35話 貴方とは・・・話が合いません! ためて言うほどの事じゃないのでは?
しゅるしゅるしゅる・・・。
「悪趣味ですわね貴方」
「くっくっく・・・これほど美しいものを悪趣味とは・・・。貴方には一生分からないでしょう、この美しさが」
足に纏わり付こうとするうぞうぞと群がる蛇を蹴飛ばしながら顔を歪めます。
こんなおぞましい状態を美しいと表現する男は・・・歪んでますわね。これはレイヴェアさんとは違う意味でですが。
「おやおや間違っては困ります。私は貴方が美しいと申しているのですよ?」
優しく微笑む男に嫌気がさしますわ。
先程も言った様に私には既に心に決めた方が——こほん。いえいえそれはいいのです。
私が言いたいのは別のこと。
何が嫌って、こんな——
蛇に巻き付けられた状態を美しいと表現することが、ですわ。
にゅるん
「ふにゃぁん!」
いやいやいやー!気持ち悪いですわ気持ち悪いですわー!
あ、スカートの中に入らないで汚らわしいぃぃ!
これはあれですね!えっちってやつですね!でしたっけレイヴェアさん(←教えたやつ)!
「ふふふ・・・お気に召しましたか?私の召還獣は」
え、蛇って獣でしたかしら。
そんな事はどうでもいいのです!
兎に角この蛇は——
「気持ち悪いですわー!! 【凍れ、凍れ、凍れ、凍れ】ぇ!!」
ぴきぴき・・・ぱりぃぃん
ほぅと安堵の息をつき、己の蛇の欠片を閉じ込めた氷をうっとりと眺めます。
「ああ・・・やはりこうやって相手のものを凍らせて砕くのが1番、美しいですわ」
そう、《美》とはこういうものを言うのです。
大切なものが、積み上げたものが、一瞬で儚く散る、
それこそが《美しさ》ですわ。
「なるほど・・・私達はもともと相容れない者同士
というわけですねぇ?」
「《私達》?何をおっしゃっているのです?」
「?」
「貴方の思考回路がおかしいのですわ。現来、《美しい》というのは私のようなものの事を言うのです。
貴方のような異物。存在自体がおかしいのですわ」
「ほぉ——それはそれは・・・では」
すぅ、と息をすい、同じタイミングで吐き出します。
「「異物は排除しなければ」」
そう。それは己の《美しさ》の為に。
くすくす・・・レイヴェアさん。
少し遅くなりますわ。
私の《美》を知らせる必要があるので。
「——ふぅむ。こちらでも始まったようじゃな」
「その様です。どう致します? 援護、しますか?」
「いえ、その必要はありません!」
「おや?貴方がそれを言うとは思いませんでしたよ。貴方なら直ぐに行くと思っていたのですが」
「っ、はい。本来ならそうしていました。ですが、これもユリシア様の、為っ」
「うふふふ。これぞ《愛》ねっ!素晴らしいわ!」
「これこれ。はしゃぐなはしゃぐな」
「えぇ〜だってぇ!」
「母上。落ち着かなければ見つかりますよ?」
「むぅ」
「・・・今連絡が。アリサ様の回収、終わったそうです」
「ほぅ。お疲れ様ですねそれは。それではマクオン殿。ここは頼みましたよ?」
「はい」
彼らはゆっくりとその場から離脱する。きゃいきゃいと敵に見つからない様に騒ぎながら移動する矛盾だらけの人達。
そして——
「・・・これだから出し抜かれるんですよ貴方達は」
その呟きは誰のものだったのか。
ただ、その呟きに気付けた者は誰も居ない。
現在鹿児島なうなうです(笑)