序
わが甥たちへ
君たちの前にこれから提示される文章が君たちに何らかの意味を持つとしたら、それは単なる小説として楽しんでもらう以上の意味を持ちません。このエッセイとも小説ともいえぬ文章は、確かに君たちの叔父たる私と君たちのお母さんとの関係の一部分を切り取り、それを元に綴られたものではありますが、決してこの文章からお母さんの真の姿を知ろうとは思わないでください。お母さんの真の姿は君たちしか知りえないものです。その意味でこの文章には小説以上の意味はありません。
しかしながら、もしこの文章に少しでもお母さんを思い浮かばせる何かがあったら、その印象を大事にしてほしいと思います。そして、自分を誇らしく思ってください。自分にはこの人の血が流れているのだと。お父さんを思い浮かべても同じです。君たちのお父さんもお母さんもとても強い人です。人生を前向きに捉えることのできる立派な人格者です。生きる力を持った人たちです。君たちはこの二人の間から生まれたくて生まれてきたのであって、決して他の人たちから生まれたかったのではないのです。このことを忘れないでください。
君たちの前には輝かしい未来が開けています。とはいえ時には悲しいこともあるでしょうし自分がみじめ思えてならないこともあるかもしれません。そんな時この文章のことを少しでも思い出してもらえれば、叔父はうれしく思います。
これから綴られる文章を愛する君たちに捧げます。
平成17年12月 叔父記す