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OHANASI

「あー……ダルぅ……」


 盧繁が死んだ様な目をして竹簡を見て著名して判を押す。束の数を見れば易くキャンプファイヤーが出来そうだった。絶対ダメだが燃やしてくれないかとさえ思う。

 それらを済ませて放り投げるように最後の一つを束の上へ。そしてずらりと並ぶ人々を見て。


「元皓殿、兵戸に名を記した家で軍役によって出た孤児達が居た場合は空いてる屋敷に集めて世話を。読み書きと算術に軽い運動が出来るようにしてやって下さい。あと飯はしっかりやれるように配慮を。そこに勤める者が着服などをした暁には三族誅滅で。

 民への乱暴狼藉が起きた場合は即座に俺の元へ通達をお願いします。また鄴の民から不満だの何だのがあれば直ぐに通達を」

「承りました」

「沮殿。捕虜と罪人を兵達に扱わせて城壁の建築を急いでください。

 それと離れた地に烏桓鮮卑匈奴の宿泊地の選定も。これは牛馬など家畜の事も勘案してください。結構臭うし結構煩いんで。

 それと冀州の各地への伝令もお願いします。朝廷に服すか死ぬか選べって」

「は」

「鮮于従事。幽州兵や異民族の乱暴狼藉は俺が直々にシメます。そう伝えて下さい」

「は、はは!!」

「張中郎将は降伏した兵をよく纏めておいて下さい。西へ逃げた袁紹と戦えとは言いませんから」

「確と」

「飛燕さんも黒山の統制をお願いしますね。優秀に居た時みたいに開墾してて貰えば良いんで」

「おう」


 一通り指示を終えると盧繁は脱力し。


「じゃあ、何かあれば聞きます。報告とか無いですか?」

「田豊申し上げます」

「何でしょうか元皓殿」

「子昌様は此の後は如何致すお積もりでしょうか。幽州冀州を得てその先をお聞かせ願います」


 盧繁は片眉をあげて訝しんだ。別に最初からやる事は一貫してる。


「長安行って陛下の膝下で暴れてるアホ二人をブン殴って涼州の王允残党と益州の逆賊と徐州の呂布をブチ殺します」

「天下を取られる気は無いのですか」


 田豊の言葉に盧繁はポカンとした。


「要りませんよンなモン。冀州と幽州だけで竹簡に溺れそうになってんのに。てか現状で天下とかバカしか欲しがらないでしょ」


 群臣は絶句した。


「まぁ軽い軍権くらいは欲しいですが領地は頂いてるんで。陛下の補佐と他の方の仲裁でもやりながらのんびりしますよ。てゆーかサッサと長安に行って結婚したいんですよね」


 そう呆気らかんと呆気に取られた者達に言い放って。


「他には? 無いかな。じゃあ失礼します」


 そう言って退室した。其れを首だけ動かして追った群臣達はそのまま愕然と半日近く佇む事となる。その絵面ほぼ兵馬俑。

 全員が口をアングリさせて冗談の様な光景な兵馬俑だった。


 〓盧繁〓


「ああ、もう仕事の刻限か……」

「「「行ってらっしゃいませ」」」

「はい。それじゃあ何かあったら直ぐに連絡を。行ってきます」


 嫁さん達も体調的には無理してないっぽいけど健気だから気にしないとなぁ。個人的には辛いなら辛いと言ってくれた方が助かるんだけど。何せ向こうもコッチを気遣っての事だから言い難い。


