表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

信仰

 城の中の魔物を薙ぎ倒し、俺たちは魔王のいる間にたどり着いた。


『やっと、やっとですね……!』

「ああ、勝つぞ……!」


 メディの言葉に呼応して、心を昂らせ、覚悟を決めた。


 そして、玉座の扉を開く。その時が来る。





























 「……あ、え?」


 はずだったんだよ。なぁ、なんでなんだ?


 俺は後ろから突き刺されたナイフによって心臓を貫かれていた。

 体が冷え、熱が零れていく。

 ここで、俺は死んだんだ。走馬灯が崩れ、現実に引き戻される。


 誰がやったか?城の中の魔物は全部殺した。魔王はこの先だ。


 じゃあ1人しかいないだろ?


「ああ、やっと、やっとこの時がきた……!」


「メ、ディ……?」


 メディだよ。なぁ、なんで殺したんだ?

 もう言葉を出す余裕もない。死が近いと耳が遠くなっていくんだっけか、聞いたところで何も分からないか。


 いや、そんな事じゃない。なんで、俺たちは魔王を倒すために頑張ってきたのに、なんで殺したんだ。嘘だったのか?今までのはなんだったんだよ。なぁ、おい。答えろよ。聞こえなくても声に出せ。納得出来るわけねぇよ。なぁ!


 ……今際の際、耳元に声がそっと、一言。


「貴方が魔王を倒したら、今度は貴方が信仰されてしまうでしょう?」





 主は、私に力を与えてくださった。幼い頃から、孤児として生きてきた私だったけど、私を拾った神父様が、神を信じれば救いはあるというから、私はひたすらに祈った。

 そうしたら、夢に主が現れた。


 授かった力はふたつ。


 ひとつは「回復」

 この世界で誰も成し遂げることがなかった回復魔法、それをこの異能が可能にした。私が幼い頃から信心深く平和を望んでいたからだと、主は仰っていた。


 もうひとつは「信仰」

 最初はよく分からなかったけど、気づいた時は驚いた。私が善行を積み、人に感謝される度、回復や、私自身の身体能力、周りへ与える精神的影響が大きくなっていた。

 私が信仰を集める度、私は強くなった。


 歳を重ね、私自身が信仰を集めるにつれ、人に崇められることが快感になった。みんなが私を上に見る。素晴らしい感覚だった。昔の勇者様も、こんな気分だったのだろうかと思った。


 そんな時、ある教会で神託がくだった。勇者の出現だ。


 勇者……もし、その勇者が魔王を倒したらどうなる?今の教会、私への信仰は、勇者信仰へと移るのではないのか?


「それはだめ」


 教会の、私の立場が揺らいでしまう。そんなことは許されない。実際、前回勇者が魔王を討伐した時似たようなことが起こったらしい。


 では、どうすれば私への信仰が揺らがないのか?


 ころしてしまえばいい。


 そこからの行動は早かった。でも、すぐに計画を実行できなかった。何をしようとも勇者を殺せない。

 彼の「幸運」が、私の「信仰」を上回るほどに強い異能だった。


 私がこれまでに集めた信仰は、町ひとつ程度だった。それでは足りないのか。あるいは、幸運には勝てないのか。


 だからひとまず積極的に人助けをして信仰を集めつつ、彼の能力をずっと観察した。日に日に幸運は強くなっていたが、私の信仰が高まるにつれ、私が引き起こす出来事への幸運が働きにくくなっていることに気づいた。木の枝を踏んでみたら魔物にしっかりバレたし、うっかり熱い水をこぼしてみたら見事に被ってくれた。


 何回か試して、私が彼に影響を与えられることを確信した。


 実は、魔王と戦っている最中に裏切って殺すつもりだったけど、

扉の前でやっと殺せると思うと、あまりにも嬉しくて舞い上がって、殺してしまった。


 仕方ないから、魔王にこの死体を見せつけて、人類との争いを続けるように契約を持ちかけてみようと考えた。


「あ、れ?」


 なぜか涙が出た。でも、そんなことはどうでもいい。


 私は扉を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