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敵の旗でバーベキューしてやんよ!!

 旗や立てかけていた柱が薙ぎ倒された。既に事切れて久しい亡骸の上に重なる。官軍が落とした陣地から燃える物を集めていく。


 蒼天已死 黄天當立

 歳在甲子 天下大吉


 そう書かれた旗で火種を広げ武器に塗る油を伝い全てが燃えていく。その脇では集められた肉が幾つもの大きな鼎で煮込まれていた。


 粟や麦が入っており塩を加えた肉粥である。


「いや〜久々の肉うめぇ〜」

「そうだな食え食え子昌。次何時食えるか分かったモンじゃねぇ。ガキは食って寝るのが仕事よ。しっかし肉があるなんて意外と飯はあんのかね? 左将軍の想定がズレてると拙いぞ。根底が崩れちまう」

「いや鄒校尉、たぶんですが。コレ残してた古い肉まで持って来たんだと思いますよ。料理する時に切るじゃ無くて削るくらい硬かったですから。最初は焼こうと思ったんですが煮込まないと食えないくらいでしたし。まぁ士気の為でしょうね」

「……成る程なぁ」

「と言うか肉が多過ぎる気がします」

「……敵は軍馬に手を付けてるのか?」

「どっちかって言うとその一歩手前かと。城内の事も考えれば、まぁ或いは。馬は食いますからね。少なくとも此の戦で減らすつもりでしょう。此処は干し草と豆も多いですから」

「そうだな」


 人と馬が腹がはち切れる程食べて煙を高々登るのを眺めていた。ただ既に騎馬のみが残り牛や歩兵は居らず逃げる準備が出来ている。


 そこへ数騎の騎馬が来た。彼等は馬上から降り拱手する。校尉鄒晴の前に出たのは劉備の弟だ。


「劉亮、只今戻りました。敵の士気が酷く下がっています。撤退する兵も見えました。それも津波の様な勢いで」

「それは離散か?」

「ええ、此処の煙が見えたのでしょう」

「成る程な。なら中郎将殿の援護に行くぞ! 張梁を討ちに行く!!」


 兵達が騎馬に乗る。校尉鄒晴は兵達を見た。腹がパンパン膨れてる。全員、自分を含め。


「ゆっくりな!!」


 腹ごなしは必要である。


 〓盧繁〓


 いかん。食い過ぎた。ウップ。ガチで距離あってよかったわ。こんな状況で戦ったら超吐くもん。馬も含めて移動すりゃ腹ごなしになるわ。


「有難うな月驥、星驥。もうちょい頼むわ」


 月驥の立髪を撫でながら星驥を見れば二匹が嘶く。コイツらマジで有り得んくらい可愛いわ。他の馬の三倍は利口だし良く走るしよ。


 月毛の毛並みはほぼ金。そんな馬いる? って思うけど御利口だから良い。三日月と五芒星みたいな白い模様がある。可愛いの何の。


「クソほど良い馬で御ゼェましやがり、ます、まう、な?」


 ねぇコミュ障過ぎるって。テンパり過ぎだろいくら何でも。

 こんなの見るのヤぁダよ俺。勝手なモンな自覚はあるけどアンタのイメージ剛勇だぞ。いや身分の低い相手に傲慢だってマイナスイメージもあるにぁ在るけどさ。どっちかって〜と良いイメージのが強いのに。あの、本当チラチラ見てこないで欲しい? 

 マジ恥ずかしがってる子供しか似合わんて。筋肉モリモリ男がしたらアカン。


「すいません何て? いや月驥と星驥を褒めて頂いたのは分かるんですが。普段通りの喋り方で構いませんよ益徳殿」

「ああ、すまねぇです。その、どうも綺麗な喋り方は苦手なもんで、俺ぁ……」


 モジモジすんな!! コミュ障レベル100かッ!! 見とうなかったこんな張飛!!


