写真の中の女
これは数年前の出来事です。
ある晩、SNSを見ていた俺はふと一枚の心霊写真に目を奪われました。
古びた校舎の廊下にぼんやりと佇む女性の姿――その背景に見覚えがあったのです。
「これ……俺の母校じゃないか?」
忘れようにも忘れられない、朽ちかけた木製の廊下と曇ったガラス窓。
思い出とともに蘇るあの頃の景色。
まさか心霊写真で自分の母校がバズってるなんて...と思いつつ
自分も興味本位でその写真を撮りたいという衝動に駆られ、大学時代の彼女・沙耶に連絡を取りました。
その時の俺は母校に行き、もし心霊写真が撮れれば自分の投稿もバズるかも。
という軽い気持ちでした。
「今夜、俺の母校に行かない?心霊写真撮れるか検証!笑」
俺の提案に驚きつつも興味を示した沙耶と深夜1時に学校近くのコンビニで待ち合わせ。
そして深夜1時前、合流した俺たちは学生時代の思い出話をしながら笑い合い学校に向かいました。
無事に校舎前に到着しいざ中に入ろうとすると思ったより厳重で侵入できない。
フェンスも高く、鍵も閉まっていて何も出来ることがない。
(つまんな〜....)
そう思い仕方なく帰ろうと学校に背を向けたそのとき――
沙耶がぴたりと足を止めたのです。
まるで何かに引かれるように。
「……おい、ふざけるなよ笑 帰るぞ〜」
しばらく待つが彼女からの反応はない。
「おーい!そういうのいいって笑 まじで笑」
それでも無視して動かない彼女の肩を俺は軽く叩きました。
――その瞬間、ゾクリと背筋に冷気が走りました。
そこにいたのは沙耶ではないのです。
目の前にいるのは見たこともない白いワンピースの女。
顔が……見えない。
輪郭だけが滲んで、目や口すら認識できない“誰か”。
「……っ!」
直感的に早く逃げなきゃと思った俺はとにかく全速力で走り明かりのある方へ向かいました。
息が切れるほど走ってようやく明かりのある場所へたどり着いた時
一緒に来たはずの彼女を置いてきてしまった事に気が付き震える手でスマホを取り出した。
画面には沙耶からの着信が7件。
「…… 焦って置いてきてしまったからだ...」
そう思い慌ててかけ直すと電話越しの彼女が怒鳴った。
「ねぇ、何してるの!?ずっと待ってるんだけど!」
「ごめん、すぐ学校に戻る」
「え?学校?待ち合わせ場所でしょ?1時に来たのに全然来ないし電話も取らないしさー」
そう
――彼女は待ち合わせ場所に一度も来ていなかったのです。
じゃあ……さっき一緒に歩いていた“沙耶”は誰だった?
一気に血の気が引く感覚。
確かに俺は沙耶と笑って話していた。
歩いて一緒に学校まで来たはず。
あのとき隣にいたのは誰だったのか…
考えれば考えるほど恐ろしくてたまりませんでした。
た。
結局その後に沙耶と合流し今起きた出来事を全て話しました。
目的だった心霊写真こそ撮れなかったものの
俺にとっては人生で1番怖かった出来事です。