水ようかんの詩
掲載日:2026/09/15
「夏の午後、冷やした水羊羹の竹の皮をひらくときの、静けさと儚さを詠んだ詩です。」
竹の皮を静かにひらくと
そこには小さな黒い湖が眠っている
さっきまでの猛暑の残像が
ガラスの器のふちで水滴に変わり
とろりと冷たい影を落とす
餡の優しさと
水の潔さが溶け合う境界線で
さじをすっと差し込めば
固まることと揺れることのあわいに
涼やかな一筋の風が生まれる
舌の上にのせた瞬間
言葉よりも早く消えてゆく冷涼
甘みは風のように吹き抜け
あとに残るのは澄んだ水音だけ
夏の午後の静けさを切って食べる
それは口の中で溶ける
小さくて儚い、夕暮れの詩
この詩の奥に潜む「夏の静寂」と「ひとときの涼」を、物語の余韻として言葉に添えました。
あとがき
夏の陽射しが部屋の奥まで差し込む午後は、時間が少しだけゆっくりと流れる気がします。
冷たい水で冷やされた竹の皮を解くとき、私たちは単に菓子を味わうだけでなく、そこに宿る涼しさや季節の風そのものをいただいているのかもしれません。固まることと揺れることのあわい、そして口に入れた瞬間に消えてゆく儚さ。
この詩が、猛暑の日にふっと肩の力を抜き、ひとくちの冷涼に救われるような、静かな涼風を届けることができたなら幸いです。




