ある村
この日はとある村に来ていた。近隣の魔物が魔王の台頭により活性化した結果、凶暴化し、手に負えなくなっているとの事だった。
村には傷を負った男が何人もいた。メディは男たちに彼女の異能を使った。神の教えを説き、傷を癒す姿を見て、神の使いだと言う村人もいた。
――彼女の異能は「回復」。教会でも一定以上の信仰心を持っていると異能を授かるとの事だった。他者を癒すその力は魔法を持ってしてもなし得なかった凄いものだ。
なら、教会が魔王を倒せばいいんじゃ?そう考えたこともあったが、神託がくだっている以上、俺に選択肢は無い。
俺たちは魔物がいるとかいう森へと調査に出た。
そっからは、驚くほどスムーズにことが進んだ。ほんと驚いた。
調査で森を見に行くと、まず問題の魔物がいた。ブラックハウンドと呼ばれる犬みたいな魔物だ。
額の角が肥大化して、血走った目と涎を垂らした口元がその獰猛さと、凶暴化という真実をこれでもかと見せつけてきた。
嗅覚が優れているとの話だったが、ちょうど狩りを終えたタイミングだったようだった。血の匂いによって、俺たちはバレずにすんだんだ。
そして、そのままあっさりと巣を見つけることが出来た。それで今日のところは帰ろうかと思った時、メディが枝を踏んじまった。
その音に気づいたブラックハウンドが囲んできた時はさすがに心臓が持たなかった。
だけど、そいつらは全員俺たちを殺すことなく勝手に死んでった。パタパタと、気づけば全部の個体が倒れていた。
何が起きたか分かんなかったけど、メディの手を引いて村に帰った。
次の日、魔物たちの死体を見ると、異常な程に腐ってた。明らかにおかしいけど、村の人にどう説明しようかと考えていたら、メディが巣を確認しようといいだした。
確かに全滅は確認してないし、俺たちは巣があった方へと向かった。
――中には魔物の死骸があった。幼体と見られるものも腐り果てていた。
メディがそんな中で気持ち悪そうに顔を歪めつつ、ある別の魔物の死体を見つけた。
それは新種の魔物だった。だが、特徴を見るに、毒性を持つ魔物が大幅な突然変異を遂げたもののようだった。前日にブラックハウンドが食べていた魔物だった。
新種の魔物の危険性に気付かずに、ブラックハウンドは集団で毒にかかったのだ。
これもたぶん「幸運」の力なのだろう。どういう原理かはいまいちハッキリしないが、予想以上の力だ。ただ、俺たちが討伐した訳ではないし、新種の魔物がいてそれを食って全滅してましたって言っても信じてもらえるかは微妙だ。
すると、メディがこう言った。
『私たちが倒したことにしましょう。跡を見る限り、この辺りのブラックハウンドはもういないですし』
「でもさ、そういう嘘ってついていいのか? 神官じゃないのか?」
『いいんですよ。これは人々を安心させるため……主もきっと赦してくださいます』
まぁ、神官本人がそう言うならと、俺たちが倒したことにした。
村人たちは大喜びで、感謝の宴まで開いてくれた。メディにいたっては、傷を治された人々からさらに崇められてた。
ちょっと罪悪感もあったけど、みんなが不安にならないためならと、そのまま俺たちは旅を続けた。




