112話 おうじさまは井の中の蛙ちゃんだって思うんだよな。
「俺がやる」
「お前じゃ役立たずだ」
「お前はヘタレだろう」
「あんたは世間知らずのお坊っちゃま」
「「・・・」」
こ、い、つ・・・。
「・・・ったく、仕方ねーな。んじゃ、いっちょあれで決めるか」
あれか。
ふ、まさか俺に勝てるとか思ってんのか?
レイヴェア直伝のあの技がある限り、俺は負けないというのに。
・・・負けた。
「くそぅ! 何故だ、何故なんだぁ! これさえ使えば勝てると、言っていたじゃないか!」
「・・・誰に教えられたか何となく予想はつくけどよ、誰がそんな古いチョキを教えた訳よ? じゃんけんでそれを出しす奴、まさかここで拝めるとは」
呆れ顔のソラが嫌にむかつく。
だが、まぁいい。
例え先に戦う権利をとられたとはいえ、先にやってしまえばこちらのものなのだから。
「っ! おい!」
「ふっ。卑怯で悪いな! これもレイヴェアの為だ!」
そう。やってしまえばこちらの手柄。
さぁ、さっさと終わらせ——
「あはは。飛んで火にいる夏の虫とはこのことだね。いらっしゃいお、う、じ、さ、ま☆」
「・・・っぐ、あ、れ?」
何でだ?何で俺は、床と密着している?
それにこの痛み・・・攻撃されたのか?
「あーあ。だから言ったのに」
お前は何も言ってないだろうソラ。
俺を止められずに「おい」って言っただけだろうが。威張るな。
てか、え?こいつの攻撃、全然見えなかったぞ・・・?
「馬鹿だね〜。僕、一応ここのNo.1。つまり一番強いんだよ?レイヴェアやレクヴィオ君なら兎も角、平和ぼけした王子様に負けるとは思えないね〜。あ、正直言うと、君よりそこのソラ君の方が強いよ? まぁ、今から戦うからやってみないと分かんないけどね」
一気に言い切ったエアレズはえへへ、と照れくさそうに(いらっときた)にこやかに笑う。
「そぉれ!」
「うわぉ!? かすった!かすったよエアレズとやらぁ!」
「あれれ?おかしいな。飛んだと思ったのに」
「何処がぁ!?」
ソラの悲鳴が轟く。いや、つっこみか。
そして動けない俺。くそ、なんて虚しいんだ。
「喰らいやがれ!【我が力よ・・・ここに灯り・・・奴を葬り去れ】!」
ソラが唱えると、辺りが急に眩しくなった。
まさか、光魔法か?
今まで使える者はいなかった筈だ。レイヴェアさえも。
使えるとしたらそれは勇者。
・・・ソラが勇者?いや、それはないな。うん。あっても困る。
だが、光魔法が凄まじいのは知っている。しかも上級魔法みたいだし。
こんな魔法を喰らって無事な訳が・・・あれ?無い筈だよ、な?あれ?
「ざぁんねん。僕ってば、そういうの効かないんだよねーこれが」
けらけらと無邪気に笑うエアレズ。
それもお構いなしに飛び込んだソラだが・・・呆気なく沈められた。
ソラはそれでも直ぐに飛び去り、また攻撃にうつる。
が、っがが!
ばしぃ!
目に追えない(レイヴェアは見えるらしい)速さで出される拳は、全く動いていないように見えるエアレズに叩き落される。
まるで扱いがハエだ! 敵にもそんな扱いされるとは・・・やはりソラはソラだなっ。
・・・この安堵は凄く可哀想に思えるんだが?
それにしても・・・。
俺は、ソラには勝てなさそうだな。
いや、別にレイヴェアの話じゃないよ?勝つ自信はあるしっ。ただ戦いの話であって。
そ、それに!お、落ち込んでいるわけでもないし!
ただ・・・
何も出来ないんだな、って思ってしまっただけだ。そう、ただそれだけなんだ。
「くす。『闇』が漏れてるよ?王子様」
エアレズがにぃ、と微笑んだ(?)。
「お、見つけた見つけたぜアリサ」
「・・・」
「さって運ぶか」
「・・・変態め」
「・・・ほんともう、許してくれ。ね、だからね?弓をしまおうか」
二人の険悪はまだまだ続く・・・。