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ep15 祭の準備





 兄のカロン侯爵から呼び出しがあり、オレ(ドレイク・カロン)は王宮近くに在るカロン侯爵邸へと急いだ。






 お嬢ちゃん(オレリア)からの相談を受けて、オレたち以外で暗部紛いの仕事をしている連中の存在を探ってみた。


 当然オレたちシャロイックの上位組織を持つホウエン公爵家ともう1つあるのがデミル公爵家。こっちは主に出先機関を作っている海外向け。


 後は王家の諜報機関があり、表に出さずに処理したい時、デミル公爵家かホウエン公爵家へ内密で依頼が或る。


 それ以外に成ると王都に昔から或る裏稼業の連中で、オレたちも何とか駆除したいと動いているが、切っても切ってもタコ足状態で、直ぐに次が生えて来る。頭を潰したいのだが、カナーン王家時代からの遺物で難しい。もしかしたら教会関係かもと言う都市伝説が出回っている。


 まあ闇雲に動いても仕方ないので問題の人物ジョアンナをちょいと詳しく探らせてみた。




 ジョアンナは、なかなかヘビーな生い立ちをしていた。


 ジョアンナの父親が北部の港街で薬問屋をしていたのだが、実際はジョアンナに嫁がせたラウル伯爵領と隣領になるワーグナー侯爵領で認可を貰い、幾つかの娼館を如才なく商っていた。どうやらワーグナー侯爵領で開業の認可を貰う時、天使のようだと評判だった6歳の娘ジョアンナを領主であったオズワルド・フォン・ワーグナー侯爵へ売り渡した。


 表向きは、行儀見習いとしてワーグナー侯爵領の別邸に引き取られた。


 何故、表向きなのか。


 それは一部の使用人のみぞ知る話に為るが、オズワルド閣下は少女しか愛せなかったのだ。


 オズワルド閣下が亡くなり、その別邸は養子のエト・ワーグナーに譲られ、其処を退職した従僕の1人を見付けて聞き出した、豪く金のかかった特ダネだった。


 数人の見目麗しい少女たちに閨教育を施し、互いにオズワルド卿の寵を競わせるように躾けていたとか。金と暇と権力のある真正のロリとは恐ろしい。そんなスペシャリストの早期教育を受けて育った彼女たちが、善悪の基準が歪むのは仕方なしかな。

 肉体が成長する10歳~12歳になるとあっさりと少女たちは、娼館に売られたり使用人に下げ渡されたりした。そんな中、ジョアンナは12歳で実家に戻され、ラウル伯爵へとオズワルド卿が紹介し13歳で嫁がせたと言う話だ。

 オズワルド閣下が興味を失った少女の中で、珍しくアフターフォローをしたのがジョアンナだったらしい。


 なんでも養子にして別邸に住まわせていたエト・ワーグナー少年が、ジョアンナを可愛がっていたからだと、別邸に居た少女を妻にした元従僕は話していた。


 嫁ぎ先のラウル伯爵家は、再々婚の上、その親族達が領主館に入り込み主導権争いと財産争いをしていた為、年若いジョアンナは苦労したらしい。おまけに16歳で夫が心臓病で亡くなり、17歳で婚家を僅かな金を渡され、娘と共に追い出された。後見人的な役割のオズワルド卿が亡くなったから、親族が遠慮なくジョアンナ母娘を追い出したとか。



 思わずホロリと来そうな苦労譚。


 ここまでだけの話なら。



 その頃、王都で薬師をしていたエト・ワーグナーが用意していた屋敷に、追い出されたジョアンナ母娘を引き取り暫く面倒をみた。が、一年も経たない内に若くて綺麗なジョアンナの面倒をみたいと言うスケベ心溢れる親切な貴族たちが現れ、平民地区の屋敷から貴族たちが所有する別邸を与えられ、王都ライフをエンジョイし始めた。


 まあ、あの美貌なら王都アムスでも引く手数多だろうなと、実際ジョアンナを身近で見て思った。



 儚げで楚々とした容姿なのに、豊満な胸に折れそうに細い腰、何という我儘バディなんだ。



 見るなって言われても目が釘付けに為っちまう。


 おまけにラダリア王国では美人の条件と言われている滑らかそうで豊かな金髪。大きなアーモンド形の目に神秘的な森の湖面を思わせる碧眼。艶のある桃色の唇は、下唇がふっくらとしていて、男を惑わせる色香を魅せている。


 ジョアンナが、調査対象でなければ、オレはフラフラと吸い寄せられて、口説いていた自信がある。



 夫であるベオルフ・フォン・マカダミア侯爵が、王族が参加する式典やパーティーを病弱と偽って、ジョアンナを欠席させるのも理解が出来た。


 国王陛下や王太子殿下だって、男だものなー。


 下手に気に入られたら面倒事が起きる予感しかない。


 ラダリア現国王陛下は、比較的公平で良い王様であるのは間違いないが、そっち方面の理性は信用していない。つうか信用出来ない位にジョアンナが魅力的な女だって話。紙のように薄い男の理性を信用していないマカダミア侯爵は正しいと思う。


 何となくだがジョアンナが浮気してもマカダミア侯爵は許しそうだしな。



 調査を依頼して来たお嬢ちゃん(オレリア)も何と無くそれは察している様で、浮気の証拠を掴んだくらいで、マカダミア侯爵家から追い出せないと、薄っすらと覚悟はしているようだ。父親のマカダミア侯爵の溺愛ぶりを気弱げに話していた。


 不貞何て最低と考えている嬢ちゃん(ミレイユ)は、「妻の罪なんだから教会に密告しちゃいなさい!」と、肩を落として居るお嬢ちゃん(オレリア)を唆してたが。


 いや待って、嬢ちゃん(ミレイユ)

