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真実

 扉を開いた私はまず一番に勇者の死体を放り投げた。


「なんだ、何が起こっている――勇者がなぜ死んでいる」


 魔王は異形の体を前のめりに、立ち上がった。

 私は魔王の目を見つめる。涙は部屋に入る前に拭った。


「私は……勇者を殺しました。勇者があなたを殺すことにより、教会の……私の信仰が減ることを許せなかったのです」

「契約をしましょう。あなたは少しずつならば、人の町を侵略していただいて構いません」

「代わりに何かを戴こうとは言いません。私は信仰さえ集まればいいのです」


 魔王は勇者の死体を見つめ、唸る。


「なるほどな。面白い、ここまでの愉悦があるとは、仲間の女に殺された勇者、その上その目的は恣意的極まりない」

「いいだろう。契約に乗ってやる。代わりに貴様は情報を流すのだ」


 こんなに上手くいくなんて、勇者の異能が私にも作用しているのかもしれない。

 素晴らしい!素晴らしい!すばら――


「なんて言うわけなかろう。ゴミが」

「あえ?」


 視界が暗転して、人の体が見えた。首より上がない。跳ねられたのか。可哀想に。誰が?


「…………わた、し?」


「貴様、余が勇者に負けるとでも思っていたのか? 余が人の言うことに従うと思ったのか?」


「貴様は神でもなんでもない人だろう。図に乗るな」


 は、はは……ははは!

 上手くいくわけ無かったんだ!なんで、こんな、なんで!


 私はただ、みんなのために頑張って、認められたくて、神を信じて……私は神じゃないのに!いつから、おかしくなった!


「あ………………」


 神に会った時か。





 死んだ後ってのはこんな感覚なんだな。結局、メディも死んだみたいだし、一体なんだったんだろうな。これは。


 ……なんだ?光ってる。あれは……


 魂のまま全てを見届けた俺は、頭上に黒い穴を見つけた。するすると、吸い込まれるように入ると、白いぼやけた人型がいた。


「神……か」


 そう、俺が遠い昔夢で見た神だ。

 メディのあの中身を見抜けなかったなんて、神も間違えるんだな。勇者がいなくなってどうすんだかな。


「あー、死んだ死んだ。どうしよ」

「お遊びが過ぎたなー。んー、とりあえず魔王も適当に殺して……次の勇者が出るタイミング調整しなきゃー」


 存在しない体が固まった。俺の実体のない目が見開かれた。


「……おや? おやおや? 君は……! 勇者……なんだっけ?」

「魂が残った挙句、輪廻から外れてこっちに来るなんて!」


 白い人型が一瞬にして俺に近づく。顔はないが、あればどんな表情かは簡単にわかった。


 とびきりの笑顔だ。


「いやー、『幸運』が『信仰』と干渉したからかな! いいねー。君は素晴らしい幸運だよ! 私を見ることが出来たんだから!」


 何言ってんだ!ふざけるな!

 そう怒りをぶつけたいのに、今の俺には口がない。


「あー、だけどごめんね、もう次の準備しないと、神託とか、キャラ作るの難しいんだから」

「あ、ラッキーな君! 君にも、繰り返すこの戦いを見ることを許可してあげよう!」

 

 拒否することはできない。でも、神に出会って、そのいと尊き慈悲に触れたのだ。これ以上ない幸運だろう――





 この世には、どうにもならないことがある。


 理不尽など、全て気まぐれで、避けることは叶わない。


 運命はいつも、あなたを見ている。

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