「いや、俺のが年下ですし。そんな気を使わずとも。何か聞きたい事でもあるんですか?」


 張飛益徳が言いにくそうに頬を掻く。


「その、盧先生の任子って空きはねぇかな? 大兄を郎に推挙してくれねぇかと思ってよ。随分と活躍もしてるし何とかならねぇかな」


 こいつマジか。


「たぶん孝廉か辟召と間違えてますよ。確かに中郎将は任子の特権がありますが何方の時も三年を超えてないので父上は条件を満たしてません。何より兄弟や子に対してのものです」

「そうだったのか? でも先生のとこの長男は従軍してたんだろ?」

「それは微召ですね。建前上は皇帝の推挙になります。実態としては三公の推挙ですが。

 まぁ兵力が無かったんで従軍経験のある兄上を確保したんでしょう。盧江で勝手に南夷討伐に従軍して父上に怒られたのが朝廷に伝わってたみたいで。まぁ年齢までは伝わってなくて多少問題になりましたが。

 確か現在の司徒袁次陽様の助言です。そもそも父上は免職されてますから」

「あ……」


 すごいな。絵に描いたようなって感じだ。拙いって顔。


「構いませんよ。それより此方の黄巾が如何だったかを教えて頂きたい。敵兵の様子と、そうですね。特に俺がいなくなってからの戦の推移を」

「え、あ、おう。そうだな。敵は飢えてるって感じじゃあ無かった。まぁ俺達が相手してたのは城の外に出てる剛気な連中で抵抗が頑強だったがな。だが大将みたいなのを斬ると直ぐに降伏するんで一番立派な格好のヤツを率先して殺してやった。

 偶にだが馬に乗ってるのが居ると分かりやすくてな。そういう意味でも当たりだったが何より馬が鹵獲出来たのは美味かった。駄馬だが荷運びに使えたし余裕が無けりゃあ売っぱらえたからな。ありゃあ良い稼ぎになったもんよ。

 だが、そう言った連中が途中からえらく増えたんだ。見つけても逃げやがるんで如何しようも無くなって最後は兵糧庫を焼かれちまった。それで兵を下げざる終えなくなっちまったんだ」

「城の外に居たのなら敵の遊撃ですね。城兵よりは飯が食えそうだ。ただ遊撃が多かったなら思った以上に兵糧が少ないかも。馬や兵を外に出せる」


 これヤバくね? 敵の撤退、いや離散の流れが場合によっちゃエグい勢いにならんか? 


 外に出てるって事は後がない事を黄巾の上層部は隠してたんだろうけど俺らが兵糧焼いちゃったし。


 背水の覚悟で戦うならまだしも、下手すっと敵の雪崩に巻き込まれる?


「……少し鄒校尉の所へ行ってきます」

「あ、おう。気を付けてな」

「失礼します。行くぞ月驥、星驥。ウップ、腹くるし……ゆっくりな」


 懸念を話したら鄒校尉はメッチャ嫌そうな顔をした。


「有り得るな。手柄取り放題と言ゃ聞こえは良いが危険過ぎる。やり過ぎたか」

「申し訳ありません」

「いや気にすんな。あの状況で分かる事じゃねぇ。

 さて、こうなると迂回して本体と合流したほうが良いかも知れんな。逃げるのに必死なら正面に立たなきゃ態々襲われんだろ。それより敵が窮鼠になって本体に噛み付いてんなら手助けがいる。

 さっさと急いだ方が良いな」

「では玄徳殿に伝えて参ります」

「頼んだ」

「は、失礼致します」


 皇甫将軍の駐屯してる陣営まで急ぐ。時折だが黄巾賊らしき連中が見えた。向こうはコッチの様子を伺うばかりでコッチも構う暇がない。それは進めば進む程に黄色い頭巾と一緒に増えていった。農機具持ってるアレの何処が兵だってんだ。


「……見えた」


 更に進んだところで髭の人が言った。クッソ流石に身長が足りん。


 ……うぁ。


 黄色い濁流が広宗に向けて雪崩れ込んでやがる。

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