120話 なんだろう。見られているような気がs——ゾクっ。
「止めろぉ!」
王の声に私は歯を食いしばる。
例え敵であろうと息子。ディオネスを命がけで止めないといけないのだから。
だが、と覚悟を決め渾身の一撃を放った。魔力を溜めた、最強の一撃だ。
ごしゃぁぁと激しい音が鳴り響き、愛しの息子がばらばらに砕け、倒れ伏す姿を見た。
心の中で。
「! ルハイト様避けて下さい!」
「っがはぁ!?」
しかしそこに立っているのは未だ笑みを浮かべた無傷の息子。みぞおちに強い衝撃を受けて飛ばされる。
何故だっ!?
私の知っているディオネスは——
「『もっと弱かった』、ですか?」
「く、息子が父を超えたかっ(読心術が)」
「ええ、超えまし・・・いえ、それは勘ですよ」
平然と受け答えをしながら魔法を打ち合うのはシュールだ。
ただ、お互いで違う所といえば・・・ディオネスには動きがないことだろう。
魔法を放つモーションも、魔法を防ぐ様な行動も存在しない。
私の目に映らないほど速く動いているなら別だが・・・それはありえない。私とて長年戦いに身をおいていたのだ。気配を感じる、ということは達人並み、超人並みには出来るのだ。だからこそ、全く動いていない事が分かり、謎を深める。
・・・今までこんな戦いはしない子だったのに・・・。
子の成長がこんなにも悲しいのは・・・私も親ということか?
いやいや、しみじみとする前にこのカラクリを解かねばウリューネに叱られてしまうな。
子は親の背を見て育つもの。その親が見下されてどうするのだ、と。
表向きには「全くルハイトは〜。駄目じゃない☆」のように聞こえるのだろうが。
さて、ディオネスに当たる前に消える魔法のからくりを解き明かし——
「ぅおいっ!よくも俺を見捨てたなレクヴィオ!」
・・・レクヴィオの友達か。後でオボエテロ?
「レクヴィ——ってなんなんだこの状況!?お前の親父が戦ってるのってお前の兄じゃねぇか!」
「煩いよルイス。今の状況は・・・君が言った通りだよ」
素っ気ないながらも律儀に返事を返したレクヴィオ。てか、あれ?そこに倒れているのはレイヴェアさんではないですか??
服がびりびりなのにどこも露出してないとは・・・流石だぜ!
レクヴィオの殺気が向けられたのはきっと気のせいだ。そう、ただレクヴィオは珍しく、非常に珍しく取り乱しているから、つい殺気を放っちゃったぜとかだろう。てかそうであってくれ!レクヴィオは怒らせると怖いんだ!目が!
「レイ・・・レイ」
でも、ここまで戸惑うレクヴィオを見た事はない。
いつもきりり(中は兎も角)していて、偉そうで、実力もあって、もてて・・・くそぅ、言ってて虚しいぞ。
兎に角っ。そんな弱さを見せないレクヴィオが、弱さを露わにしている。
それはもう、いつも俺を足蹴にしているやつを、哀れだと思えてしまうほどに・・・。
「あ、あの。そろそろ助太刀とかは・・・」
「いいのですわマクオン。これは、私達にどうにか出来る事ではないでしょうから。貴方は私を守っていればいいのですわ」
「は、はいユリシア様///」
後ろでいちゃついてる奴ー。状況を考えろっ! いや、考えた結果がこれなのか?
溜め息をつくと、背中に背負っていたぼろぼろのアリサが「くぅ」と寝息をたてた。
・・・平和だなー。
壁とかが崩れてなければ、だけど。
ついでに、ユリシア?
いちゃいちゃしながら目を見開かねぇでくれね?その鬼気迫った顔は怖いから。
〜少し前〜
「お?あいつ、お前の従者じゃね?」
「え・・・ま、マクオン!?何故ここに、というかにゃぜここにぃ!?」
「テンパるなテンパるな」
「にゃにぃにょにゅっにゃにゅにょ!?」
「お前が何を言ってるんだよ!?」
「「・・・あれ?伝わった?」」