・。
確かに、僅かではあるがディオネスの体は後退し続けている。
「・・・くらえ」
「え?」
隣で何か聞こえたぞ?で、なんかびゅって音が・・・ああ!アリサぁぁ!?
アリサの投げた石は小さい。
その程度で効く筈ねぇし!そりゃ当たったら痛いだろうけど!
そんな次元が違う奴にとったら攻撃にもならないじゃん!ソラとの戦いで警戒してるだろうからどんな小さな攻撃でも見事に避け——・・・避ける?
はっ、としてディオネスに目をやれば、見事に石を避けていた。
予想外の攻撃でこっちに意識を戻したみたいだ。
だから、隙が生まれた。
ごっ!
鈍い音と濡れた音が嫌に大きく聞こえた。
「はっ!よそ見とは、良い度胸だぜ!」
「・・・」
吹き飛ばされたディオネスは静かにソラを睨む。
短い間見つめ合い(誤解を招きそうだな。うん。睨み合ってんだ)ディオネスがふっと笑みを零した。
「君は、本当に主人公みたいですね」
「は?」
「レイが手紙で言ってましたよ?君は主人公体質なんだって」
「・・・?」
「主人公は己の勇気と努力で力をつけ、大切な何かを増やして行く。時には傷つけられ、裏切られ、苦しみ、悲しみ・・・。ですが最後には必ず良い関係を築くのです。それが味方であれ敵であれ、出会った者とは必ず」
「・・・」
「だからこそ、仲間と力を合わせれば、守るべき何かがあれば、戦えるのです。どんな無謀な行いであろうと。主人公はそうやって息抜き、たくさんの人の笑顔を守る」
「それが俺ってか?レイヴェアさん・・・やっぱり貴方は俺のヒロインに——」
「いえ、貴方はその主人公ではありませんよ?」
「レイヴェアさんっ(泣」
ソラが床に手をついて項垂れた(簡単に言うと土下座?)。
「主人公とて種類がありますからね。先程述べたお伽噺の様な主人公と——」
「どれだけ頑張っても報われず、誰もが見限り、ただ堕落し、大切だったものまでもを失い、絶望にくれるだけとなる主人公が」
「ごぷっ!?」
ソラが一気に血を吐き出す。
「ソラ——あっ!?」
心配してなんとか駆け出そうとしたアリサが短い悲鳴を上げる。
俺達にかかる力が増したみたいだ。
ディオネスはソラとの距離を保ったまま動かない。
ただ、片手で御霊を持ち、もう片方の手を何かを掴む様に前に向けているだけだ。
ソラは苦しそうに血をどばどば吐き、震える手で首を押さえている。
「私の能力は神から与えられた、この世界にとっての異物です。ですが、御霊はこの世界のもの。この世界のものである限り、あなたの能力では干渉出来ない。そうですよね?」
何言っているのかは分からない。
能力とか、この世界とか、神とか・・・。
ほんと、さっきから意味が分からんものばかりだ。
ただ、お前に、ソラに言いたい事がある。
ソラっ!
・・・手足が生まれたての子鹿のように震えてるぞ?
「ぷ、ぷるぷるしてるっ・・・ぷるぷるしてるよ!」
「アリサ・・・敢えて聞こう。何がだ?」
「勿論!ソラの折れずになんとか保たれてたプライドがっ!」
「ひでぇ!?」