 オレは、まだ浮気の証拠何て掴んで無いからな。



 ジョアンナは、下級貴族のご婦人方と仲が良いらしく観劇やお茶会に護衛騎たち士や小姓、従僕たちと出歩いている。其処に男の影はない。使用人たちは男だと平民なら言いそうだが、侯爵夫人であるジョアンナならば、標準装備だ。まあ、強いて言えば、外出時に連れ歩くなら小姓でなく侍女だけども。



 そして月に2回訪れている趣味の占いサロンにしていると言うシトロン男爵邸の旧礼拝堂。


 王宮外の宿舎に滞在している各国の外交官たちの内の数人も訪れている。


 もしや旧礼拝堂で我が国の機密情報のやり取りを?と勘繰り、シャロイックの連中を潜入させたら、ダンナと上手く行っていない若い人妻たちと暇を持て余している外交官たちとのハッテン場だった。秘密っちゃあ秘密なんだろうが、何をやってんだかね。占い中には中に入れないので終了後、掃除夫は見た!じゃなく、室内を片付けて「なるほど?」と何をしていたのかを察した。


 まあ、何かの時に使えるかもと、占いサロンの参加者名簿なんかは、せっせと作らせて貰ったけども。



 そう言えば、幼い頃から付き合って居たらしい極上の美人薬師であるエト・ワーグナー卿は、ジョアンナがマカダミア侯爵に嫁いでからは会っていないみたいだ。彼は、裕福な平民が住む区画でこじんまりとした薬局を営んでいた。養子先のオズベルト・フォン・ワーグナー侯爵の伝手で王都の薬師ギルドに入り、正規の薬師ギルド員でもある。


 チラリとエト・ワーグナーの顔を見に行ってみたが、《綺麗なお姉さん》て呼びたくなる中性的な美貌だった。黒縁の伊達眼鏡を掛けてたけどね。


 エトもジョアンナと同じで金髪碧眼。


 ロン毛にしてドレス着せたら神々しいレディに化けれそうだ。


 ジョアンナは美人だが、ちょっと口説こうと勇気を出して恥を捨てれば声を掛けれそうだが、エトの場合は見えない冷気の壁に阻まれて、迂闊に声など掛けられない敷居がバリ高なタイプだ。それに何考えて読めない貴族的な冷たい感じの男だったりする。


 貴族院の家系文書記録を見ると、エトはワーグナー領の唯の領民だった。どっかの落とし種って可能性は無きにしも非ず。


 報告では、当然だが彼はモテているようだ。取り敢えずエトは、ジョアンナの昔の男って枠に置いて於こう。





 オレは、足取り軽く兄のヒルベルト・フォン・カロン侯爵が居る執務室へ入って行った。




 色とりどりの革や布で製本された書籍が、びっしり収められた背の高いキャビネットに囲まれた重厚な机に向かって、義兄は羽根ペンを走らせていた。


 魔石ランプを灯していたが昼なお暗い義兄の執務室。

 義兄から少し離れた事務机で2人の補佐官も黙々と羽根ペンを動かしていた。




 「遅かったな、ドレイク。」



 義兄のカロン侯爵は、机の前に立つオレに気付き、顔を上げて空色の眼をオレに向けた。




 「申し訳ない。ちょっとしくった。それでオレに急用って?」

 「まあ、いい。ああ、本家からの伝達で、ホウエン公爵家の第二令息であるジスラン様が、お前に会いたいそうだ。」

 「えっ?何で?」

 「面接?面談?」

 「いやいや意味が解りませんよ。義兄上。」


 「ふふっ。ああ済まない。ジスラン様が、マカダミア騎士団に入られ、オレリア・マカダミア侯爵令嬢の専属騎士に着かれたそうだ。それで主であるオレリア嬢と直接顔を合わせているドレイクの人柄を見極めたいそうだ。」


 「護衛騎士って‥‥‥‥‥確か未だ16歳で、騎士学校卒業するのは2年後ですよね。余程の事情がないと途中で辞められないし。オレは入学して無いから良く判りませんが。」

 「偶にいるんだよ。5年で終わらせる事を2年や3年で終了させてしまう猛者が。最速で1年半で全ての科を終了させた奴もいたなあ。」

 「はあ、会えと言われれば会いますが。今は星渡り祭と建国祭の準備で多忙な時期なのに。」


 「流石に此の繁忙期に会えとは言わないさ。建国祭が終わってからと言う話だ。それと手が空いて居たらエト・ワーグナーとサンドラ・テエーカ男爵夫人の情報をジスラン様が欲して居たよ。ドレイクが調べていた例のジョアンナ関連で知りたいのだろう。現マカダミア侯爵は、再婚してから一気に華やいだよね。それまで鳴かず飛ばずの地味なポジションの人だったのに。」



 「ん? エト・ワーグナーの簡単な情報ならあるけど。ああ、マカダミア侯爵夫人になる以前の交友関係だから、お嬢ちゃん(オレリア)には報告してなかったな。サンドラ・テエーカ男爵夫人ね。それは知らないなあ。了解。」





 その後、義兄のヒルベルトとオレは、祭りの際にカヴァーするべき場所を確認し合い、次の再会の約束をし、夏の陽射しの中、小舟を並べて祭りの準備を慌しくしている王都の街中へと、速足で紛れ込んだ。




※  ※  ※




〔登場人物めも〕



オレ=ドレイク・カロン(庶子)35歳 栗色短髪・アンバーの眼


ヒルベルト・フォン・カロン侯爵(異母兄) 42歳 明るい栗色長髪・空色の眼



エト・ワーグナー (養子)薬師  金髪碧眼 32歳

オズベルト・フォン・ワーグナー侯爵(故人)藍眼


サンドラ・テエーカ男爵夫人

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