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いや、そうはならんやろ

 三年喪に服す。それは実際のところ二十七ヶ月の期間だ。これは鄭玄の学説に依る物である。それ以前は二十五ヶ月だった。盧繁は鄭玄が父の学友だった事から二十七ヶ月を過ごし。


「取り敢えず食物取ってきます」


 酒と肉を避ければ穀物は食える。が、ここはクソ寒い幽州。食料の生産力は高が知れる。


 三人の嫁さんが頭を下げるに合わせて盧繁は月驥と星驥とその子である日驥を連れて飛び出した。弓と槍を束にして手斧を吊し大斧を片手に原野を疾駆していく。自分もそうだが付き合ってくれた妻達にも美味いメシを食べさせる為に。


 雅な都の少女だった実質妻たちは今では装飾の艶やかな絹衣ではなくモコモコの毛皮を纏うようになっており分かりにくいが細くなってしまった。


「ミツケタァ……」


 大きな丸が二つと釣り上がる弧が盧繁の黒く染まった顔に浮かぶ。顔の先の薮の中には豆粒のような獲物。何方が獣か分からない。


 盧繁が、スと槍を抜く。天へと手を伸ばし対になるように槍を握った手も伸ばし相葉の腹を軽く足で叩く。


 月驥が走り全身を用いて、投擲。


 ドパァンッと音。


 次を抜く。


 ドパァンッと音。


 次を抜く。


 ドパァンッと音。


 次を抜く。


 ドパァンッと音。


 次を抜く。


 ドパァンッと音。


 次を抜く。


 ドパァンッと音。


 六発の槍は鹿の群れへ的確に降り注いだ。鹿の頭を地面に串刺しにして地面に垂直。老いも若いも全て脳天を貫かれていた。


「ゼンブクウ。デモ足ラナイ」


 盧繁は即座に斧で首を落とし獲物を川に叩き込む。更に弓と槍を用いて周辺を彷徨い琢郡の害獣被害は無くなった。盧繁は山の様な獲物を引き屋敷に帰る。

 猪に用意されていた熱湯を獲物にかけ火の中に放り込む。力ままに皮を剥がし油を取り腑の中身は捨てて洗っていく。若い肉はブツ切りに歳をとった肉はミンチに。

 竹に腸を被せてミンチ肉を突っ込み押し出していき一定の長さで一捻り。腸詰を燻製にしてブツ切り肉は串に刺して焼いていく。


 腸詰は焼いて茹でる。串焼きは半分に塩と香草を塗す。もう半分は羹に雑にブチ込んで煮込む。一方で赤身肉を吊るして醬と酒を漬け込む。ミンチ肉に卵と小麦を混ぜて焼く。

 簡単に言えば鹿と猪のソーセージとハンバーグに肉入りの羹と完成させる。


 言え人には小麦を粉にし塩と水を加えてナンを想起する様な胡餅を作らせ、盧繁は用意しておいた酵母と油などを加えた記事を回して伸ばす。醬を塗り用意した肉をそれぞれ乗せて酥を乗せ釜に入れて焼く中華風ピザ。


 後は全部大量の羹か粥に


「できた……」


 百人は食べられるだろう量。盧繁と盧毓、三人の妻。喪に服した物と序でに家人の分。

 その日は盧家から食器の音以外が響く事はなかった。


「……さて」


 盧繁は改めて家族会議をする。


「先ず幽州の状況ですが襄賁候が兵を起こした公孫瓚に殺されて二年になる。襄賁候も襄賁候だが殺すまでしてしまった公孫瓚も公孫瓚だ。そして洛陽に帰るにも取り敢えず幽州を如何にかする必要がある」


 家族が頷く。


「それと王宏と呂布の首は取ります」


 呂綺さえも頷く。忠孝並び立たず。そう随分と男前な発言をした意思は固い。

 まぁ未だ盧繁を正面から見れずに赤く染めた顔を逸らしているが。


「さて、洛陽に帰る為に頑張るとしましょう」


 盧繁が動き出した。


 〓袁紹〓


「麴義が勝ったか!!」


 足元からガタッと音がした。椅子を蹴飛ばしてしまったか? ああ構わん!!


