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ep5 嫌がらせ





 気が付けば、私オレリア・マカダミアは、16歳になって居た。




 成人になった私は、何が出来るかと言うと、私有財産の後見人を決めることが出来る。(本来は、当主。)

 ラダリア王国では、基本的に爵位や領地は、女の私が継ぐことが出来ない。


 継げるのは母の持参金と遺品。

 持参金の方は母が亡くなったので、マカダミア侯爵家の物になるだろうけど、遺品である宝飾品は、私が受け継ぐことが出来る。

 母の私室に在った物は、私が借りた屋敷へと移して居るけど、価値のある宝飾品は宝物庫で厳重に保管管理されている。


 父が義母や義妹に横流しさえしていなければ。



 フローラル王国のクロノア公爵家から母へと譲られた名と由緒ある宝飾品は、町屋敷の宝物庫で眠っているハズ。



 私が生れた時、当主だった祖父へ母は、宝飾品の数々を私へ譲る旨の契約書を書いていた。

 兄にはフローラル王国にある温泉の湧いている保養所を母は贈ったそうだ。

 母の7歳の誕生日に母方の祖父に建てて、プレゼントされた物らしい。

 隣国なので行った事はないけれど。


 私は、そっちが欲しかったと、母の乳母から聞かされた時、密かにそう思った。



 無くても別に良いのだけど、母のモノを義母や義妹に奪われるのは腹立たしいので、ちょっとした仕返し。

 当主権限を発動させられたら、時間が掛っても父に奪われるだろうけれど、法務院で手続きをしている為、あのプライドの高い父が、見下して居る私に、譲渡手続きのサインを強いるまでの時間稼ぎ。

 すんなり義母や義妹へと手渡さないゾっと。


 それは、母の物であると、父に一つ一つ確認させようとしているのだ。

 これくらいの嫌がらせは、許して貰いたい。




 そして回帰前と違い、今回は王宮の豪華さや華やかさを義妹のジャンヌにワザとらしく聞かせ、王宮で行儀見習いを募集している話を敢えてしてみたりね。


 ヨハン殿下と同じ年に、ジャンヌはデビュタントを迎えた。エスコートは兄だった。

 そして王宮の大広間で婚約者としてヨハン殿下とファーストダンスを踊る私を見て、ジャンヌの食指が彼に動いたみたいだった。


 そして私が婚約者として王族席で待機する姿も悔しかったみたい。


 すると私の企み通りに父へと頼んで、第三王子宮の女官付き行儀見習いとして、ジャンヌは王宮へと連日出掛けるようになった。


 私としては面倒なので一刻も早く、ヨハン殿下とジャンヌがくっ付いて欲しいのだ。



 前回の義妹のデビュタントの時は、一緒に王宮へ行きたく無くて、体調不良を理由に部屋でストライキをしていた。

 今から思えば、日頃の父なら一喝して、世間体を考え引き摺っても連れ出した筈。恐らく、父と兄は義母と義妹の4人で、家族水入らずでジャンヌの社交デビューを祝いたかったのだろう。その気持ちが分かっていたので、敢えて私も参加してみた。



 侍女たちと相談して、人気の仕立屋に父が嫌う水色のシルクでドレスを作り、母と似た白金の髪を編み込み、品よく真珠と透明な青水晶の髪飾りをあしらってみた。


 ヨハン殿下の緋色の髪や琥珀色の瞳の色など一切使う気がありませんでした。


 前回もそうだけど、今回はより一層、ヨハン殿下との仲を深める気力が湧かなかった為、あしからず。






 そして、私付きの使用人に頼んで、義母と義妹を見張って貰っていると、父が居ない時に兄は彼女たちの部屋へ、夜が更けてちょくちょくお邪魔している様だった。


 今回兄は、第二王子の側近候補を辞して、屋敷で領地経営を自主学習中だとか。

 前回より、兄のポンコツ具合が増しているようだ。

 ああ、勿論、父もね。



 


 回帰前に気付かなかっただけで、実は兄と義母と義妹って、口には出せないヤバイ関係だったのかも。

 その報告を受けた後、私は一気に兄が気持ち悪くなった。

 兄の様に無口な紳士を「むっつり」って呼ぶそうよ。



 義妹のジャンヌが日中居ないので、屋敷内の中庭は、家族ごっこの風景もなく、私はストレスを感じず、また、気兼ねなく外出できるので、色々と遣りたい事をしている。



 父は、義母に対して独占欲の塊のようだが、執事見習いの1人や護衛騎士、従僕を色香で惑わせ、外との繋ぎを付けている様子が、報告されていた。

 不倫の証拠を挙げて離婚させようかと考えてみたけど、父の義母への溺愛ぶりを想うと、無かったことにしそうだと気が付く。逆に義母の不倫を知らせた私を父が逆恨みしそうだ。


 此れは動き時を注意して考えねば。



 しかし義母は、何を遣りたいのだろう。


 外で不倫の噂とか出たら、侯爵夫人としての箔に傷が付くのに。

 だから屋敷内で異性にジャレ付くのか。

 まあ、家の使用人は、外でマカダミア侯爵家の噂話など口にしないだろうけど。




 彼女が主催するお茶会には、高位貴族の御婦人方の参加が無いから、フラストレーションでも溜まって居るのかしら。


 仕方ないわよね。

 私だって、彼女が居る此の町屋敷では、お茶会を催す気になれないもの。


 娘のジャンヌと違って、義母のジョアンナは私を露骨に虐めたりしないけど、じっとりと粘つく視線で此方を見て居るのが、不気味で癇に障る。


 ホント、不気味な人だ。







 商人の娘から伯爵夫人になって、次に侯爵夫人へと成り上がり、巷ではシンデレラストーリーと持て囃されている。

 此処から上に成り上がろうにもラダリア王国では、公爵家は2つ、王家に入るには後ろ盾になる家を持ち、やっと公妾しか手段はないし。しかも王族の子を身籠っても継承権はない。王家からの終生年金位だものね。



 もしかしてジョアンナは、国王陛下の公妾の座を狙っているとか?


 マカダミア侯爵家を後ろ盾にして。

 

 まさかね?






※  ※  ※

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