高市の攻防
その時、僕は気づいたんだ…人は頭で考えてるんじゃ無いって…足下にある、切断された自分の頭を放置して…夢遊病者の様に、歩く…
「お兄さん…就職しませんか?」
一般の人々が、道を開ける中…一人のスーツを着た、品のいい女性が声をかけてきた…
(そう言えば…職安の失業保険が、切れたトコだったな…来月の光熱費も…コレってラッキーか…)
口の無い、僕の了承の意志をどうにかして感じ取った彼女に手を引かれ…消毒液の匂いのする、コンクリートの地面の場所へと連れて行かれる…そこで履歴書を記入し、椅子で待っていると…首(実際には、切断面)に刺さる感触が…
(肉体の感覚が、ビリビリ…痺れが…だんだん、フワフワ…ガー…自分のイビキが、遠巻きに聞こえるな…)
ガ…ガルルル…
自分のいななきで、目が覚める…
「新しい、高市君…お仕事よ…」
さっきまで、感覚神経で読み取っていた美人が…はっきりと、実像として目に映る…
(目が…あるのか…)
「あ…鏡見る?」
お姉さんは散髪屋で、後ろ髪の確認に使う様な…微妙なサイズの鏡で、顔を見せてくれる…
「あ…クマ…」
そう…僕の頭は、熊の顔にすげ替えられていた…
その後就職したのは、オーアイエルという非合法組織で、彼等が発信している有料放送を、受信しているのにも関わらず…代金を支払わない団体と、個人を抹殺するのが職務だった…
ピンポーン…ドンドン…
ガチャッ「どちら様…」
無警戒に扉を開く、ジャージ姿の無精ヒゲの男が出てきた…でも、僕の顔みると慌てて扉を閉めようとする…
「く…クマ…」
ギコギコ…ガジャガジャ…
内側に、引く男と…外側に圧力をかける僕…
「お客様…集金です…OIL(大阪インタレスティングライブ)を視聴なさってますよね…」
「し、知らん…そ、そんなの…見てない…」
「いえ…見てなくても…視聴環境があるだけで…有罪です…」
マニュアル通りのセリフを丸暗記し、キバの生えた口から発してみた…
「い…今…持ち合わせが無いんで…後日振込みます…」
言いつつ、男は…恐らくクレーンゲームで手に入れたであろう…小銃で、銃撃してきた…
ズギューン!
頭なら、厚い毛皮で防御出来たかも…だが、胴体に玉を受け…コンクリートに頭をぶつける…胸元から流れる、赤い液体に溺れながら…前日の雨水が溜まった、水たまりに映る…自分の姿を見ると、顔面蒼白になって…目の回りだけが、黒い…
「もうすぐ…中国から、迎えが来るな…」