 あ、いや家の事は家で。仕事は仕事。切り替えねぇとな。


 お、待ちに待った報告書。


 あぁ……ね。


「袁紹の行方は青州か。碌に兵もねぇし放置だな。後で殺す」


 よく逃げたな。まぁ兵を降伏させる事に重点を置いたししゃーない。人材大事大事。


 戸籍整理も進んでるな。開墾はやって余れば売れば良いし。丁度異民族の住む場所として休耕地とか解放するか。家畜の糞尿で地力が戻るだろ。

 建築は兵でも送って手伝わせるしかねぇな。版築なら燃料になる材木の消費も抑えられるだろ。

 商いは異民族にやらせとけば回るな。てか規模が大きくなりすぎるから気を付けよ。


「後は城下の空気感が知りてぇな。あ、軍の振り分けもしとかねぇとだ」


 沮殿と張中郎将、高将軍で袁紹の残党を纏めさせて鮮于従事に劉虞軍の兵。飛燕さんに黒山軍。閻司馬に異民族は任せとくとして。

 まぁ人が足らねぇよな。白馬義従は麴将軍みたいのがいねぇから俺が運用してるし。そういや田国譲ってのが居たな。


 純粋な戦力だと袁紹軍の残党が一万五千、劉虞軍が一万、公孫瓚軍が三千、黒山賊が一万七千から二万、異民族が一万くらいか。

 元賊が一番戦力あるって何。バカじゃねーのコレ。いや装備は一番貧弱だけどさ。


 ……鎧はともかく武器は何とかしねぇとな。てか改めて高ぇよ鉄。しゃーねーけど。万を超える人間を武装させる金額イカれてんだろマジで。


「……異民族の人に害獣狩ってもらって革鎧でも。いや水がヤバいか」


 面倒くせぇな。と言うか急がないと拙いし準備してる時間がねぇよ。それとか。


「子昌様。兗州より使者が」

「やっとか!! 早く連れて来て」


 待ってたぜェ!! 此の瞬間をよォ!!


「使者は誰?」

「荀文若と」

「……へぇ。直ぐに此処へ」


 董殿を殺そうとした荀攸の一族か。表情をださねぇ様に気を付けよ。


「お初目にかかります。曹東郡太守の臣下にして司馬の真似事を任されております。荀彧、文若に御座います」

「アホ供の所為で幽州と冀州を治める事になっちゃった盧繁、子昌です。どうぞ宜しく」


 見てくれは良いな。まぁ此の時代は見た目の重要度がクソ高いけど。さて。


「曹殿は御壮健な様ですね。何でも呂布を徐州に叩き出したとか。軍略を御教授頂いた者として身の引き締まる思いです」

「何の。半年足らずで彼の公孫瓚を捕らえ逆賊袁紹を討ち果たした貴方には及びません。孟徳様は感嘆仕切りで御座いました」

「何と、師の顔に泥を塗らずに済みました。さて、本題です」


 何、何で覚悟決めてんの?


「俺はこれから長安へ向かいます。ですので曹殿には不戦を約束して頂きたい。

 袁紹はもう如何とでもなりますし貴方方が牙を剥いてこないなら俺は陛下の元へ行ける。父上が立て直した朝廷が荒れているのはハッキリ言って不愉快ですからね。

 あ、後は呂布を討ちその家族を無事に寄越してくれたのならこれ以上はありませんね」

「ふむ……。難しい話では御座いません。御座いませんが」


 ふーん……。何を言う気やら。


「……ですが孟徳様と袁紹は友でありました。世間体と言うものが御座います」

「逆賊と友だった過去から朝敵に利する行為を行うと。分かりました」

「い?! いえ、決してその様な。しかし」

「……何かをせびるのは止めておいた方がいいですよ。蝗の話は聞いていますが青州兵に食わせるほどの食い物は無いです。此方としては別に逆賊の家臣として血祭りに上げるのでも最悪は構わない。

 曹殿の軍略。惜しいとは思いますがね。養父の仇討にもなりますから」


 如何した軍師荀文若。コッチはもう覚悟ガンギマリだぞコラ。何せ早よ長安戻らんといけんのじゃい。

 厳密に言うと嫁さんとか高先生とか白波とかアレやコレやがあるから早めに。


「ハァ……。敵いませんね。では、懇願致します。僅かばかりでも兵糧を融通して頂けませんか。徐州から得た食料も無限では無い。

 蝗が来て呂布と戦った。だから青州兵に食わせる物は無いのです。如何か師と呼ぶのであれば」

「対価は?」

「呂布の家族の確保を努力いたします」

「努力ですか」

「……必ずや」

「それで良いでしょう。

 噂通り三十万なら送れる兵糧は現状で一月分程でしょうか。先ず半分でもう半分は呂布の家族と引き換えです。

 良いですね?」

「御礼申し上げる」

「いえ、今回は良い話し合いが出来ました。見送りましょう」

「これは御丁寧に」


 あーやっと長安だよ。バカが。

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