10話 逝くと行く。勿論『行く』が良いに決まってます。
「「まりょくのぼうそう?」」
「ええ。普通は熱を出してしまう事はないはずですが・・・それだけお2人の魔力が大きかったということでしょう」
メシスさんがくすくすと笑いながら面白そうに此方を見ています。
怖いです。僕達は玩具じゃないですよ。
「ですので、その魔力を抑える為に指輪と腕輪を付けさせていただきました」
「なるほど。かってにぼくたちのからだをいじくったのですね。こわいですね、レク」
「さすがはらぐろいぼくたちのしつじさま。ほんとこわいね、レイ」
「フフフ・・・流石利口な方達ですね。そう返す人は初めてですよ私は」
「「・・・」」
多分この人には勝てないような気がする。
こういう何時もニコニコしてて腹黒い人って、本気で怒ると怖いんだろうな~。
見てみたいとは思うけど・・・僕だって命は大事。
「魔力が完全に操れるまで、その指輪と腕輪を離してはいけませんよ? 魔力が暴走すると体が木端微塵に吹き飛んで思い出したくない記憶の1ページになってしまいますから。主に私の」
「「・・・」」
もうやだこの人。
でも面白いからよしとしよう。
ちらりと右手の薬指を見る。
シンプルな蒼の宝石が埋め込まれた指輪。
そしてその腕にも同じような装飾のされた腕輪。
レクは左手にあるようだ。
なら大丈夫。
手を繋ぐのは僕は左手だから邪魔には成らないだろうね。
「・・・ねメシスさん」
「はい何でしょう?」
「まほうってイメージがだいじなんですか?」
「・・・確かに魔法に大切なのはイメージです。ですが、どこでその様な知識を?魔法に関しては誰も言ってないと思いますが?」
「なんとなく」
「そうですか・・・」
即答すれば誤魔化す事が出来た。ま、精霊に聞いたとでも思われるだろうけどね。
実際は何となく残っている前世の記憶から引用したんですけどね。
魔法はイメージだ、って。
さて・・・魔力魔力っと・・・これ、かな?
何やら黒いもやもや・・・でも、思う通りに動く・・・気がする・・・だけ・・・なのかな?
「・・・えい」
「え?」
ボオォォォォォォ
あ、カーテンが燃えちゃった(笑)
「・・・【水】」
ザバァァァァァァ
ああ!僕の炎が撃沈されちゃった!
わあん水のバカァー。
「おおーレイすご! んじゃぼくも~」
・・・ッボオォォォォ
「【水よ】!」
ザバァァァァァァ
「「なにをし――」」
「此方のセリフ・・・ですよねぇ? レイ様、レク様ぁ?」
え、笑顔・・・怖。語尾の延ばしは何ですかっ。恐怖を広げるだけなんで止めてください。
にしても・・・メシスさん、魔法も使えたんですね。やっぱ最強の天才さんでしたか。
「まさか初めての魔法を無詠唱で成功させるとは・・・流石レイ様とレク様です」
あれ? 褒められた?
僕にはメシスさんが良く分からないですよ。
その褒めながらも満面の笑みとか。
どう見ても何か企んでいるか、怒ってますよね?
「レイ様、レク様・・・魔法の特訓のしがいがありそうですね♪」
ああ、なるほど。そういう事ですか。
それって・・・逃げる、ってありですか?
「何を言っているんですか。そんな事、私がみすみすと見逃すとでもお思いですか?」
ふむ。これから地獄に逝く事になりました。
涙を堪えて逝きましょうか。閻魔大王の居る地獄の果てまで・・・。
・・・行く、であって欲しかった。
ささやかな願望は叶うはずもなく・・・(笑)