「鮑丘にて公孫瓚軍を撃破!! 敵の損害は二万に登ります!!」

「おお……!! あの公孫瓚の軍を!!」

「公孫瓚は這々の体で易京へ撤退!! 」


 む、拙いな。そうなると公孫瓚を討つのは不可能か。敗北して堅牢な城中に籠ったのなら易々とは出てはこないだろう。


 決着は付かずか。


「そうか、御苦労。兵糧を送らせる。先行して伝えてくれ」

「はは! 失礼致します!」


 さて。篭るなら外から削るか。麴義を置いておけば万が一にも外には出んだろう。幸い襄賁候を殺した事で公孫瓚の評判は悪い。易い事だろう。


「本初殿」

「どうしたね田先生」

「即座に離間計の仕上げを推し進めたく思います。公孫瓚は宗族を殺した事で名士の忌み嫌う所となりましたが将兵の信望は未だ厚い。そこで麴将軍に物資を送り適当な麾下の将軍を撃滅すべきと心得ます」

「……ふむ」


 成る程、なぁ。


「公孫瓚に再出撃の余裕は無く、あったとしてもそれは麴将軍の前に屍を晒す事となる。前者ならば時はかかれど公孫瓚の威名は地に落ち、後者ならば決着は即座に着くでしょう」


 ……謀略家め。


「良いじゃないか。流石は先生だ。取り掛かってくれ」

「はは。直ちに。それと沮監軍が申し上げたい事があると」


 策略家が、か。


「ふむ。沮授。で、何だ?」

「閣下、私は敵の切り崩しを担うと共に陛下へ接触すべきと心得ます」


 はぁ? ……何を言っている。コイツは。


「ふむ、続けてくれ」

「朝廷は今こそ戦力を欲しております。李傕と郭汜の内乱が足元で起き未だに決着せず、また王允の兄である王宏を名乗る者が益州にて立ち馬騰と結んだ。西方の大乱に東方の我等が相手では奸臣とてその身の振り方を考えるもの。

 今であれば我等は陛下の窮乏を聞きつけ兵を送った功臣となれる。さすれば奸臣とて無視は出来ません。公孫瓚を撃滅した威と陛下を思う徳を天下に広め汚名を拭う事も叶うでしょう」


 成る程、なぁ……。逆賊の汚名は晴らしたいのは確かだ。兵を送ればそれは叶う。間違いない、悪くないな。悪くないが、面倒な。


 公孫瓚を撃滅する事こそ肝要だろうに。華北を取り地盤を固める実利こそ肝要。


「これより閣下が得る華北の地を治めるのに陛下の御身程に肝要な物は御座いません。それなりの兵は必要ですので軍部の状況によりますが御一考願いたく。必要と有れば私が洛陽へ向かいましょう」


 ……。


「ああ、うん。そうだな。悪くない」

「宜しいかな閣下」

「どうした郭図」

「沮授殿の案、頷ける話。しかし現状の陛下の兵は皆無では無い。御本人も仰る通り兵を送れば済む話では無く如何程の兵が必要か判然とするものでは御座いません。有り体に申し上げて難しいかと」


 だろうな。奴との戦いは危険な物だった。認めたくは無いが運が良かっただけで生き残った戦もある。麴義に一任しているのも兵が用意出来んからだ。


 沮授の軍勢とて備えとして重要だ。


「淳于校尉」

「何でしょうか閣下」

「校尉は如何見る?」

「お恥ずかしながら難しい。連中の持つ騎兵戦力は侮れません。連中の機動力を鑑みれば頷けませぬ。

 もし襄賁候の指揮下の騎兵が用いれるにならば話は別ですが仇討ちを完遂しようという彼等は公孫瓚の戦線からは離れますまい」


 だろうな。ああ、だが納得は必要か。少なくとも配慮しようとした姿は見せねば。


「郭図」

「は」

「沮授と淳于校尉は公孫瓚の備えに必要だ。またお前なら伝が多いだろう。朝廷への使者として向かってくれ」

「……見聞して来れば宜しいのですね?」

「ああ、沮授の言に理あり。また、淳于校尉の言にも理あり。お前はが見定めて来てくれ」

「はは。即座に」


 公孫瓚との戦い。此処からが踏ん張りどころだ。躓く訳にはいかん。


 さて、茶でも飲むか。


 ん? 騒がしいな。伝令?


 何事だ。


「閣下ァッ!!」

「どうした騒々しい」

「麴将軍の軍勢!! 壊滅いたしました!!」


 ……?


「……はい?」

「また公孫瓚の軍勢も壊滅!!」

「…………?????」


 ?

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― 新着の感想 ―
どっちも既に陛下に中指立ててたし、ままええやろ。
両方とも喪中なのにうるさかったからね しかたないねw
并州勢との決戦前に幽州、冀州が行きがけの駄賃で轢き潰されそうで哀れw
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