114話 まったくこの人達は・・・変態ばかりですか。あんたが一番の変人だよ。
ずざざざぁ!
激しい音をたててレクヴィオ様が転がります。
ウリューネ様が受け止めると油断したせいでしょう。
私どもは全く動けませんでした。
「・・・嘘でしょうそれ」
「はて、何の事でしょう?いきなりの事で動けなかったんですよ」
ネルメの半目など気にもとまりませんね。
レクヴィオ様は相変わらずの無愛想な表情で私共を睨みます。
「・・・どうしているんですか母様、父様、兄様。ついでにその他の方々」
流石ですレクヴィオ様。私共使用人は兎も角、王をその他に纏めてしまわれるとは。
「ふ、分かっていたんじゃないのかレク?」
「父様。僕を過大評価し過ぎですよ。そりゃぁ、メシスさんとネルメさんは僕も考えていましたが」
「だそうですよネルメ。信頼されているという事でしょうか」
「・・・むしろ信用されていないからかと」
辛辣ですね、全く。
さて、お戯れもこれくらいに致しませんとね。
「ふぅん?君達がここにいるって事は、僕の部下達はやられちゃったって事かなぁ?通信途絶えちゃってたし」
「・・・今頃、嫌な悪夢でも観賞されているのでしょう」
「なるほどね〜。『悪夢の魔女』様の名も伊達じゃないって事だね〜」
けらけらと笑う少年。
何故か彼の周りだけ異様な空気が流れているようで、不気味に見えます。
まるで、レイヴェア様の様な。あ、隣に居ましたね。すいません。失言でしたね・・・?
「いいんですよメシスさん♪僕は。僕ですから?」
・・・なるほど。レクヴィオ様がいつになく不機嫌なのはこういう事ですか。
「レイ、ちゃん?」
「落ち着けウリューネ。何か魔法が掛かっているんだろう」
「わははは! そういうルハイトも落ち着かんか。殺気を飛ばすんじゃないわ」
王様——ハールトナイト様が豪快に笑われます。つまり、クレイト様の父君で、この国の頂点様なのです。
昔からルハイト様とは友人だそうで、とても仲が良いとか。
ルハイト様曰く、
『わっはははは!あいつのあの性格は天下一品!弱いくせに威張りおって、いつもいつも私の後ろで半泣きなのだ!全く、いつまで経っても女の尻に敷かれる軟弱ものでな!とても面白い奴だ』
との褒めっぷり。
流石で御座いますルハイト様。
「・・・ふむ。お前の執事は途轍もなく失礼だなルハイト」
「いやいや、とても優秀なもんだぞ?みろこの悪人面の黒い笑みを」
「お褒めにお預かり光栄ですルハイト様」
「これだからティナノール家は・・・。親が親なら子も子だし、執事も執事で・・・」
何やらごにゅごにゅと口元を動かしているようです。
「・・・ほんと、ティナノール家ってなんなの」
おや。それを貴方が言いますかレクヴィオ様。
「まぁ、いいや。それで母様?何故あれを助けなければならないのですか?」
「え、ええ、そうね。先ずは説明しないといけないわね」
そこで、愚かにもウリューネ様の声を遮る愚か者が。
「あ、僕が説明するよ〜。ま、簡単なネタばらしってやつだね。ところで義兄さ——「あぁん?」——レクヴィオ君。君は王家の秘密って知ってるかな?」
「興味ない」
「んじゃ教えて上げるよ〜。この国だけの、この国が最強の国と呼ばれる理由ってやつをね」
にやりと笑みを浮かべるエアレズ殿の瞳には狂気ってものを感じますね。
ほら、嫌なタイプですよ。
人の悲鳴が好きだとか、同族を殺すのに愉悦を感じたりだとかの——
ヘンタイ。
「・・・別の意味であんたもだろ」
ぽそりと何かが聞こえましたが、生憎私の耳には届かなかったようです。
「絶対この人のほうが変人で変態だと思うんだよネルメさん」
「・・・同感ですねレクヴィオ様」
「心外ですね。確かにそうかも知れませんが、レイヴェア様に嫌なほどにご執心なレクヴィオ様と、人に悪夢を見せて高笑いするネルメさんにいわれたく無いですね」
「「ごもっとも」」